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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第十章・深き森のグリーンエメラルド

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取り戻した領土(1/4)

 グレンデルは、黒焦げだったが十分もしないうちに復活した。

 

「……敗北を認めよう」

「…………おう」


 グレンデルは俯き、歯を食いしばっていたが敗北を認めた。

 だが俺も、地味にショックだった。

 なんでも焼き尽くす第一地獄炎で死ななかった。つまり、龍人族は第一地獄炎で死なない。今までどんな相手にも負けなかったのに、たった十分で復活したことは初めてだった。

 そんな気もしらず、グレンデルは言う。


「ワシの敗北により、ワシが管理するエルフ側の領土は全て解放しよう」

「え、この村だけじゃないのか?」

「違う。ワシは龍人族の四天王。管理するのは村だけでなく、龍人族が支配下に置いているエルフの領土、約四分の一じゃ。この村にいたのはたまたまじゃ」

「わーお。ラッキー……でも、本当かよ? すぐに奪い返しに大軍率いて来るんじゃねーの?」

「……フン。龍人族は誇り高き一族。約束は違えん」


 グレンデルは鼻からぷしゅーっと息を吐く。

 ちなみに、炎で焼けたせいで素っ裸だったがちゃんと替えの服を着てる。トカゲみたいな姿から普通の龍人族の姿にも戻っていた。

 グレンデルは、最初に話をした家に戻るというので一緒に行く。

 家に入ると、カグヤに叩きのめされた龍人族が這いつくばっていた。


「……どうやら、あのメスもただの人間ではないようだな」

「うん。ゴリラ人間」

「なんと!?……獣人だったのか」


 グレンデルは信じていた。やべぇこいつ面白いかも。

 すると、俺を見たプリムたちが笑顔になる。


「フレア!! お帰りなさい」

「おう。勝ったぞ」

「ま、マジかよ……」


 ナキは驚愕していた。

 グレンデルは、ナキに言う。


「貴様の差し金だな。ふん、その企みは見事に成功したぞ」

「え、あ、いや」

「約束通り、グリーンエメラルド内にあるエルフの領土、約四分の一を解放する」

「…………嘘だろ。まさか、こんな日が来るなんて」


 ナキはがくっと崩れ落ちた。

 グレンデルは、ボロボロになった龍人族に言う。


「同士たち!! この地より撤収し、本国へ帰還する!! ワシの管理していた全ての集落、村にいる龍人族に伝えよ!! 我は敗北した。すべてのエルフたちを解放せよ!! これ以上の侵略、狼藉は龍人族の誇りを汚すものである!!」


 そう叫ぶと、龍人族たちは起き上がり拳を合わせて頭を下げ、ダッシュで出ていった。

 グレンデルは、俺に言う。


「すぐにここから出ていこう。ワシは敗北を王に伝えねばならんからの」

「おう。ところでさ、四分の一ってことは」

「うむ。残り四分の三は、他の四天王が管理しておる。どうするかは貴様の好きにせい」

「……どうすっかな」

「はいはい!! アタシ、四天王と戦いたい!! こっから近い四天王は!?」

「……敗者はただ去るのみ。仲間の情報は売らん」


 そう言って、グレンデルは歩きだす。

 そして、出口で立ち止まり俺に言った。


「ワシはイチから鍛えなおす。小僧……いやフレア。また戦おう」

「おう。あはは、なんだよあんた、けっこう熱くていい奴じゃん」

「ふん。生意気な小僧め……さらばだ」


 グレンデルは出ていった。

 それから十分とかからず、龍人族は撤退……エルフの奴隷たちはあっさり解放された。

 あまりにも急で、奴隷たちはただぽかんとしていた。

 ナキは、住人たちを集め事情を説明……少しずつ解放が受け入れられ、奴隷エルフたちは大喜びだ。


 とりあえず、エルフの村を解放できてよかった。


 ◇◇◇◇◇◇


 さて、ここからが忙しかった。

 まず、怪我や病気をしていたエルフたちだ。


「みなさん!! 怪我や病気をしている人がいたら私のところへ!! 治療しまーす!!」


 プリムが大張り切りだった。

 腕まくりをし、久しぶりに特異種の力である『神癒(カムイ)』をふるう。

 ナキは人間たちを集め謝罪。罵倒や暴言を全て受け、時期が来たら解放すると約束。エルフの村で療養するように説得し、龍人族が集めていた財宝や金貨の大半を捕らえた人間たちに譲った。

 クロネとカグヤは空き家を借り、ブルーパンサーの整備と龍人族から得た情報の整理をしていた。グレンデルは何も教えてくれなかったし、これからどうするかを考えるらしい。

 で、俺とカグヤはナキの元へ。


「感謝してるぜ」

「別にいいよ。で、村はどうなるんだ?」

「とりあえず、プリムのお嬢ちゃんが仲間の怪我や病気を治してくれてるから、動けるようになった奴から、村の再建を目指す。田畑や食料は無事だし、食うのはしばらく大丈夫だが……心の傷は癒えるのに時間がかかる。少しずつやっていくさ」

「ねぇねぇ、他の四天王は?」

「……マジで行くのか?」

「アタシは行く。こいつばっかり強いやつと戦ってズルいし」

「……おい、お前の仲間大丈夫か? あえて危険地帯に飛び込むなんて」

「あー。こういうやつなんで」

「聞こえてるわよ!!」


 カグヤはムスっとしていた。

 すると、ナキは言う。


「ここからだと、闘龍四天王の一人『花龍ロズワール』の管理する領土が近い。悪いな、オレも知ってるのは名前だけで、詳しいことはわからん」

「ま、クロネがいろいろ調べてるし大丈夫でしょ。それより、お腹へったわ」

「じゃ、オレの家に泊れ。オレは村を回って住人たちの様子を確認するから帰らねぇ……好きに使いな」

「やった。で、飯は?」

「食材もあるから好きに使えって。じゃあな」


 そう言って、ナキは行った。

 部下にいろいろ命令したり、奴隷の女性を元気づけようと何か話してる。


「面倒見がいい奴なんだろうな」

「ええ。龍人族にコキ使われて悪役演じてたみたいだけど、あっちが素なんでしょうね」

「だな。おっと、プリムのところに行ってナキの家行こうぜ」

「ええ。お腹減ったー」


 プリムはシラヌイを護衛に、住人たちの治療をやっていた。

 俺たちが向かうと、ちょうど最後のエルフを治療し終えていた。


「あ、フレア、カグヤ」

「お疲れ。終わりか?……っと、シラヌイも」

『くぅん!』

「はい。みなさん、怪我や病気はそれほど酷くないんですけど、やはり心の方が……こればかりは、私の『能力』でも治せなくて……」

「そこから先はナキに任せようぜ。それより、次の目的地だ」

「はい。あ、クロネたちがナキさんのお家にいますので、行きましょう」

「ああ。メシにもしたいしな」

「お腹減ったわー……さ、早く行きましょ!」


 カグヤが歩きだし、俺とプリムとシラヌイも後に続いた。


 ◇◇◇◇◇◇


 ナキの家に入ると、アイシェラとクロネがテーブルに地図を広げて話をしていた。

 俺たちに気付き、手を止める。


「戻ったか。と、お嬢様お疲れ様です!! 傍にいれなくて申し訳ございません!!」

「いいけど、抱きつかないで胸を触らないで」


 プリムに抱き着くアイシェラを無視し、クロネが言う。


「で、これからのことだけど、どうするにゃん?」

「四天王を全員ぶっ潰す!! そして龍人族の王様に殴り込みよ!!」

「おいこら、そんなこと言った覚えないぞ」


 アホのカグヤを軽くチョップすると思い切り睨まれた……いや、ツッコミだろ今の。そんなに怒るなよ。


「……たぶん、そういうと思ったにゃん。これ見て」

「ん、どれどれ」


 それは、龍人族が書いたと思われる、グリーンエメラルドの地図だ。

 地図は大きく六分割されていた。

 全員が地図の周りに集まり、クロネが軽く咳払いする。


「こほん。まず、うちらが取り戻したグレンデルの領土がここ」


 クロネは、六分割された土地の一つを指さす」


「そして、残りの三つがほかの四天王が管理する領地にゃん。で、残りは二つ」


 グレンデルが管理していた領地と同じくらいの大きさの囲いに、『四天王』と記入。そして、一番小さな囲いに指をさす。


「そしてこれ。この一番小さな囲いがエルフの王国にゃん。どうやら、龍人族たちが唯一侵略していない純粋なエルフの王国。名前は『大樹国ユーグレナ』……エルフにしかない『何か』で守られてるっぽいにゃん」


 そして、一番大きな囲いを指さす。


「そしてこれ。ここが龍人族の本国……『龍帝国ドラゴンキングダム』にゃん。最悪なことに、ダンジョンはこの国の近くにあるみたいにゃん。グリーンエメラルドに入る冒険者はたぶん、そのことを知らないにゃん」

「マジかよ……」

「どうするにゃん? 村は救ったし、グリーンエメラルドは思った以上にめんどくさそうな事情がある領土にゃん。あんたはすでに四天王の一人を討ち取ったし、本国に戻ったグレンデルは間違いなくあんたのことを報告するにゃん。絶対絶対、面倒に巻き込まれるにゃん……」

「んー……」


 俺は少し考える。

 そして、思い出す。

『グリーンエメラルドで強くなれ』……セキドウが言った言葉だ。

 グレンデルがあの強さだ。他の四天王もきっと強いだろう。

 戦えば、きっと強くなれる。そんな気がした。


「じゃあ、四天王ブッ倒してエルフの国を解放して、龍人族の王様に挑んでからダンジョンに入るか」

「「「「…………は?」」」」

『わん!』


 全員がポカンとしていた。

 シラヌイだけは俺の足にすり寄ってきたので抱っこする。

 すると、ポカンとしたカグヤがすぐに戻り、俺と肩を組む。


「いいじゃん!! くぅ~……アンタたまにはいいこと言うわね!!」

「俺はいつもいいことしか言わないだろー?」

「よーし!! あ、次の四天王はアタシが戦うからね!!」


 そして、アイシェラとプリム。


「まぁ……こうなるような予感はしていた」

「でも、冒険みたいで楽しいです!!」

「お嬢様、お嬢様は私が守ります。たとえ龍人族が来ようとも、私とブルーパンサーでお守りいたします」

「アイシェラ、ありがとう……」

「ふふ……お礼はお風呂、そしてベッドで」

「嫌」

「シンプルな拒絶もいい!!」


 クロネはため息を吐いた。


「……ほとんど未開の龍人族の国。そこの情報を手に入れられると考えれば悪くにゃい。くふふ、けっこうな高値で売れそうな気がするにゃん」


 こうして、次の目的地は四天王が管理する領土、残り三つとなった。

 その後は龍人族の本国へ向かう。


 戦いの予感しかない。グリーンエメラルドの冒険、面白くなりそうだ!!

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脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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