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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第十章・深き森のグリーンエメラルド

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アイシェラとお買い物

 パープルアメジストとグリーンエメラルドの国境の町。名前はリョークに到着した。

 まだパープルアメジストだってのに、ゴーレムは全くいない。人の行き交いもそこまで多くないし、獣人やエルフがけっこういた。人間はあまりいないのかな?

 町に入り、さっそく宿を探す。


「まずは宿を「んで、買い物だろ。わかってるって」……ならいい」


 御者を務めるアイシェラの上から俺は言う。

 荷車の屋根、ほんとに気に入ったわ。天気もいいし、穏やかな風がとても気持ちいい。


「うち、情報収集してくるにゃん。久しぶりに本気にゃん!」

『わぅん!』

「うん。お前にも手伝ってもらうにゃん……アイシェラなんかに負けないにゃん!」

『わんわん!』


 と、クロネはシラヌイと一緒に荷車の屋根から飛び降り、近くの路地に消えた。

 あいつはまぁ大丈夫だろう。というか、町に入るといなくなるのがパターンになりつつある。

 すると、プリムとお喋りしていたカグヤが窓を開けて言う。


「宿に付いたらお買い物でしょ? アタシとプリム、さっきそこで面白そうなお店見つけたから行ってくるね。買い出しはアンタらに任せたっ!」

「なにぃ!? お、お嬢様と私が」

「じゃぁねーっ!」


 なんと、カグヤはプリムを抱えて馬車から飛び出した。

 カグヤはそのまま着地し、プリムを連れて行ってしまった……けっこうでかい町だし、探すのは大変そうだなこりゃ。

 アイシェラも、わなわな震え歯を食いしばりながら言う。


「ギギギ……し、仕方ない。宿を確保して、買い出しに行くぞ……おのれカグヤめ、覚えていろ」

「ふあぁぁ~い……あれ、俺とお前で行くの?」

「不本意中の不本意だがな。なんだ、文句があるのか?」

「いーえ。ありません」

「ふん」


 馬車は町のほぼ中央へ。

 厩舎付きの大きな宿があった。部屋も厩舎も空いていたのでそこに決め、白黒号の世話を宿の従業員に任せ、俺とアイシェラは荷物を運ぶ。

 アイシェラは荷物のチェックをしながらメモを取った。


「着替えを全て洗濯して、保存食に水を買っておこう。馬車の点検もしなければ。よし……まずは工務店で馬車のメンテナンスを依頼し、雑貨屋で足りない道具や消耗品の買い物を、食料品店で保存食を買うぞ」

「昼飯は?」

「適当に済ませる。行くぞ」


 アイシェラと一緒に宿の外へ。

 そういや、こいつと二人になるの初めてかもな。


 ◇◇◇◇◇◇


 やってきたのは工務店。

 アイシェラの手には、いつの間にか町のマップが握られている。宿の受付にあったそうだ。

 工務店に入り、アイシェラはカウンターへ。

 カウンターには、恰幅のいいおばさんが立っていた。


「整備、点検を頼みたい」

「あいよ。ちょっと立て込んでるから……二日後になるけどいいかい?」

「ああ。構わない。物は馬車でな、グリーンエメラルドに入るから、整備点検はもちろん、足回りも頑丈にしてほしい」

「……あんたら、冒険者かい?」

「私は違う。そっちの男はそうだ」

「……はぁ、いるんだよねぇ。未知なる冒険とか、古代遺跡のお宝とか言ってグリーンエメラルドに入って、誰も戻ってこなかった。悪いことは言わないよ。エルフと龍人の怒りに触れたくなけりゃやめときな」

「……私もそうしたいのだがな」


 と、アイシェラは苦笑した。

 ま、行くのはもう決まっている。アイシェラには悪いが譲らんぞ。

 カウンターのおばちゃんは苦笑した。


「ま、仕事だしやるよ。グリーンエメラルドに入る冒険者はけっこういるからね。馬車の整備や強化のプランは準備してあるのさ。金はあるかい?」

「ああ。問題ない」


 アイシェラは金貨の袋を置く。

 この金貨。クレイ爺さんから受けた依頼の報酬だ。ジャラジャラして邪魔だし、アイシェラに預けておいたんだ。

 

「よしきた。前金だけもらっておくよ。あとは仕事後にもう半分もらうね」

「わかった。では頼むぞ」

「まいど!」


 工務店のおばちゃんはニッカリ笑って金貨袋をジャラジャラさせた。


 ◇◇◇◇◇◇


 保存食や消耗品を買う前に、お昼を食べることにした。

 中央広場にはけっこうな出店が出てる。いい匂いだわ……。


「さて、食事だが」

「肉!」

「……まぁいい。私も少々小腹が空いた」

「腹減ったって言えばいいじゃん」

「やかましい。肉……む、あそこに串焼きの店があるな。行くぞ」

「おう」


 豚串の店に行くと、いやはや……すっごいジューシーな匂いがした。

 さっそく注文をする。


「おっちゃん、豚串五本くれ!」

「私は二本でいい。支払いはこいつが」

「俺かよ。まぁいいけど……」


 俺はポケットから財布を取り出し、支払いをする。

 すると、店主のおっちゃんがニヤニヤしていた。


「若いっていいねぇ。カップル同士、仲良く豚串食べるなんてねぇ」

「ご主人。冗談でもやめてくれ。私には愛する者がいる……ふふふ。今夜あたり部屋に忍び込んで、その熟れた身体を……ぐひひ、じゅるっ!」

「おっちゃん、無視していいよ。豚串豚串」

「お、おお……なんかすまんかった」


 舌なめずりするアイシェラを無視し、豚串をもらった。

 さっそく一口……うん。肉汁濃くてうんまっ! この豚串大当たり!

 すると、ようやく戻ってきたアイシェラも豚串を齧る。


「ふむ。美味いな」

「ああ。二本で足りんのか?」

「というか、五本も食うお前が異状だ。私の二本はちょうどいい」

「ふーん。あ、飲み物欲しい」

「……仕方ない。私が奢ってやる。今回だけだぞ」


 アイシェラ、なんか優しいな。

 そして、アイシェラは出店でお茶を買ってきた。いつも厳しいし、何か裏があるんじゃないかと勘繰っちまうよ……まぁ普通にお茶だったけど。

 一休みし、買い物を再開した。


「保存食と、お、お嬢様の下着、下着……ぐふふふふ。よし、行くぞ」

「プリムに言いつけてやるー」

「馬鹿やめろ!」


 アイシェラと買い物なんて初めてだったけど、けっこう楽しかった。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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