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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第十章・深き森のグリーンエメラルド

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BOSS・闘龍四天王『毒龍』ヴェノムスネーク③

「だりゃぁぁぁっ!!」


 それは、聞き覚えのある叫び。

 そいつは、俺を狙っていた蛇族を蹴り飛ばした。

 流星のような飛び蹴りを喰らった蛇族は吹っ飛び、俺の隣で着地した奴は構えを取る。


「やっほー、楽しそうじゃん」

「このアホ!! 狙うのはあの気味悪いホウキ野郎だけだ。残りの連中は気絶させるだけにしろ!!」

「アンタ、助けてやったのにいきなり命令? つーか」

「いいから言う通りにしろ!!」

「……わかったわよ」


 けっこう強い口調で言ったおかげで、カグヤは渋々了承した。

 カグヤがきたおかげで背中を気にする必要がなくなった。

 俺はホウキ野郎を睨む。


「カグヤ、あいつは俺がやる。いいか、周りの連中をやりすぎんなよ!!」

「あ、ズルい!!」


 俺は背中から第五地獄炎を噴射させ、この場から飛んだ。

 そして、ホウキ野郎の前まで一気に飛ぶ。けっこうな速さのおかげで、龍人たちも反応できなかった。

 向かい合う俺とホウキ野郎。


「よう。クソ腰抜け野郎、遊ぼうぜ」

「……チッ」


 ホウキ野郎は舌打ちする。

 忌々しげに俺を睨むと、ひょろりと立ちあがる……そして気付いた。

 こいつ、腕が異常なくらい長い。そして。


「───ッ!?」


 腕が鞭のようにしなり、俺の顔面すれすれを狙って飛んできた。

 辛うじて躱し、お返しを食らわせた。

 緑色の炎が塊となりホウキ野郎の座っていた柱を破壊する。

 俺とホウキ野郎は着地し、向かい合う。


「闘龍四天王『毒龍』ヴェノムスネーク。キッシッシッシ……毒は好きか?」

「呪闘流甲種第三級呪術師ヴァルフレア。お前、毒よりキツイ呪い喰らったことあるか?」


 三人目の四天王。この野郎は速攻で潰してやる!!


 ◇◇◇◇◇◇


 俺は四肢を燃やし、ホウキ野郎に向かう。


「甲の型、『撃震』!!」


 身体を硬直させた突進。

 だが、ホウキ野郎はするりと躱す……こいつやっぱり速い。

 俺も本気の速度でやる。


「シャァァァァァッ!!」

「甲の型、『鉄丸』!!」


 と、想ったが……ホウキ野郎の両腕が鞭のようにしなり、俺の接近を許さない。

 全身に『硬くなれ』の呪いを掛けて耐える。ヘタに躱して体力を消費するより、打たれて耐えた方がダメージは少ない……すくな、い?


「───……っ? あ、あれ」

「キシシシ……」


 身体がふら付いた。

 おかしい。なんか……頭がボンヤリ。


「シャァァァァァッ!!」

「ぐあぁつ!? いっでぇ!?」


 鞭のような手が俺の脇腹に突き刺さる。

 血こそ出なかったが、一瞬だけ呼吸が止まった。

 ホウキ野郎の武器は手刀。それも、関節を外して伸びる腕をしならせ、変幻自在の技になっている。

 さらに、この霞がかったような眩暈……間違いない。

 俺は距離を取り、確認した。


「これ、毒か……!!」

「キーッシッシッシ!! そうさ、オレの身体からは常に毒が放出されてる。神経麻痺の猛毒だ!! いくらテメェに毒が効きにくくても、こんだけ接近すれば少しは効くだろう?」

「……ッ」


 俺は口を押える。だが、ホウキ野郎は嗤うだけだった……くそ、ヤバいな。

 俺に毒は効かない。じゃなくて、効きにくいだけだ。けっこうな量の毒を吸い込んでしまった。厄介なのは、このホウキ野郎の毒が色も香りもしないってことだ。

 

「さらに、オレはオレの望む毒を自在に作りだせる。こいつらを服従させる毒。家族を侵す遅効性の毒。即死させる毒も自由自在……キシシ、小僧、オレは四天王最強、毒龍だ。お前みたいなガキがどうこうできる相手じゃねーんだよ!!」


 だらりと垂れた腕。そして毒……やっばい。こいつ強敵だ。

 決して舐めていたわけではない。だが……心の中で、龍人族を軽視していた自分がいる。

 油断───まだまだ修行が足りない。

 

「こうなったら……!!」


 口を押えていた手を外し、毒に侵される覚悟で戦う。

 さすがの俺でも呼吸しないと死ぬ。この一帯がどこまで毒に侵されているかわからない。でも……これ以上、ここにいる連中とは戦いたくなかった。

 すると、ホウキ野郎の口が大きく裂けた。


「フシャァァァ~~~~~~ッ!! キシシシ、絶望はまだ始まったばかりだぜぇ?」

「ッ!?……っぐ、う」


 ホウキ野郎は、毒ガスを吐いた。

 色は白。霧っぽい煙が周囲を包み込み、辺りの種族や龍人たちが苦し気に呻き始めた。

 そしてカグヤ。


「っぐ、あっが……な、なに、これ」

「カグヤ、息止めろ!! 毒だ!!」

「う、っぐ……」


 カグヤは喉を押さえ蹲ってしまった。

 俺は舌打ちし、カグヤの元へ。


「おい、しっかりしろ!! 息止めろ!!」

「ッ、っ……」

「くそっ!!」


 カグヤの顔色が急激に悪くなっていく。

 この毒、やばい。今までの比じゃない。

 俺は応急処置をするため、カグヤの顔を押さえそのまま思いっきり口付けした。


「!?!?!?!?」


 カグヤの目の色が変わる。だが無視。

 俺はそのままカグヤに息を注ぎ込む。


「っぷは、そのまま息止めてろ!!」

「…………」


 カグヤは口を押さえ、それを確認する間もなく俺はホウキ野郎へ視線を向け……ホウキ野郎が、巨大な蛇のような姿になっているのに気付いた。

 これは、グレンデルと同じだ。これが龍人としての本気……こうなったら。

 俺は右腕に魔神器を出現させようとした。


『やめときな。キシシシシ、この煙は揮発性……爆発するぜ?』

「!?」


 全てが上手だった。

 認めざるを得ない……甘かった。

 どうするか……ほんの一瞬だけ悩んだ瞬間。


「大丈夫です!!」

「え」

「フレア、ここはわたしが!!」

「ぷ、プリム!? おいお前、なんで」

「大丈夫。わたしに任せてください!! アイシェラ、守ってね!!」

「この命に賭けても!!」


 ブルーパンサーを装備したアイシェラがプリムを守るために前へ。

 プリムは両手を組み、祈りを捧げるような体勢に。


『あぁん? なんだお前』

「お願いします。『水』の天使ガブリエル、『癒』の天使ジブリール……わたしに力を」


 プリムの右手が青く、左手が白く輝き、手を合わせたことで青と白が混ざり合う。

 なんともまぁ、神々しい。

 ホウキ野郎はようやく気付いた。


『こいつ……半天使か!! しかもこの感じ、癒しの天使だと!? あの『破戒天使ガブリエル』と『滅亡天使ジブリール』の力か!? やべぇ!!』


 ホウキ野郎はプリムに迫る。

 だが、アイシェラが突撃槍をぶん投げると、ホウキ野郎の目の前の地面に突き刺さる。


「お嬢様には近づけさせん!!」

『この野郎……オレの毒が効いてねぇのか!?』

「フン。完全に無毒化とはいかんがな。このブルーパンサーの仮面には防毒マスクも付与している」

『チッ!!』


 そして、プリムの祈りが完成した。

 両手を広げると、青と白……水色の光が、毒の煙を消し去った。

 そして、光が俺たちを包み込むと、気だるさが消える。


「毒、消えた?」

「あ、ホントだ……」


 俺とカグヤだけじゃない。

 倒れていた龍人たちや種族たちの毒も消えた。

 そして……大汗をかいたプリムは、そのまま倒れてしまった。


「お嬢様!! ええいフレア、後は任せる!!」

「おう!! 毒さえ消えればこっちのモンだ!!」


 俺はアイシェラと入れ替わるようにホウキ野郎の前へ

 

『ちっくしょう!! だったらもう一度……』

「させるかよ!! 第一地獄炎魔人解放(オーバードライブ)!!」


 俺の背後に炎の鎧巨人が現れ、一瞬でホウキ野郎に接近。

 そのまま、超強烈なアッパーカットを繰り出し、ホウキ野郎は遥か上空に吹き飛ばされた。

 大蛇のまま空に打ち上げられたホウキ野郎は、びちびちと動く。

 俺は背中から第五地獄炎を噴射させ、一気に飛び上がる。

 上空二百メートルくらいまで上昇し、ホウキ野郎と向き合った。


『っぐ、がぁ……この、野郎』

「お前には真の毒を食らわせてやる」


 背中の炎が、爆発的に燃え上がり……一匹の、気持ち悪すぎる蟲になる。


「第五地獄炎魔蟲招来(オーバードライブ)!! 『死屍累々毒蟲翅ししるいるいどくむしばね』!!」

 

 魔神器『蟲翅』がさらに凶悪になった第五地獄炎の最終奥義。

 濃い深緑色の煙がムカデのような形になり、ホウキ野郎に巻き付いた。


『ひっッぎぃぃぃぃぃぃやァァァァァァァァァァ!?』

 

 ジュワジュワと生きたまま溶けていく。

 この炎、『相手がもっとも苦しむ猛毒を自動で選別、喰らわせ、なるべく長めに苦しませてから殺す』技なのだ……えげつない。

 地面に激突することなく、ホウキ野郎は溶けて消えた。

 俺は着地し、勝利宣言する。


「押忍!!」


 こうして、四天王の三人目を撃破した。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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