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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第十章・深き森のグリーンエメラルド

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毒の森に住む蜘蛛

 毒の森。

 入ってみたらよくわかる。周囲にはたくさんの毒草が生え、木々は紫っぽく土も真っ黒だ。大地が汚染されてるようで、転んでケガするだけで毒に侵されそうな森だ。

 クロネは、俺の隣で言う。


「危険な場所だけど、毒は薬にもなるにゃん。エルフは完全装備で毒の森に入り、薬となる毒草を採取したり、この森に住むとある種族と交流したりしてたにゃん」

「とある種族、ですか?」

「にゃん。グリーンエメラルドは龍人族とエルフが多く住んでるけど、それ以外にも希少な種族が多く住んでるにゃん。この森を根城にしているのは蜘蛛族にゃん」

「くもぞく……蜘蛛って蟲の蜘蛛かよ?」

「そうにゃん。蜘蛛族は毒に強い耐性があり、薬草の知識が豊富にゃん。エルフにとって蜘蛛族は医者みたいな存在にゃん」


 クロネ詳しい。

 こいつの情報、ほんとに頼りになるな。

 プリムは話を聞きながら、木の近くに生えていたグロテスクなキノコの傍にしゃがむ。


「これ、絶対毒キノコですよね……」

「いや、食えるぞこれ。ちょっとお腹が痛くなるけど」

「毒ですぅ!! フレアってばおかしい!!」

「おかしいって……俺、野草とか毒草にはけっこう詳しいぞ。森の中でサバイバル訓練やったし」

「……あんたの場合、毒でも食わなきゃ死ぬ状況だったからにゃん」

「むぅ……そんなもんかね」


 一応、キノコは採取した。

 後で焼いて食べよう。なぜかドン引きしてる二人は無視。

 すると、俺がキノコを採取するためしゃがんでいた真上の枝から、蛇が襲い掛かってきた。


「おっと……お、こいつも毒蛇か」

『フシャァァァ!!』

「へび……ごくり」

「プリム、食べるか?」

「……でも、毒ヘビ」

「いいか? 毒蛇ってのは毒袋を持つ奴だ。肉には毒が含まれてない。頭落とせばあとは大丈夫」


 俺はブレードを展開し、頭を切り落とす。

 そのまま内臓を抜き、皮を剥き、荷物から鉄串を取り出し蛇に刺す。

 

「ほい、プリムの昼飯」

「わぁ……!」

「……すっごく手慣れてるにゃん」

「ま、けっこう野営こなしてきたからな。待ってろ、クロネの分も」

『きゃんきゃん!』


 と、いつの間にかいなくなってたシラヌイが藪の中から出てきた。

 口にはヘビを三匹咥えている。

 

「さっすがシラヌイ。よし、少し早いけど昼飯にするか」

「はい! ヘビです!」

「まぁいいにゃん。うちもお腹減ってきたし」


 さて、この森のヘビはどんなお味かな?


 ◇◇◇◇◇◇


「う~んおいひぃですぅ……もぐもぐ」


 プリムは大満足だった。

 ヘビ、美味い。

 クロネは無言だったが、尻尾とネコミミがよく動いている。

 俺もヘビをもぐもぐ食べる。


「はーうまい。さて、食ったら森の奥に行きますか」

「……いちおう言うけど、ここ、超危険地帯にゃん。エルフだってあまり踏み込まないし、入るとしても肌を出さない完全装備で入るにゃん」

「お前、腕とか足出てんじゃん」

「うちは平気にゃん! ってかそういうこと言うにゃ!」


 クロネ、ミニスカートだし肩まで見える服着てる。

 プリムは珍しくズボンで露出が殆どない。なぜか少しムスっとしていた。


「むー……フレアはお肌が見える服、好きですか?」

「動きやすい方がいいだろ?」

「いや、そういうことじゃなくて……」

「こいつにファッションを求めても無駄にゃん」

「冷たいな……」


 蛇を完食し、森の奥へ向かおうと立ち上がる。

 すると───……近くの藪がガサガサ揺れた。

 構える俺、短剣を危なっかしく抜くプリム、プリムの前に立つクロネ。


「た……助け、て」

「うお……なんだこいつ」


 出てきたのは子供……子供、なのか?

 上半身は人間。だが、下半身は蜘蛛みたいなやつだった。足が八本あるみたいだけど、そのうちの二本は千切れてしまっている。上半身は女?……裸で胸が膨らんでるし、顔つきも女みたいだから間違いないと思う。


「蜘蛛族にゃん!」

「え、これが? 蜘蛛って……下半身が?」

「そうにゃん。ヒトの知能と蜘蛛の特徴を持つのが蜘蛛族にゃん」

「そんなことより! この子、怪我してます!」


 プリムは短剣をしまい、怪我をした蜘蛛女の元へ。

 両手を合わせると光輝き、その光を蜘蛛女に浴びせた。


「酷い怪我です……脚は再生できると思いますけど、時間がかかるかも」

「んー……じゃあ、今日はここで野営しちまうか。シラヌイ、晩飯確保任せていいか?」

『わぅぅん!』


 シラヌイは唸ると藪に飛び込んだ。

 そのままシラヌイの気配が消える。


「クロネ、テントの準備しようぜ」

「わかったにゃん。はぁ……今日はちっとも進まなかったにゃん」


 クロネと一緒に小さなテントを張り、野営の支度をする。

 シラヌイが戻り、大きなワシを三匹咥えて戻ってきた。けっこうな量があるし、三人……いや、蜘蛛女入れて四人と一匹で十分な量だ。

 クロネは、何時間も治療を続けているプリムの汗を拭いたり水を飲ませたりしている。

 俺はオオワシの下処理をして丸焼きにした。味付けは塩コショウのみ……くくく、美味そうだぜ。

 それから一時間後。


「……ふぅ、終わりました」

「おつかれさん。悪いな、任せっきりにして……俺がやると疲れて動けなくなっちまうから」

「いえ! 治療や回復はわたしの役目なので!」


 蜘蛛女は、まだ目覚めていない。

 じーっと見ていると、プリムが俺の目を塞いだ。


「見ちゃダメです!」

「うわわ、なんでだよ?」

「だ、だって……は、裸ですし」

「裸って、胸出てるだけじゃん」

「それがダメなんですぅ!」

「もぐもぐ……蜘蛛族に羞恥心はないにゃん。人間とは違うし、服なんて文化はないにゃん」

「あ、お前勝手に食って!」

『わんわん! きゅぅぅん』


 クロネとシラヌイはオオワシを仲良く食べていた。

 蜘蛛女は目覚めない。まずは飯食ってからだな。

 

「プリム、メシ食おうぜ」

「はい……お腹すきました」


 オオワシは、鳥肉なだけにハラハラとほぐれ、塩コショウが絶品だった。

 三人で食べていると、ついに蜘蛛女が起きた。


「ぅ……こ、ここは」

「あ、起きました! あの、大丈夫ですか?」

「……あなたは? って、脚!? あれ、怪我が……治ってる」

「わたしが治しました。さぁ、まずは食事にしましょう。お水飲みますか?」

「……うん」


 蜘蛛女はオオワシ肉をもらい、ガツガツと食べる。

 水もがぶがぶ飲み、完食するとぽろぽろ泣き出した。


「うっ……うぅ、ありがとうございます。ありがとうございます……」

「……そろそろ話して大丈夫かにゃん? あんた、何があったにゃん」

「……龍人族が、いきなり」


 蜘蛛女は目元をゴシゴシぬぐう。


「わたし、蜘蛛族のレイナって言います。龍人族がわたしたちの村を襲ってきて……わたしだけ逃げてきたんです。お父さんとお母さん、龍人族に捕まって……」

「そうだったんですか……」

「龍人族、この毒の森の中央にいたんですが、最近この辺り全域に手を出そうとして……」

「…………にゃん」

「わたし、どうしたらいいか……エルフに助けを求めようにも、龍人族がいるし」

「じゃあ大丈夫。俺が龍人族をブチのめしてやるから」

「え」


 レイナは、ポカンとした表情で俺を見た。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
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