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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第十章・深き森のグリーンエメラルド

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BOSS・闘龍四天王『凱龍』グレンデル①

 馬車は、ナクシャトラの村に到着した。

 途中、御者をナクシャトラに代わり、アイシェラは馬車の中へ。

 シラヌイとブルーパンサーは村近くの藪の中で待機。捕まったフリで村の中へ。


「いいか。もうすぐ村に着く……お前らはオレが捕まえた労働力。それと龍人族の奴隷だ」

「癪だけど仕方ないわね。でも、プリムに危害を及ぼすようなら、グレンデルとかいう奴が出てくる前に大暴れしちゃうから」

「俺も俺も」

「フレア、カグヤ……ありがとうございます」


 プリムはにっこり笑った。なぜかアイシェラはハァハァしている。

 俺とカグヤは首をコキコキ鳴らし、クロネは窓に視線を送り周囲の景色を目に焼き付ける。

 それから間もなく、見えてきた。


「見えた……オレの村だ。お前ら、門番の龍人族がいる。気を付けろよ」


 馬車がゆっくり減速、停止した。

 すると、重たい石みたいな声が聞こえてきた。


「お前か。成果は?」

「女が三人、男が一人、獣人の女が一人だ。罠に引っかかった冒険者で、けっこう優秀な連中なんだ。グレンデル様に献上したい」

「ほう……豊作だな」

「ああ。で、対価は支払いしてくれんだろうな?」

「もちろんだ。お前の好きなエルフを一人解放してやる」

「一人だと!? おいおい、今回のは若くて脂の乗った人間たちだ。最低でも三人解放しなきゃ割に合わないぜ?」

「ほぅ……文句がある、ということだな? ならば」

「あー……そういうつもりじゃない。わかった、一人でいい。だがその前に、グレンデル様に献上させてくれよ。グレンデル様も間違いなく気に入ると思うしな」

「いいだろう。では通れ」


 再び、馬車は走り出す。

 馬車が門番の横を通り過ぎた瞬間、俺は初めて龍人族を見た。


「うぉ……でっけぇ」


 身長二メートル半くらい。魔獣の皮で作った胸当てを素肌に装備している。むき出しの二の腕には緑色の鱗みたいなのがザラっと生えている。

 顔は凶悪そのもの。目はくりっと丸く瞳が黄色い。さらに瞳孔が縦割れしており、歯がギザギザに生えている。極めつけは、頭部に生えている二本の枝分かれしたツノだ。

 体格からして、体重は数百キロいじょうある。全身ムッキムキだし強そうだ。


「……長の家。今はグレンデルの家に向かってる。まずはオレが挨拶するから、全部終わったら好きに暴れろ。頼むぜ」


 ナキは小声でつぶやく。

 まさか、グレンデルをブッ倒すために冒険者を手引きしたなんて、バレたら処刑ものだ。

 馬車がでっかい樹の前で止まり、ドアが開く。


「降りろ」


 ナキは感情のこもっていない声で言う。

 ああ、演技は始まってんのね。

 馬車から降り、巨木を見上げる……なんと、巨木じゃなくこれが家だった。

 巨木にドアが取り付けられている。ナキは俺たちに歩くように言い、巨木のドアをノックした。


「ナキだ。グレンデル様に献上品を持ってきた」

「入れ」


 ドアが開き、門番龍人族よりもデカい龍人が何人もいた。

 巨木の中はただの広い空間だ。半円形みたいな部屋で、壁には凝った装飾の絨毯とか、狩りで使う弓矢、さらに農具などがかけられている。

 だが、それよりも驚いたのは。


「あ、ぁ……ぅ」


 プリムが怯えていた。

 危険な目にもあい、精神的にタフになったはずのプリムが怯えた。

 アイシェラも青くなり、一筋の汗を流す。

 クロネも、ネコミミや尻尾の毛が逆立っていた。


「グレンデル様。捕らえた人間を献上いたします」


 ナキは跪き、グレンデルと呼ばれた龍人に頭を下げる。


「ほう……」


 闘龍四天王の一人、グレンデル。

 全長三メートルくらい。筋骨隆々で緑色の龍麟が腕だけでなく首元まで覆われていた。

 ツノは四本も生え、うち二本は垂直に伸び、もう二本はヤギのようにねじ曲がっていた。

 魔獣の骨で作られた椅子に座り……あ、よく見ると椅子の下に敷かれてる絨毯みたいなの、魔獣の皮だ。すっごく凝ってるな。

 俺は、グレンデルをまっすぐ見た。


「……小僧」

「ん」

「ワシから目を逸らさない胆力、なかなかだ」

「どうも」

「『龍の掟』だ。ワシを倒すことができれば、貴様は自由……どうだ、闘るか?」

「龍の掟?」

「龍人が自身で決めたルールは絶対。そういうことだ。ワシはこの地に住まうエルフと、ワシに献上された人間相手に『ワシに勝つことができれば解放する』という掟を掲げている」

「ああ、そういやそうだっけ……うん、いいよ。闘おう」

「その意気や良し!!!!!!」

「うおっ」


 グレンデルはいきなり叫び立ち上がる。

 そして、周囲にいた龍人たちが拳を掌に叩きつけた。


「戦いの場へ!! くははははっ!! 楽しい時間になりそうだ」


 グレンデルは着ていたローブを脱ぎ棄て上半身裸に。そして、家の裏口から出ていった。

 すると、俺のそばに龍人が。


「戦いの場へ!!」

「戦いの場へ!!」

「人間。貴様、少しでも長くグレンデル様を楽しませろ!!」

「貴様の挽肉は、オレらが食す!!」


 やかましい連中だった。

 俺はプリムとアイシェラ、そしてクロネとナキを見てうなずく。

 最後にカグヤに言った。


「じゃ、ここはもーらいっ……あとはよろしくな」

「ぐぅぅ……アタシがやりたかったのにぃ」


 カグヤはつまらなそうに歯を食いしばる。

 俺は軽く手を振り、グレンデルが出ていったドアへ。

 すると、背後から声が。


「さぁ、貴様らは我らの相手をせよ!!」

「女!! 女は我々の食事だ!!……グハハハハッ!!」

「あのさぁ……掟だか何だか知らないけど、むかつくから蹴る」

「なにぃ? 人間の女、生意気なぶふぇぁぁっ!?」


 龍人の一人がカグヤに蹴られ吹っ飛んだ。

 カグヤは片足をブラブラさせて言う。


「アンタらで我慢してあげる。かかってきなさい!!」

「生意気なメス!!」「食ってやる!!」「いや、オレが喰う!!」


 まぁ、カグヤに任せて大丈夫だろ。

 俺の相手は、闘龍四天王の一人グレンデルだ。久しぶりに、相手にとって不足なしだぜ!!

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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