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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第十章・深き森のグリーンエメラルド

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シラヌイの狩り

『グルル……』

「ん、どうし……敵か」


 グリーンエメラルド領地へ向かう途中、馬車の屋根で一緒に寝ていたシラヌイがガバッと起き上がる。

 アイシェラに言って馬車を止めてもらうと、藪から黒いブタが飛び出してきた。


『ガァァッ!!』


 シラヌイは屋根から飛び出し、一瞬で全身を炎で包む。

 そのままクロブタに飛び掛かると、強靭な牙でブタの喉に噛みつき、そのまま身体を捻って地面に倒し、喉を食いちぎった。

 この間わずか十秒……速いな。

 そして、クロブタを噛んだまま引きずり、馬車の前にどさっと置いた。


『わん!』


 身体の炎を消すと、嬉しそうに尻尾をフリフリする。

 すると、アイシェラが俺に言う。


「褒めて欲しいのだろうな。おい、褒めてやったらどうだ?」

「だな。ふふふ、よーしよーし、よくやったぞシラヌイ」

『きゅぅぅーん』


 俺は馬車の屋根から飛び降り、シラヌイを撫でまくる。

 すると、カグヤとプリムも下りてきた。


「わぁ~、立派なブタさんです」

「今日の夕飯ね。シラヌイ、やるじゃん」

「ふむ……」


 アイシェラは太陽の位置、そして周囲を見渡す。

 

「今日はこのあたりで野営をしよう。野営には少し早いが、たまにはいいだろう。お嬢様、どうでしょうか?」

「うん! じゃあそうしよっか。フレア、ブタさんの解体できますか?」

「任せろ。クロネもいるしなんとかなるだろ」

「アタシ、水浴びしたーい」

「では、私と水場を探しに行くぞ。先ほど川を見つけたから、そう遠くにはないはずだ」

「うにゃ……騒がしいにゃん」


 馬車で寝ていたクロネも起きてきた。

 じゃあ、少し早い野営の支度といきますか!


 ◇◇◇◇◇◇


 クロネと一緒に、ブタの解体を始めた。

 喉を食いちぎったので、そこから勢いよく血が出ている。おかげで血抜きの必要がなかった。

 腹を捌いて内臓を抜く作業をしていると、プリムが言う。


「もう、見慣れちゃいましたねぇ……」

「けっこう野営してたからな」


 プリムやアイシェラと出会った当初、内蔵や血がダメだったプリムはきつそうにしていた。


「プリム、吐きまくってたよな」

「そ、そういうこと言わないでくださぁい!」

「あんたは相変わらずデリカシーないにゃん……」


 プリムが赤くなり、クロネは呆れている。

 デリカシーもなにも、俺は俺だからなぁ。

 すると、シラヌイがすり寄ってきた。


『くぅん』

「ん、どうした? 内臓は焼かないと美味しくないぞ?」

「絶対違うにゃん……」

『わんわん、わんわん!』

「ふむふむ。わかった」

『わぅん!』


 軽く吠えると、シラヌイは藪の中に飛び込んだ。

 プリムはシラヌイの消えた藪を見て、俺に言う。


「あの、シラヌイは何て?」

「さぁ?」

「え、わかったんじゃないのかにゃん?」

「俺が犬の言葉わかるわけないだろ」

「し、シラヌイ……行っちゃいましたけど」

「大丈夫だろ。シラヌイは強いし」

「ま、確かにそうにゃん。きっとお散歩にゃん」


 とりあえず、まずは解体を終わらせなければ。

 美味しい豚肉のために、仕事をしないとな!


 ◇◇◇◇◇◇


 シラヌイは一匹で森の中を散歩……いや、正確には『獲物』を探していた。

 先ほどフレアに言ったのは、『物足りないから狩りしに行っていい?』ということだ。フレアの許可もでたので、のんびり歩いて獲物を探している。


『くんくん……わう?』


 すると、不思議な匂いを感じた。

 生臭いような、土臭いような匂い。それと、どこか懐かしさを感じる匂い。

 シラヌイは首を傾げ、無視して歩きだそうと前足を前に───。


『───ッ!!』


 すぐにその場から飛びのいた。

 同時に、地面が割れ巨大な『口』がバクンと閉じる。


『ぐるるるるる……ッ!!』


 シラヌイの全身が燃え、顔つきも険しくなり毛も逆立つ。

 地面から現れたのは、全長2メートルほどの『亀』だった。

 身体が亀そのもの、口には牙があり、甲羅部分はトゲだらけ、全身がゾウのような皮膚に覆われた、焦げ茶色の亀がいた。

 シラヌイを丸呑みにしようと地面に潜っていたようだ。


『ガルル……るぅ?』

『ゴロロ……オォ?』


 二匹は互いを見て、疑問を浮かべた。

 そう、この犬は───この亀は───『同類』だ。

 そう結論付けた。

 片や『炎犬アマテラス』という霊獣。片や『地亀ゲンブ』と呼ばれる霊獣。

 炎を地を司る霊獣が、こんな何もない森で出会った。

 だが、顔見知りというわけではない。シラヌイは食われかけたし、ゲンブもシラヌイを食べるつもりだ。同じ霊獣というカテゴリに所属するだけで、別に仲良しこよしというわけではない。


『グルルルル……ゥ!! ガァァァッ!!』

『グロロロロロ!!』


 獲物は決まった。

 シラヌイは全身を激しく燃やし、ゲンブに飛び掛かった。


 ◇◇◇◇◇◇


 シラヌイの攻撃は主に炎、そして牙と爪である。

 対するゲンブは鋭利な牙だけだ。甲羅の防御力は非常に高いが動きが鈍く、狩りは待ち伏せを行うタイプなので直接戦闘は苦手。

 なので、ゲンブはシラヌイが強敵だと一瞬で悟り戦いを放棄、手足を引っ込め防御の姿勢を取る。


『ガルルルルッ!!』


 シラヌイの爪が甲羅を傷つけるが、ほんのわずかなひっかき傷だけがついた。

 全身炎で燃やし甲羅に抱きつくように炎を燃え上がらせるが、それでもダメージはない。

 

『ワゥ!! ワウワウ!! ワウゥゥゥツ!!』


 威嚇も通じない。

 防御を徹底した姿に、シラヌイも徐々に諦めモードになる。

 そして、腹が立つので甲羅に小便をかけてその場を去った。シラヌイが去った後でゲンブはにゅっと顔を出すが、小便をかけられたことで怒り心頭だったそうだ。

 その後、白けたシラヌイは狩りをすることなくフレアの元へ。


「お、帰ったか」

「ちょうどいいな。では……そろそろ焼こう」

「焼肉です!」

「やっきにくー!」

「たまにはお肉もいいにゃん」


 フレア、アイシェラ、プリム、カグヤ、クロネが出迎える。

 クロブタは解体され、美味しそうなサシの入った肉が皿に山積みになっている。


『わぅぅぅん!』

「あっはっは。大丈夫! シラヌイの肉もたっぷりあるぞー」

『きゅぅぅん』


 ゲンブにはムカついたが、シラヌイはすっかり上機嫌だった。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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