BOSS・闘龍四天王『毒龍』ヴェノムスネーク①
さて、蜘蛛族の村から徒歩で進む。
プリムは、毒の森にも慣れたのか、周囲をキョロキョロしている。
そして、木の幹でしゃがみ、何かを見ていた。
「なにしてんだ?」
「あの、この穴……蛇ですよね?」
「にゃん……ほんとだ」
なんと、蛇の巣穴を見つけた。
俺は右手のブレードを展開し、シャベル代わりに穴を掘る。
そして、少し広くなった穴に手を突っ込み……よし、掴んだ。
手を引き抜くと、全長一メートルくらいの蛇を掴んでいた。
「ほいっと……おお、いい長さだ。晩飯にするか、昼飯にするか」
「お昼にしましょう!」
「……蛇好きお嬢様にゃん」
プリムのテンションが高い。
さっそく頭を落とし、内蔵を抜いて皮を剥ぎ、串に刺す。
下準備を終え、袋に入れた。
「あとは、俺とクロネの分か」
「うち、魚があるからいいにゃん」
「じゃ、俺のぶん……」
「フレア!! こっちにも毒蛇の巣穴が!!」
プリム、いつの間にか別の木の幹にしゃがんでいた。
そして毒蛇を捕獲……あっさり捕まえちゃったよ。
「よし。メシにしよう!!」
「はい!!」
「テンション高いにゃん。よっぽど蛇好きにゃん」
蛇は相変わらず絶品だった。
ついでに、クロネが予定を確認する。
「うちらが向かってるのは『毒の森』の中心部。そこにグリーンエメラルドの希少種族が捕らえられてるにゃん。ついでに、四天王の一人『毒龍』ヴェノムスネークも。目的は、毒龍を倒して希少種族を解放……で、いいにゃん?」
「ああ。今さらすぎるけどさ、龍人族って大したことないな」
「……あんたとカグヤが強すぎるだけにゃん」
「んー、そうかな」
そう言うと、プリムが言う。
「フレア、油断しないでくださいね。わたしがいるからどんな怪我や病気をしても平気ですけど……やっぱり、無事な姿でいるのが一番ですから」
「わかってる。ありがとな、プリム」
「はい……」
「にゃん。ところで、カグヤたちと合流してから戦うのかにゃん?」
「そんな面倒なことするわけないじゃん。早いモン勝ちだ」
「……カグヤも同じ事考えてそうなのがすぐわかったにゃん」
というわけで、俺たちはのんびり観光気分で『毒の森』中心部へ。
◇◇◇◇◇◇
「さーて。掃除も終わったし毒の森中心へ!」
カグヤたちは、蛇族の村にいた龍人族を一掃した。
そこそこ大きな龍人が何やら『オレはこの地を治める……』みたいなことを喋っていたが、カグヤの蹴り技で再起不能に。
カグヤたちが脅すように睨むと、龍人族は『森の中心で待つ!』とわけのわからないことを言って逃げるように去って行った。
シェザは、両親と抱き合いながらカグヤたちにお礼を言う。
「ありがとうございます!! まさか、人間やエルフが龍人族を倒せるなんて」
「楽勝。ってか、骨のないやつばっかりよ」
「おめーが強すぎんだよ……フレアといいお前といい、外の人間でこんなのがいたとは」
ナキは煙草を吸いながら言う。
ブルーパンサーを解除したアイシェラはシェザに言った。
「シェザ。我々はもう出発するが、大丈夫か?」
「え、もう行っちゃうんですか? まだお礼もしてないのに」
「いや。礼はありがたいが、先に進まねば。カグヤ、ナキ、お前たちもいいか?」
「アタシは戦いたいからいいわよ」
「オレも構わねぇ。早く大本を叩いた方がいい」
「というわけだ。礼なら不要、毒の森にいる四天王を倒し、森に平和を約束しよう」
アイシェラは、シェザと握手。
シェザは少し悲し気だったが、すぐに笑顔になった。
「わかりました。みなさん、ほんとうにありがとうございます!」
「ああ。ではな」
「じゃ、またねー」
「蛇族の長には適当に言っといてくれ。ああ、『戦士たちは近いうちに戻る』ってもな」
こうして、アイシェラたちは蛇族の村を解放した。
◇◇◇◇◇◇
真っ黒な葉っぱ、濃い紫の木、ドロドロしたピンクの沼。
瘴気が立ち込めるこの一帯に、その男はいた。
「キシシシ……来たかぁ」
その男は、蛇のように細長い身体をしていた。
人間のような姿だが細い。身長は二メートル以上あるのに、体重は五十キロもなさそうに見えた。
濃い群青の髪は箒のように逆立っており、目は蛇のようにギョロっとしている。
上半身は裸で、下半身は蛇柄のズボンだけをはいていた。
闘龍四天王の一人、『毒龍』ヴェノムスネークは嗤う。
「グレンデルを倒し、ロズワールを瞬殺した人間かぁ……キシシ、楽しみだねぇ」
ヴェノムスネークは、長い爪をカチカチ鳴らす。
そして、近くにいた部下に命じた。
「おい、人間が来たら『洗礼』を。それと、兵士たちに迎撃させろ……ああ、話は一切聞くな。姿が見えたら攻撃開始。んで、ここまでたどり着けたらオレが相手する。キシシ、まぁ無理だろうけどなぁ?」
「か、かしこまりました……」
部下の龍人は顔色が悪い。
同族ですら蝕む瘴気は、ヴェノムスネークから発していた。
存在自体が『毒』の龍は、舌を出す。
「キシシ、侵された身体でどこまでヤレるか……見せてもらおうじゃないの」
猛毒の瘴気が、ヴェノムスネークの口から吐きだされた。




