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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第十章・深き森のグリーンエメラルド

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小さな村②

 盗賊を全員縛り上げ、空き家の一つに放り込んだ。

 馬車を村に入れ、プリムは怪我人を治療。クロネとシラヌイは盗賊の残党調査をし、アイシェラは村長と何やらお話中。俺とカグヤは盗賊を放り込んだ小屋へ来た。

 俺は、盗賊たちを見て言う。


「これ、エルフだよな」

「そうみたいね。耳長いし、髪の毛緑色だし」

「グリーンエメラルドの森に住んでるんじゃなかったのか? 三十人以上で盗賊団とか、どういうことだろうな?」

「知らないわよ。こいつらに話聞けばいいんじゃない?」

「だな……って、別にどうでもいいけど」


 すると、小屋にアイシェラとクロネが入ってきた。

 村長の男性と武装した農民も数名いる。


「パープルアメジスト王国の憲兵隊に連絡した。こいつらはそこで引き取られ、鉱山での強制労働となるだろう。見張りは村の住人たちが交代で行う。フレア、カグヤ、私たちは宿に行くぞ」


 農民たちが頷き、エルフたちを囲むように警備を始めた。

 村長は、俺とカグヤに頭を下げる。


「このたびは命を救っていただき、誠にありがとうございます。ささやかなお礼ですが、宿の宿泊料は無料とさせていただきます。これくらいしかお礼ができませんが……」

「いやいや十分。なぁカグヤ」

「そうね。ねぇ、お腹減ったわ」

「食事の用意も始めているだろう。それと、少し話がある……行くぞ」


 俺たちは宿へ向かった。

 治療を終えたプリムと、残党がいないことを確認したクロネたちも合流し、宿の食堂で早めの夕食を食べ、部屋に戻った。

 アイシェラは、さっそく話を始める。


「先ほどのエルフたちは、グリーンエメラルドから来た盗賊団だ」


 と、険しい顔で言う。

 一応、俺の一個年上なんだが……とてもそうは見えなかった。


「村長の話では、昔からエルフたちによる人攫いや盗賊行為が後を絶たないそうだ。エルフは神聖な森で暮らす美しき種族、というのはもう過去の話。今では窃盗や略奪行為を頻繁に行っている。攫った人はグリーンエメラルドで労働力として使われているらしい」

「にゃう……」


 クロネが悔しそうに唸る。どうやら、知らない情報がアイシェラから聞けたことを悔しがっているようだ。なんか可愛いネコだな。


「それと、気になることが一つ。どうやら、エルフの背後には『龍人』がいるそうだ」

「龍人。ドラゴンの血を引く、天使を除けば最強の種族にゃん。吸血鬼と同じく、天使が唯一手を出さなかった戦闘種族!」

「そうだ。グリーンエメラルドの森の奥深くに、龍人の里があるらしい……フレア、正直に言って、ブラックオニキスとはわけが違う。観光で行くような場所ではないぞ」

「えー? でも、面白そうじゃん。なぁプリム」

「は、はい。ちょっと怖いですけど……」

「アタシは行きたい! 戦いの予感っ!」

「うちは情報が欲しいにゃん」

『わん!』


 ブラックオニキスの時は、プリムたちが吸血鬼に囚われたって経緯があったから行ったけど、今回は完全な観光、もとい冒険だ。アイシェラが渋るのもわかる。

 でも、俺は行きたい。

 だって、これは俺の冒険なんだから。


「アイシェラ。俺は行きたい。俺、いろんな世界を見てみたい。それに……何があっても、プリムやみんなは守るよ。ってか、お前もすごく強くなったじゃん。実装型ゴーレムがあれば、そうそう遅れは取らないだろ?」

「当然だ。お嬢様の身体に掠り傷一つも負わさん。私の目が黒いうちは、お嬢様は守る」

「アイシェラ……ありがとう」

「ふふ。お礼は身体で」

「やだ」

「ふぅんっ!」


 悶えるアイシェラはもういい。

 というわけで、俺たちはグリーンエメラルドへ向かうことに。

 この村の先に大きな町があるのでそこで補給。

 地図を見ながら経路の確認をした。


「町には数日間滞在しよう。しばらく人里に入れないかもしれないからな……しっかり補給をして、情報を集めておこう」

「うん。ふふ、アイシェラってすごく頼りになるね」

「ああ。普段はクソ変態女だけどな」

「おい貴様、私を侮辱するような言葉は慎め!」

「情報……うち、本気で情報集めするにゃん! アイシェラなんかに情報で負けるなんてあってはならないことにゃん! うちの本気、見せるにゃん!」

「なに熱くなってんの? アタシは美味しい物いっぱい食べたいわー」

『わんわん!』


 こんな感じで、夜は更けていった。


 ◇◇◇◇◇◇


 翌日。

 村人たちから改めてお礼を言われ、村を出発した。

 どうも、エルフの盗賊団はけっこういるっぽい。この先にある国境の町に向かう途中もお気を付けて……なーんてフラグを立てられた。

 出発して数時間……森の道を馬車はゆっくり進んでいた。

 

『───ッ』


 シラヌイが何かに反応した時だった。


『ブルルルルッ!?』

「なっ……白黒号!?」


 俺たちの大事な仲間、馬の白黒号の脚に、何本もの矢が刺さった。

 倒れる白黒号、そして木の上で矢を番える盗賊団たち。

 そのうちの一人が言った。


「動くな。全員の心臓を狙ってる。積荷を全て、あと女───」


 盗賊は、最後まで言えなかった。


「…………」


 俺は、本気の殺意を盗賊たちに向けた。

 足から血を流し呻く白黒号。

 よくも、俺たちの仲間を。


「ひっ……お、おいテメェ!! 動くんじゃねぇ!!」


 俺の両手の五指から、漆黒の炎が燃える。

 両手の五指を広げ、黒い火の球を盗賊たちに向け発射した。


「第六地獄炎、『畜生道』」


 盗賊たちの身体を黒い炎が包み込む。すると、木の上にいた盗賊たちがボトボト落ちてきた。数は十人くらいか……意外と少なかったな。

 俺と同じくらい殺意をふりまいていたカグヤが止まる。


「ちょっと……一人でやらないでよ」

「悪い。それより」

「大丈夫です! 怪我はすぐに治しました!」


 プリムがいつの間にか馬車から飛び出し、白黒号を治療していた。

 クロネは気配を殺し盗賊たちの背後へ回っていた。クロネもけっこうキレていたようだ。

 すると、地面に落下した盗賊たちがモゾモゾ動く。


「あれ? あれ……? あれ!? な、なんだ、なんだこれ!?」


 盗賊は立てなかった。

 意識はある。怪我もしていない。だが、立てない。

 十人の盗賊たちは、全員が地面でのたうち回り、一人が俺に叫んだ。


「おま、お前!! 何をした!? なんだこれ!?」

「あはは。大したことじゃないよ。お前らの頭を呪って、身体の動かし方を滅茶苦茶にしただけだ。右手の人差し指を動かそうと思えば左足の親指が動いたり、腕を上げようとすれば太ももの筋肉が痙攣したり。ま、慣れれば這いずるくらいできるだろ」

「は? はぁぁ!? なんだ、なんだよこれ!?」

「ま、呪いは千日で解ける。反省するんだな」


 白黒号は立ち上がった。

 馬車は盗賊たちを無視し、そのまま走る。

 盗賊たちは、モゾモゾ暴れるだけしかできなかった。

 カグヤは、俺に言う。


「エッグい呪いね……」

「そう。第六地獄炎、エグイのばっかりなんだよ。直接殺す炎じゃなくて、苦しめるための炎ばかり……まさに呪いだな」

「……アンタを敵には回したくないわ」

「俺もあんまり使いたくない炎だ」


 それにしても、盗賊多いな。

 今の連中もエルフだったし。ここ、まだパープルアメジストなのにな。

 グリーンエメラルド。波乱の予感がするぜ。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
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