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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第九章・からくりの王国パープルアメジスト

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BOSS・呪闘流八極式焔種第一級呪術師セキドウ

 セキドウと名乗った男は、俺と同い年かちょい上くらいだ。

 両手に炎を纏い、俺の知らない型で構えを取っていた。

 着ている服は呪道着……それに、なんとなく雰囲気が呪術師っぽい。

 俺は甲の型で構え、様子を見た。


「甲の型『甲式の構え』か。様になってんじゃねぇか」

「そりゃどうも……」


 間違いなく呪術師。呪闘流を収めた奴だ。

 ジョカといいハクレンといい、呪術師がまだいたなんて。

 というか、なんで炎を使えるんだ?


「おら、頭悪いくせに余計なこと考えてんじゃねぇよ。かかってきな」

「いや俺、頭悪くないし」

「はっ……じゃあ、オレから行くぜ!!」

「───っ!!」


 セキドウは地面を滑るように迫ってきた。

 拳に炎を載せ、鋭い一撃───いや、細かい連撃を繰り出す。


「っく……流の型『流転掌』!!」


 流転掌で、セキドウの拳を全て受け流す。

 だが、セキドウは笑っていた。


「滅の型、『百花繚乱』!!」

「ぐっ!?」


 顔面を狙った片手連続パンチ。

 俺の得意技を使われた。だが、俺だって負けていない。

 反転し拳を躱し、セキドウの脇腹に向かって蹴りを放つ───だが、セキドウの腹は鉄のように硬い。


「甲の型『鉄丸』───痒いぜ」

「蝕の型、『腹下せ(ゲーリ・オウゲ)』」


 足から呪力を流し、腹痛の呪いを送る───だが、やはり効かない。

 呪術師に、呪術は通じないのだ。


「だらぁっ!!」

「っく……強い」

「まだまだぁぁぁっ!!」


 セキドウの動きは小さく細かい。

 超接近しての連続攻撃だ。拳、突き、肘、膝、蹴り。手足の使い方が抜群にうまい。

 俺は攻撃をかわし、受け、防御し反撃───だが、セキドウも上手く躱す。

 

「やるじゃねぇかっ!!」

「そりゃどうもっ!!」


 パパパパパパパ───と、細かい攻防が続く。

 手数。それこそがセキドウの得意技なのか。でも、それだけじゃない気がした。

 そして……楽しかった。


「ハハハハハ!! 楽しいぜぇ!!」

「───ああ」


 楽しかった。

 同じ呪闘流の戦士と戦ったのは、先生以外いない。ラルゴおじさんの門下生や、村の人たちと戦うことは禁じられていたから。だから……同年代の呪闘流と戦うのが、とても楽しかった。

 だから───俺も本気を出す。


「む……ッ!?」

「流の型、『漣』」

「甘い!! 流の型、『漣返し』!!」


 セキドウの拳を受け軌道を変え体勢を崩す───だが、変えた体勢からおれの拳を掴み、逆に体勢を崩されてしまう。

 俺のバランスが崩れ、セキドウがニヤリと笑う。


「滅の型、『打厳』!!」

「───」


 崩れた体勢から、顔面を狙って拳が放たれた。

 だが───俺は崩れた体勢から、その攻撃を右の手のひらで受ける。


「流の型『極』───『螺旋巡』」

「っ!? がぁぁっ!?」


 セキドウの力がそのまま返され、セキドウの腕がビキビキと音を立てた。

 そう。崩れた体勢こそ俺の狙いだった。崩れたように見せかけ、螺旋巡が最も狙いやすい位置を取って拳を誘導したのだ。

 セキドウは俺から離れ、腕を抑える。


「っつ……『極』かよ。てめぇ、習得してたのか」

「え?……いや、習得するだろ」

「はっ、何もしらねぇのか。基礎四大行の『極』は習得するのが至難なんだよ」

「え、そうなんだ……先生、そんなこと言ってなかったけど」

「……先生、ねぇ。まぁいい。だが……テメェ、これは知らねぇだろ?」

「?」


 セキドウは、両拳と足に炎を集中させた。

 俺の知らない構え……再び構える俺。


「───行くぜ」


 セキドウの踵から炎が噴射、地面を滑るように移動してきた。

 そして、手の炎が螺旋を描くように回転して燃え、そのまま突きを繰り出す。


烈の型(・・・)、『回転炎旋突き』!!」

「なっ───!?」


 速い───!?

 突きの速度が今までと桁が違う。

 俺は見た。セキドウの肘、手首、肩にも炎が燃え、腕の突き出す勢いを加速させている。

 俺は流転掌でかろうじて躱す───俺より早い。


「っぐ……!? がぁぁっ!?」


 一撃、肩に喰らってしまい吹っ飛ぶ。

 だが、地面を転がるように体勢を整えた。


「烈の、型……?」

「やっぱ知らねぇようだな。呪闘流の技」

「……どういうことだ」


 肩を押さえる俺。

 第四地獄炎は自分に使えない……くそ。

 すると、セキドウは構えたまま言う。


「基礎四大行を終えた呪闘流の闘士は、炎の資質に合わせ流派を学ぶ。それが『八極式』だ。忘れたのか? オレらは地獄炎の呪術師(・・・・・・・)だぜ? 呪術師の技と炎を組み合わせた技こそ、真の呪術師。呪闘流の闘士なんだよ」


 な、なんと……え、じゃあ俺って、え? とんでもなく遅れてるんじゃ。

 

「お、俺……甲種第三級なんだけど」

「ぶははははははっ!! いやぁ、うん。どんまい」

「うぉぉぉ……じ、地味にショックぅ……え、ってことは!! 武器、武器術って!!」

「武器ぃ? 武器術は八極式から習えるぜ。ちなみにオレも武器は使える。まぁ、今のお前相手に使うつもりはないけどな」

「…………」


 俺、弱すぎぃ……八極式って、えぇ~?

 がっくり肩を落としていると───風が舞う。


「セキドウ。喋りすぎだ」

「んだよ、別にいいだろ?……で、見つけたのか?」

「ああ」


 いきなり、緑色の炎……第五地獄炎の炎が燃えた。

 空を見ると、長髪の男が浮いていた。呪道着を着てるってことは、こいつも。


「貴様がヴァルフレアか……」

「……あんたは?」

「フウゲツと名乗っておく。今はそれだけでいい……セキドウ、力試しは終わっただろう。そろそろ帰るぞ」

「へいよ。おいヴァルフレア、もっと鍛えて強くなれ。オレらの目的のためにもな」

「あ、おい!!」


 フウゲツと呼ばれた男が手をかざすと、セキドウの身体が浮かぶ。


「フウゲツ、目当てのモンは?」

「これだ。この国のダンジョン最深部に隠されていた」


 フウゲツが懐から取り出したのは、見覚えのある本───あれは。


「それ、ヴァジュリ姉ちゃんの日記……!? お前ら、それ!!」

「この先はグリーンエメラルドだ。エルフや龍人と戦って少しは強くなれよ!!」

「ふ……ではな」

「あ、待ておい!!」


 二人はすごい速度で飛んでいった。

 もう、わけわからん……なんだよ一体。

 そして、ようやく馬車が俺の元へ。アイシェラが馬を止めて下りてきた。カグヤとクロネ、プリムも下りてくる。


「何があった!? おいフレア!!」

「…………」

「なんか燃えてる……敵いたんでしょ!!」

「……もういないにゃん。気配が消えた」

「フレア……大丈夫ですか?」

「…………」


 俺は、しばらく青空を見上げたまま動けなかった。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
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