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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第十章・深き森のグリーンエメラルド

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黒天使、そして堕天使

 次元の間に、黒天使たちのアジトがある。

 ここに入るには、『次元』の管理者ラハティエルの力が必要だ。彼女の能力がないと黒天使たちはアジトに戻ることができない。

 黒天使の組織こと、『懲罰の七天使アインソフオウル・セブン』の正規メンバーは七人。一人死亡、一人脱退したので現在五人である。

 ラハティエルは、アジトの入口でだらけていた。


「はぁぅ~……つまんなぁい」

「ラハティエルさん」

「あ、マキエル」


 だぼだぼのシャツだけを着た少女ラハティエルは、漆黒のスーツを上下ばっちり決め、黒い帽子をかぶっている糸目の男、マキエルに話しかけられた。

 マキエルは飴を出し、ラハティエルへ渡す。


「わぁ、ありがとー」

「いえ。退屈でしょうが我慢してください。いずれ我らが神『黒勾玉(クロマガダマ)』様が我らに指示を下さる」

「んー……クシエルは?」

「…………」


 クシエル。

 彼女は、黒天使の神『黒勾玉(クロマガダマ)』の声を聴く役目だった。だがある日突然、自分は『呪術師』だと言い、去ってしまったのである。

 さらに、黒天使の神は『黒天使動くべからず』と言った……つまり、黒天使たちは動けなかったのである。

 マキエルはどう言おうか悩んでいると、ステッキを付いた初老の男が現れた。


「こんにちは。マキエル氏、ラハティエル氏。二人でお話ですかな?」

「あ、キトリエル」

「キトリエルさん……どうも」

「ふぅむ。退屈なさっているようだ。どうです? あちらでカードでも」

「やるやるー」

「……お付き合いしましょう」


 アジトの休憩所でカードをすることに。

 三人で休憩室に向かうと、水っぽい、何か引きずるような音がした。

 このアジトを利用するのは黒天使だけ。それに、すぐにわかった。


「あ、プルエル」


 ラハティエルが指さしたのは……全身ずぶ濡れの女性だった。

 髪があり得ないほど長いせいで床を引きずっている。さらに、常に濡れているのでアジトはびしょ濡れだ。着ている服もボロボロな分厚いマントだけで、長い髪のせいで顔が見えず、わずかに口元が見えるだけだった。

 彼女はプルエル。黒天使の一人である。


「プルエル。いっしょにあそぼー」

「…………ええ、あそびましょ。何して遊ぶ? 死体ごっこ?」

「い、いえ。カードを……プルエル氏、どうかな?」

「カード? カードで遊ぶの? 的は?」

「ま、的は必要ないですな。ねぇマキエル氏」

「こちらに振らないでほしいですね……」

「的がないと遊べない。カード投げ……うふひひふひ、切れるし刺さるし、ふふひひひふ」

「「…………」」


 プルエル。

 彼女は、黒天使の中でも相当な変人だった。

 正直、あまりしゃべりたくない相手だ。


「プルエル、あそぼー」

「あそぶー……あそぼ?」

「……で、では行きましょうか」

「……はぁ」


 黒天使のアジトは、どうにも退屈だった。


 ◇◇◇◇◇◇


 堕天使の一人ガブリエルは、ブルーサファイア王国の自宅で煙管をふかしていた。

 家には、四人の男女が集まっている。


「で、ばあさん……イアカディエルの奴、呪術師だったんだって?」

「そうさね」


 一人目は、軽薄そうな冒険者風の男。名はダニエル。

 ソファに深く座り、酒瓶をそのまま飲んでいた。


「ふぅん……いやはや、呪術師とはね。ボクにはまるでわからなかったよ」


 二人目は、巨大なリュックに寄り掛かりながらフムフム唸る男。名はコクマエル。

 どうも緊張感がない。だが、ガブリエルは気にしなかった。


「くっだらない。裏切りのあたしたちをさらに裏切るなんて。ねぇガブリエル、あたしがブチのめしてもいい?」


 三人目は、格闘技者のような服装に鉢巻を巻いたポニーテールの少女だ。手足にはバンテージを撒き、拳をパシンと打ち付ける。

 

「エゼキエル。なんでも力で解決しようとするんじゃないよ。それに、あたしらの受けた命令は『待機』だ。うかつな真似して神の怒りを買うつもりかい?」

「うぐ……」


 エゼキエルと呼ばれた少女風の堕天使は小さくなる。

 すると、四人目……部屋の隅で華を生けていた女性が言う。

 着物を纏った、どこか神秘的な雰囲気の女性だった。


「ともかく、うちらにできるのは待つことだけや。大人しゅうしとこうな」


 パチン、と鋏で花の茎を切り落とす。

 ガブリエルは、口から煙草の煙を吐いた。


「アルミサエルの言うとおり。お前たち、この家は好きに使っていい。他の連中が合流するまで、勝手なことをするんじゃないよ」

「お、ならコクマエル、飲みに行こうぜ♪」

「い、いいけど……ダニエル、お金あるのかい?」

「あたし、泳いでくる!」

「うちは華を生けてるわ」

「……やれやれ」


 ガブリエル、ダニエル、コクマエル、エゼキエル、アルミサエル。

 そして、まだ来ない三人。

 ガブリエルは、煙草の灰をそっと落とす。


「我らが神、『トリウィア』よ……なぜ、動いてはならぬのか」


 ガブリエルの問いに、神からの返事はなかった。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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