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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第十章・深き森のグリーンエメラルド

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毒の森へ~ルート分岐~

 花の村が日常を少しずつ取り戻したのを確認し、俺たちは出発した。

 次の領土は『毒龍』とかいう奴が納めてる領地。名前からして危なそうだ。

 村を出発して数時間後。馬車が止まった。

 少し広めの見通しのいい広場で、近くには川が流れている。休憩には少し早い。どうやらナキがアイシェラに言って止めたようだ。

 ナキは、馬車から降りて言う。


「全員、ちょっと提案……というか、頼みがある」

「なんだ、藪から棒に」


 アイシェラが馬車から降りると、ブルーパンサーも降りた。

 クロネ、カグヤ、プリムとシラヌイも降り、俺も馬車の屋根から降りる。

 ナキは、俺たちを見ながら咳払いして言う。


「提案だ。ここから二手に分かれて進みたい」

「「「「は……?」」」」

「知っての通り、ここから先は『毒の森』だ。馬で進むにはリスクが高いし、地図を見たが迂回して『毒の森』を抜けるコースもある。少し遠回りだが、二手に分かれて進もう」

「はいはーい! 迂回するなら分かれなくても」


 と、カグヤが言う。

 ナキは首を振った。


「残念だが、毒の森中心の集落に『毒龍ヴェノムスネーク』はいる。お前たちがエルフの領土を解放するってんなら、避けては通れないルートだ。それに、お前たちは森に入ってたった数日で難攻不落の四天王を二人も下してる……注目されてるはずだ。毒の森でどんな歓迎をされるかわからんし、少数精鋭で進んだ方がいい」

「よーし。じゃあそれで行くか。メンバーは?」

「ちょ、フレア!? いいんですか?」

「ああ。俺たちならともかく、白黒号を危険な目に合わせたくない。毒の森っていうからには、毒草とか毒沼とか毒花とかあるんだろ?」

「ああ。で、どうする? 本当にいいのか?」


 ナキが確認する。

 反対意見はなし。というわけで、二手に分かれることになった。


 ◇◇◇◇◇◇


 さて、毒の森を進むメンバーだが。


「俺が行くよ。俺、修行で毒の耐性を付けるために少量ずつ毒を摂取する修行もしたし、毒沼を泳ぐ修行とか、毒花の花粉が飛び交う花畑で寝泊まりしたこともある。致死量の千倍くらいの毒なら大抵は耐えられ……なんだよみんな」

「アンタ、ほんとに人間?」

「失敬な奴だなお前。失敬だな」


 なぜかみんなドン引きしていた……先生が『毒に耐える修行だ』って言ってた修行法だぞ。確かに苦しかったけど、俺はこうして生きている。

 そして、プリムが挙手。


「はい! 私もフレアに同行します!」

「えー? お前、大丈夫なのかよ?」

「はい。わたしの『神癒』なら毒も浄化できます。それに、わたしだって守られてばかりじゃありません!」

「待て待て待て! お嬢様が行くなら私も行くぞ」

「あー……待った。少しいいか? あんまりそっちに戦力が偏るのもアレだ。そうだな……じゃあ、毒の森に行くメンバーは、フレアとプリム、クロネの三人だ。残りの迂回ルートはオレ、カグヤ、アイシェラで」

「ふざけるな!! 貴様、私とお嬢様を引き離すつもりか!?」

「引き離すって……ほんの数日だぞ」

「駄目だ!! クロネはともかくお嬢様がフレアの毒牙にかかったらどうするつもりだ!!」

「俺、毒の牙なんてないぞ」

「うちはともかくってどういうことにゃん!! ふしゃーっ!!」

「うっさいわねぇ……ねぇ、話長い。アタシ眠くなってきたぁ」


 すると、プリムが言う。


「それでかまいません!! わたし、フレアとクロネの三人で行きます!」

「お嬢様ァァァァァァーーーーーーッ!?」

「アイシェラうるさい。フレア、いいですか?」

「ああ。俺はいいぞ」

「いやぁぁぁぁぁーーーーーーッ!!」

「アイシェラうるさい。クロネ、よろしくお願いしますね」

「わかったにゃん」

「ネコミミちゃんよ、そっちの道案内は任せたぜ」

「わかったにゃん。ウチとあんたが分かれないと、迂回組の道案内できないもんね」

「お嬢様ぁぁぁ~~~~っ!! あぁぁ~~~っ!!」

「アイシェラうるさい。では、ここで荷物を分けましょうか」


 二手に分かれるので荷物を分けた。

 プリムはスカートを脱いでズボンを履き、歩きやすいロングブーツを装備。腰には護身用の短剣を差し、長い髪はポニーテールにした。冒険者プリムって感じだ。

 プリムは、項垂れるアイシェラに言う。


「アイシェラ。わたし、アイシェラに守られてばかりのお姫様は嫌なの。自分の足で冒険してみるの、ずっと憧れてたの」

「ですが、こんな危険な森でなくても……」

「そうかもね。でも、冒険するって決めたから。だから、行ってくるね」

「……わかりました」


 アイシェラはようやく折れた。

 そして、馬車に乗り、再び森の奥へ進む。

 森の色が深緑から紫っぽくなり、馬車が止った。


「この辺りから毒の森だ……分かれようぜ」

「ああ。じゃあカグヤ、そっちは任せたぞ」

「うん。あ、次の四天王はアタシがやるからね」

「はいはい。ったく、次は暴走すんなよ」

「うるさいっ!」

 

 カグヤは馬車の屋根によじ登り寝転がった。

 アイシェラは御者席に座り、俺に言う。


「フレア。お嬢様を頼むぞ」

「ああ。任せとけ」

「もしお嬢様を傷付けたら、貴様を殺す……いいな」

「お、おう」


 この時のアイシェラの気迫、やばかった。

 最後、ナキが言う。


「じゃ、森の出口で会おうぜ」

「ああ。そっちも気を付けろよ」

「おう。まぁ、四天王を瞬殺したカグヤがいるし、オレもアイシェラもいる。なんとかなるだろ」

「そうだな……じゃ、気を付けろ」


 馬車は走り出した。

 紫色の森に入らず、獣道を走っていく。

 馬車が見えなくなるまで見送り、俺はクロネとプリムに言った。


「じゃ、行くか。毒の森!」

「はい! 大冒険です!」

「……元気いっぱいにゃん」


 この三人で冒険って初めてだ。新鮮な感じで楽しくなりそうだ。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
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