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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第十章・深き森のグリーンエメラルド

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花咲き誇る大地

 グレンデルを倒した翌日。

 ナキの家に泊った俺たち。朝食を食べ、出発準備を終えるとナキがやってきた。

 手には大きな荷物がある。


「よう。出発か?」


 軽いノリで挨拶するナキ。

 俺は、軽く手を上げてナキに言う。


「ああ。次の目的地、さらにその次と決まってるからな。ここでやることは終わったし、出発する」

「そうかい。じゃ、行こうぜ」

「おう……え?」


 ナキはニンマリと笑い、大きな荷物を馬車に乗せた。

 ああ、これ自分の荷物だ。すると、御者席に座っていたアイシェラが言う。


「付いてくる気か?」

「ああ。村は部下とエルフの村長に任せた。腕の立つ連中も置いていくから大丈夫だろ。オレはお前らに礼をしたりないからな……特級冒険者序列七位の腕と、エルフたちの仲介役くらいにはなれる」

「……ふむ。確かにな。村を解放するにしても、エルフが仲間にいれば話もしやすい」


 アイシェラが納得すると、馬車の窓が開きカグヤとプリムが顔を出す。


「あれー? ナキじゃん。アンタ、一緒に行くの?」

「わぁ、新しい仲間です!」

「おーう。ま、とりあえずグリーンエメラルドにいる間は付いてやるよ。んでフレア、いいか?」

「いいぞ。お前、けっこう強そうだしな」

「へ、言いやがる。じゃあよろしくな」


 ナキは馬車の後部に座り、パイプを吹かし始めた。

 俺も荷台に飛び乗り、アイシェラに言う。


「おし。行こうぜアイシェラ、次の目的地へ!」

「ああ。次は『ナノハナ領地』……クロネ曰く、エルフの土地で最も花が多い土地のようだ」


 ナキを加えた馬車は走り出し、村を出た。


 ◇◇◇◇◇◇


 馬車は、クロネの持つ地図を頼りに進んでいく。

 アイシェラの隣で、ネコミミをぴくぴくさせながら指示を出していた。


「にゃん……このまま、まっすぐにゃん」

「わかった。ふ、クロネは案内人としても優秀だな」

「ま、情報を集める上で地図を見るのは必須にゃん」


 褒められて機嫌がいいのか、尻尾も揺れている。

 馬車の中では、カグヤがプリムの膝を枕にして昼寝をしていた。アイシェラが気付いたらクソやかましそうだな……まぁ、そんときは呪術で黙らせればいいか。

 俺はというと、馬車の屋根で大きな欠伸……シラヌイを撫でる。


「くぁぁ~~~……暇だな。魔獣でも出ないかな」

「魔獣は期待しない方がいいぜ」

「ん……?」


 すると、馬車の後部に座っていたナキが屋根へよじ登る。

 

「グリーンエメラルドには大型魔獣しかいない。小型のは絶滅しちまったんだ」

「え、なんで?」

「龍人族が狩りつくしたんだよ。龍人族が喰う肉は、外の領土から持ってきたモンだ」

「へぇ~……狩りつくしたってすげぇな」

「いるのは、グリーンエメラルドとパープルアメジストの国境付近の森だけだ」


 そう言うと、ナキは口笛を吹く───すると、腰の矢筒から一本矢が飛び、近くの木に実っていたリンゴみたいな果実を貫通。そのままナキの元へ戻ってきた。


「あむ……お前らの目的聞いて驚いたぜ。戦いのためだけに四天王をぶっ潰すなんて言う人間、三百年以上生きてて初めて……なんだよ?」

「いや、お前の能力ってなんだ? すっげぇいいな」

「ん?……ああ、説明しとくか。オレの能力は『群体制御(コントローラー)』で、小さいモンを自在に浮かせて操れる。オレの場合、この『ヤカ』を最大で三十、同時に操作できる」

「三十……」

「百七十年くらいの修業でモノにした技術だ。ま、弓に矢ぁ番えて射るより楽でいいぜ。お前とカグヤの嬢ちゃんにはカスリもしないし、龍人族の肌には刺さりもしねぇがな」


 ナキは煙草をふかす。

 ふと、俺は思った。


「グリーンエメラルドじゃなくて、レッドルビー王国とか、イエロートパーズ王国のダンジョンとかでなら通用するじゃん。なんでここで情けない盗賊みたいな真似してんだ?」

「アホ。同胞が奴隷にされてんの、放っておけるわけねーだろ」

「……お前、やっぱいい奴だな。先生が言ってた。仲間を信用する奴と仲間を大事にする奴に悪いのはいないって」

「へ、ガキが生意気言いやがって」

「あと……百七十年ってマジ?」

「ああ? エルフのことしらねーのかよ? エルフの平均寿命は約五千年だ。オレはヒトとのハーフだから三千年くらいだがな」

「いや十分だろ……で、お前いくつ?」

「あー……八百くらいかな」

「うし、俺のが年上!! 俺は千と十六~♪」

「……へいへい。そうですかい」

「あ、信じてないな!? いいか、俺はな」

「呪術師だろ。天使に喧嘩売って滅んだ種族」

「……まぁ、そうみたい。お前も呪術師知ってんのか?」

「評判はな。実際に見たことはねーけどよ」


 やべ、男同士の会話楽しいな。

 このパーティー、女ばかりだし。男同士でこんなに話すの久しぶり。

 雑談を続けていると、ナキが顔を近づけてきた。


「なぁフレアよぉ……お前、ここにいる女とヤッたか?」

「……やる? なにを?」

「バッカ。お前も男だろ?……こんな綺麗どころのパーティーに男が一人。毎晩とっかえひっかえなんだろ? で、本命はいるのか?」

「……??????」

「…………」

「…………」

「お前、経験ないのか?」

「だから何のだよ?」

「…………はぁ」


 ナキは露骨にため息を吐いた……なんかむかつく。

 すると、ナキは俺の肩をポンと叩く。


「オレは手を出さねーから安心しろ。さてフレア、質問だ……お前、この中で気になる女はいるか?」

「気になる女?」

「ああ。全員可愛い子ばっかりじゃねぇか」

「かわいい……」

「……お前、感性死んでるのか? いい女ってことだよ。気になる女はいねぇのか?」

「気になるねぇ……とりあえず、カグヤかな。あいつとは能力なし炎と呪術なしでガチで戦ってみたい」

「……もういい」


 ナキはがっくり項垂れ、シラヌイを撫でながらごろんと寝転がった。

 俺、何か変なこと言ったのかな?


 ◇◇◇◇◇◇


 馬車が進むこと半日……少しずつ、周囲の景色が変わってきた。

 俺は、屋根で寝転びつつ御者席を見下ろす。


「なんか……いい匂いしてきたな」

「うむ。これは……花の香りか?」

『きゅぅん……』

「シラヌイ、辛いなら馬車に入ってろ」

『わぅぅ』


 犬のシラヌイは苦しそうだ。

 馬車の窓を開け、プリムに渡す。

 周囲のいい匂いは花の香りだ。木々には綺麗な花が咲き、地面にも花がいっぱい咲いている。殺風景な緑色から、桃色、オレンジ色、紫色、赤色の花が咲き誇る森……いや、花畑みたいな風景になる。


「わぁ~……すごいですぅ!」

「でも、クッサイわね……アタシ、苦手かも」

「うちもにゃん……鼻が痛くなるにゃん」


 木々が少なくなり、一面花畑みたいな景色になる。

 しかも、馬車が走っているのは獣道ではなく、整備された街道みたいになっている。

 ナキは再び屋根に上り、俺に言う。


「気を付けろ。ここはもう『ナノハナ領地』だ。『花龍ロズワール』の管理する領地……」

「そのロズワールとかいうの、どんな奴だ?」

「噂じゃ、美を愛する龍人族……すまん、これしか知らん」

「まぁいいよ。それにしても、すごい花畑だな」


 なんとなく思う。

 こんな綺麗な花畑を管理する龍人族が、ほんとに悪い奴なのか。

 だが……このナノハナ領地にある集落に入った瞬間に、龍人族を全員敵に回した大バトルが始まることになるとは思わなかった。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
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