蜘蛛の村
レイナの村を解放した。
龍人族を全員ブチのめした後、全員を村の外に放り出した。
けっこうな火傷をしていたが、全員動けるようになるとそそくさと退散。
レイナは村に飛び込むと、両親と抱き合い泣き出した。そして、俺たちのことを説明してもらい、村に受け入れてもらう。
プリムは、さっそく始めた。
「怪我や病気をされてる皆さんは、わたしの元へ! わたしが治します!」
『わんわん!』
すると、何人かの蜘蛛族がプリムの元へ。
やはり、龍人族に虐待されていたようだ。足が何本か無くなっていたり、下半身に大きなケガをしていたりと様々だ。
プリムの傍にいると、レイナが来た。
「蜘蛛族は、足が何本か無くなっても動けるの。時間はかかるけど、生えてくるのよ」
「へぇ……」
「それより、お礼したいから家にきて。村長もいるから」
「お、いいね。実はお腹減ってさぁ」
「ふふ、もちろんご飯も用意してるよ。クロネはお魚好きだよね?」
「大好物にゃん!」
と……プリムを置いていくのはな。まだ怪我人いっぱいいるし。
「わたしは後で行くので、シラヌイだけ置いてもらえれば」
『わぅん』
「わかった。じゃあ先に行ってるぞ」
「家はこっち! 早く早く!」
カサカサと八本脚で移動するレイナは、なかなかの素早さだった。
◇◇◇◇◇◇
蜘蛛族の家。
ちょっと入口が大きいだけで、普通の家だった。
中も広い。テーブルはあるけど椅子はないな……ああ、必要ないのか。
キッチンからはいい匂い。そして、テーブルにはレイナとレイナの父親、そして老いた蜘蛛族の男性……村長かな?がいた。
クロネと一緒にテーブルへ。
「ありがとうございます。あなたは蜘蛛族の恩人です」
「いやいや。龍人族はムカつくし、大したことしてないっすよ」
村長が頭を下げた。
レイナの父親とレイナも頭を下げる。
すると、クロネが言った。
「うちら、この『毒の森』中央にいる『毒龍』もやっつけるつもりにゃん。何か情報ないかにゃん?」
「ど、毒龍を……? いや、あなたがたならもしくは……」
村長は少し考えこみ、首を振る。
「申し訳ない。大した情報はありません……」
「なんでもいいにゃん。どんな些細なことでもいい。うちにとってはお宝にゃん」
「なーレイナ、この匂いなに?」
「ふふふ。ママの得意料理、毒魚の煮つけ! この辺りに泳ぐ魚はみんな毒を持ってるんだけど、蜘蛛族の薬草を使って煮込めば解毒できるの。解毒した毒魚は絶品なんだから!」
「うっひょぉ! すっげぇ楽しみ!」
「そこ、うるさいにゃん!…………毒魚」
「なんだ、気になってんじゃん。このネコミミめー」
「うにゃにゃにゃ!? み、耳を触るにゃ! ふっしゃー!」
「あ、あの……」
村長が困惑していた。
クロネは俺を小突き、咳払いをする。
「にゃほん。とにかく、なんでもいいから話すにゃん」
「わかりました。そうですねぇ……毒の森中央は、我々ですらあまり近づきません。あそこに向かうのは蜘蛛族の中でもさらに毒に詳しい者だけ。この村にも何人かいましたが……誰も戻ってきません。恐らく、龍人族に捕らえられたのかと」
「なるほど……あとは?」
「この辺りに住む種族は、我々蜘蛛族、そして蛇族、百足族、蛾族などです。それぞれが薬草の知識に深い種族ですな。そして、我々は互いに生産品を交換したりしています」
「生産品?」
「はい。我々蜘蛛族ですと『糸』ですな。蛇族は『皮』で、百足族は『毒針』、蛾族は『鱗粉』など、どれも生活には欠かせない物ばかりです」
「……にゃん」
クロネは考えこむ。
生活には欠かせない物なのか俺にはよくわからん。
「……もしかして、森の中央にはその種族たちが捕まっている?」
「恐らく……」
「ま、いいだろ別に。毒龍ブッ倒せばいいじゃん」
「あんたはいつも単純でいいにゃん……不測の事態ってのを想定しないと」
「ま、そういうのは任せる。俺はぶん殴るだけだ」
「はぁ……」
と、ここでプリムとシラヌイが戻ってきた。
「こんにちはー……お邪魔しまーす」
「あ、いらっしゃい!」
「レイナ。あ……村長さんですか? あの、怪我人や病人は全て治療しましたので」
「なんと……本当に、ありがとうございます」
「いえいえ」
と、ここでプリムの腹が豪快に鳴った。
「~~~~~~っ!!」
「あっはっは。でっかい腹の音だなぁ」
「ふ、フレアのバカ!!」
「え、俺のせい?」
「あはは。お母さん、そろそろご飯にしよう!! お父さん、おじいちゃんもいいよね?」
「ああ。もちろん……ネコミミのお方、話は食事の後で構いませんかの?」
「いいにゃん。それと、うちはクロネにゃん」
「わかりました。クロネニャンさん」
「…………クロネ、にゃん」
こうして、夕食の時間は過ぎていく。
◇◇◇◇◇◇
食事が終わり、その日はレイナの家に泊った。
後日。宴会でもてなしたいというが拒否。さっさと毒龍倒したいって言ったら驚かれた。
クロネは村長から話を聞き、情報をまとめていた。
プリムはレイナの部屋で楽し気に話し、俺は父親から酒を勧められたので少しだけ飲む。
その翌日。俺たちは村を出ることにした。
「うぅ……まだちゃんとお礼してないのに」
「気にすんなって」
「レイナ、また来ますね」
「約束だよ?」
プリムとレイナは指きりをしていた。
クロネは干した魚をもらい満足げで、俺は村長と握手する。
「どうかお気を付けて」
「うん。そっちも気を付けてな。なる早で終わらせるけど、また龍人族が来たら教えてくれ。森の中心に向かうからさ」
「はい。ありがとうございます」
こうして、俺たちは蜘蛛の村を出て、森の中心へ向かうのだった。
毒龍、さっさとぶちのめしてみんなを安心させてやろう。




