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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第十章・深き森のグリーンエメラルド

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取り戻した領土(2/4)

 村に戻ると、集まっていたエルフたちがカグヤを見て一気に怯えた。

 カグヤは自業自得と感じているのか何も言わない。すると、エルフたちの中から小さな女の子と老夫婦が出てきた……うん、怪我は治ってる。プリムがやったんだな。

 女の子は、モジモジしながらカグヤを見る。


「あの、おねえちゃん」

「……なに?」


 女の子は、顔を上げて───……にっこり笑った。


「ありがとうございました!!」

「……え?」

「おじいちゃんとおばあちゃん、そしてわたしを助けてくれました。ほんとうにありがとうございました!!」

「……うん」


 そして、老夫婦も頭を下げる。


「ありがとうございました。勇敢なお嬢さん」

「孫もわたしらも助けていただいて、感謝しかありません」

「……そっか」


 女の子は、カグヤに花を差し出す。


「これ、お礼です。わたしが育てたの。きれいでしょ?」


 緑と白が混じり合った綺麗な花が差し出された。

 カグヤはしゃがみ、女の子から花を受け取る。

 そして、カグヤは女の子の頭を撫で、ようやく笑った。


「綺麗ね……ありがとう」

「はい!!」

「ふふっ」


 カグヤと女の子は微笑む。

 そして、カグヤが笑ったのを見て、集まっていたエルフたちも少しずつカグヤにお礼を言う。カグヤは少し照れつつも、お礼の言葉をしっかり受け取っていた。

 ブチ切れて大暴れしただけなのになぁ……まぁ、余計なこと言うのやめよう。

 すると、パンパンと手を叩く音がした。


「ちゅうもーく!! おーい、全員よく聞いてくれー!!」


 ナキだった。

 プリム、シラヌイ、クロネ、アイシェラもいる。そして、ナキの傍には数名の老エルフがいた。

 ナキは全員が静まるのを待ち、こほんと咳払い。


「あー……こういう注目を浴びて話すのは苦手だが聞いてくれ。龍人族の四天王、花龍ロズワールは討伐した。よって、この村は龍人族の支配から解放された!!」


 ナキが宣言すると、エルフたちは歓声を上げた。

 泣きだす者、互いに抱き合う者、カグヤに礼を言う者と様々だ。


「いろいろ辛い目に合ったと思うが……全員、よく耐えてくれた。これから元の生活を少しずつ取り戻してくれ」


 ナキの話が終わり、ナキの隣にいた老エルフにタッチ。

 老エルフは、この村の長らしい。まずは龍人族の痕跡を消して、少しずつ元の村の形に戻していくそうだ。すでに解放された『凱龍グレンデル』が治めていた領土とも流通を再開するとか。

 俺たちは村の英雄になったが、面倒くさいのでお礼は拒否。村の片付けを何日か手伝い出発することにした。

 ナキは、俺たちを集めて指示を出す。


「フレア、オレとお前は力仕事だ。龍人族の死体を集めて弔うぞ」

「おう。埋めるのか?」

「ああ。龍人族の死体は燃えないからな……長い時間をかけて大地に分解してもらう。それに、大地の栄養となって土に還るさ」

「俺なら燃やせるけど……まぁいいか。そっちのがいい」

「ああ。それと、プリムのお嬢ちゃんは特異種の力で住人の健康診断、それと治療を頼む」

「お任せください!! なんでも治しちゃいます!!」

「ではお嬢様。私を……恋の病を治療して「無理」あんっ!!」


 プリムはすり寄るアイシェラから離れクロネの傍へ。

 ナキは笑いつつクロネへ。


「ネコミミちゃんは念のため周囲を警戒してくれ。報復の可能性は有り得ないが、ゼロじゃない」

「わかったにゃん。でも……可能性は高そうにゃん。あんな殺され方したら恨むのが当然にゃん」

「それはないね。龍人族は誇り高い一族だ。戦いに狂いこそするが、恨みや怨念なんて感情はない。もし報復なんぞしようものなら、龍人族の王への侮辱行為だ」

「……よくわかんないにゃん」

「それでいい。とりあえず、警戒を頼む」


 そしてナキはアイシェラを見る。


「お前は……」

「お嬢様の傍にだな」

「……まぁいいか。じゃあカグヤの嬢ちゃん、お前は」

「アタシも力仕事でいい。アタシがぶっ殺した死体くらい、アタシが片付ける」

「そうか? じゃあ頼むぜ」

『わんわん!!』

「お、ワンコがいたか。お前は……」


 と、ナキはチラリと明後日の方向を見る。

 そっちには、エルフ族の子供たちがいた。こっちをじーっと見ている。

 ナキはシラヌイを見てうなずく。


「よし。ワンコは子供の相手を頼む。子供たちもずっと働き詰めだったし、癒してやってくれ」

『わん!』


 シラヌイは子供たちの元へ。

 子供たちはシラヌイを囲むと、わっしゃわっしゃと撫で始めた。

 さて、役割分担は終わり……仕事に取り掛かるか!!


 ◇◇◇◇◇◇


 それから数日、村の片付けを手伝った。

 龍人族の死体を全て埋め、墓石を置いて花を手向ける。敵とはいえ死体をないがしろにするのはよくないとエルフの人たちも言ってた。

 プリムの健康診断と治療を終え、住人たちは全員復活。

 それから、龍人族の痕跡を消し、エルフの村はようやくもとに戻ってきた。少しずつ仕事を始めるエルフも増え、凱龍の領土から使者もきて交易も再開した。

 俺たちも出発準備を始めた。

 アイシェラは馬車の整備、カグヤとプリムは馬の世話、クロネは花龍ロズワールのいた住処を調べて情報を集め、次の目的地を探している。

 俺は、ナキと一緒に村の見回りをしていた。


「この村にもオレの部下を何人か置いておく」

「ああ。よろしくな」

「……しっかし、お前らがきてたった数日で、エルフの領地を半分も取り返しちまった。ほんっと、すっげぇよな……」

「んー……でもさ、龍人ってあんま強くないのな」

「おめーが強すぎんだよ。完全武装したエルフの戦闘員が十名いても、龍人を一人相手にするのが精一杯なんだ」

「ふーん」

「……まぁいい。それより、次の目的地はヤバいところだ」

「そうかぁ?……普通の森、花畑、その次はなんだ? 葉っぱの町か?」

「馬鹿言うな。ったく……次は『毒の森』だ。闘龍四天王、『毒龍ヴェノムスネーク』の治める領土……気を付けろよ」

「毒……」


 毒かぁ……俺は耐性あるけど、みんなは大丈夫かな?

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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― 新着の感想 ―
[一言] 次の相手は潜入の達人(の影武者)のようだな
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