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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第九章・からくりの王国パープルアメジスト

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BOSS・Type-シリウス②

 シリウスが空けた穴から外へ出ると……マジかよ、町が破壊されていた。

 大規模な破壊ではなく、まるで何かが横切ったように、一直線に家屋が破壊されていた。

 そして、その破壊の元凶……シリウスが、二足歩行でどこかへ向かっている。


「狙いは黄金級ね……確か、工場とか言ってたわね」


 俺に抱きつくカグヤが言う。

 カグヤは俺の首に手を廻し、身体を密着させていた。空中だしくっついてないと危ない。

 俺は、町を見下ろす。


「……あんまり騒ぎになってないな」

「そりゃそうでしょ。今日は一年に一回の『オリジナルゴーレム大会』だし、町の人はみんな、あの会場へ行ってんでしょ」


 あの会場。

 カグヤが首を動かし、その巨大な建物である『アメジストドーム』を見た。

 あそこで、モルガンやメイカが頑張っている……って、おい。


「……なぁカグヤ、シリウスが向かってるのって」

「……ドーム、ね」


 シリウスは、アメジストドームを目指して歩いていた。

 すると、真下から声が。


『おーい聞こえる?』

「あ、クレイ爺さんだ……なんだあれ?」

「飛んでるわね……」


 クレイ爺さんは、妙な乗り物に乗り、空を飛んできた。

 車輪がいくつも回転し浮き上がっているようだ。俺は背中の翅を羽ばたかせ、クレイ爺さんの傍へ。


「いやー、うんうん。きみの背中の翅はすごいねぇ。どうやって浮力を得てるんだい?」

「ふりょく? って、そんなことより、あのゴーレムを」

「うんうん。シリウスの目的は黄金級の破壊。昨日、きみたちが破壊したアクエリアスとレオは、修理のために工場へ運ばれたはず。で、工場ってのがあそこ」


 クレイ爺さんが指さしたのは、アメジストドームの先にある巨大工場だった。

 ちょうど、アメジストドームを横切った先にある。


「やばいぞ……早くなんとかしないと」

「あ、そのことだけど。実験は中止ね」

「……は?」


 俺とカグヤは、信じられない物を見るようにクレイ爺さんを見た。

 クレイ爺さんは、ヘラヘラしたまま言う。


「せっかくだし、黄金級破壊モードの実力を試してるよ」

「いや……このまま進むと、アメジストドームを横切るんだぞ!? あそこには大勢いる!!」

「そうよ!! 町のほとんどの住人があそこで大会見物してるのよ!?」

「うんうん……うーん?」


 クレイ爺さんは、首を真横に傾けて眉をハの字にして言った。


「そうだけど……それ、小生の実験に関係ある?」

「…………何、言ってんだ?」

「いや、大事なのは実験だよ。ヒトが何人死んだところで得られるデータは大したことない。ささ、きみたちの仕事はおしまい。たぶんだけど、黄金級を破壊したら命令が終了して止まるかもしれない。それに、きみたちの実力じゃあシリウスは止められないよ」

「…………マジかよ」

「…………こいつ、イカレてるわね」

「あっはっは。うんうん、狂ってないと仕事なんてできないしねー」


 俺とカグヤは互いの顔を見合わせ、頷いた。


「悪いけど、あんたの言うことはもう聞かねーよ」

「おや? なんでだい?」

「このまま町が壊されるのを見てられるかっての。アタシ、こういうの嫌いなのよね」

「えー? ああ、町が破壊されるのが嫌なのかい? 町なんてすぐに修復されるって。それよりデータを」

「カグヤ、本気でいくぞ。出し惜しみするな」

「アンタもね」


 俺とカグヤはクレイ爺さんを無視し、シリウスに向かって飛んでいった。


 ◇◇◇◇◇◇

 

「カグヤ、作戦考えた」

「作戦?」

「ああ。ごにょごにょ……」

「なるなる……面白いわね。それで行くわよ!!」

「おう!!」


 俺は、カグヤを抱えて急上昇。

 カグヤの両手を掴み、カグヤは俺の手にぶら下がった。

 そして、シリウスめがけて急降下する。


「第五地獄炎───」

「神風流───」


 急降下しながら回転する。

 シリウスも、ようやく上空の俺たちに気付き顔を上げる。目がチカチカ光るがもう遅い。

 回転しながら狙いを定め、カグヤの手を放した。


「「合体奥義!! 『空覇・流星杭くうは・りゅうせいくい』!!」」


 急降下と回転で威力を高めたカグヤの両足揃え蹴りが飛んでいく。

 その勢いは、これまでカグヤが繰り出した蹴り技の中でもトップクラスの勢いだ。

 そして、回避行動しようとしたシリウスの胸に、カグヤの蹴りが突き刺さり、シリウスは真後ろに吹っ飛んで倒れた。


「っぐぅ……っ!?」


 だが、カグヤの脚も無事に済まない。

 両足が砕け、オリハルコン製の具足にも亀裂が入る。そして、着地に失敗したカグヤは地面を何度も転がり、民家の壁に激突してようやく止まった。


「カグヤ!!」


 俺は第五地獄炎を解除、カグヤの元へ。

 カグヤは血まみれで息も絶え絶えだったが、第四地獄炎で回復させる。


「いったぁ……初めてアンタと協力した気がするわ」

「同感。思いつきだけどなかなかいい蹴り技だったな」

「そうね。で……シリウスは!?」

「…………どうやら、まだ元気みたいだな」


 シリウスが倒れた方向には、民家やら工場やらがあった。

 ドームに行かなかった住人たちが逃げ出し、シリウスが立ち上がり変形……二つの頭を持つゴーレムの犬が、俺とカグヤを見ていた。


「あっちも本気だな……よし、次は俺の番。久しぶりに最大火力、見せてやるぜ」

「むー……まぁ、いいわ」


 俺は右手に『火乃加具土』を装備、全身を燃やし───。


「……あれ?」


 シリウスが、跳躍した。

 遥か上空に。そして、飛んでいった先は……おい、まさか。


「フレア、ドーム!!」

「くそ!! あの野郎、俺たちを無視して黄金級を優先するつもりか!!」

「───やばいわ。シリウス……ドームの中央に着地するつもりよ!!」

「させるかよ!!」


 俺はカグヤを置いて走り出す。

 両腕に紅蓮の炎を集め、一気に噴射して飛びあがる。

 そして見た。シリウスが、アメジストドームに着地した瞬間を。


 ◇◇◇◇◇◇


 アメジストドームでは、オリジナルゴーレム大会の真っ最中だった。

 会場の歓声や熱気は大気を震わせ、外で黄金級すら凌ぐ巨大ゴーレムが暴れているとはだれも思っていない。

 プリムは、シラヌイを撫でながら各社自慢のオリジナルゴーレムを観戦していたが……。


「あら? シラヌイ、どうしたの?」

『…………』


 シラヌイが、空を見上げたままピクリとも動かなくなった。

 すると、アイシェラの傍で控えていたブルーパンサーも反応する。


『警告。警告。大型熱源感知』

「む……どうした」

「び、びっくりしたにゃん……なにそれ?」

「ああ。こいつには熱源を感知する機能が搭載されているそうだ。貯金をすべてはたいたものだからな……使えそうな機能は一通り搭載してある」


 アイシェラはブルーパンサーを撫でる。

 そして、シラヌイに聞いた。


「シラヌイ、何を感じたのだ?」

『グルルル……』

「空?……なにもないにゃん」


 プリム、アイシェラ、クロネは空を見上げる。だが……青空が広がるだけだ。


『さぁてお次は『フジヤマ工業』渾身の一品!! なんとなんと!! 究極の農作業ゴーレムの登場だぁぁぁぁ!! これ一台で田畑の整備はお任せ、肥料や水やりも計算して行って───』


 司会者のマックスが、舞台に登場した農耕用ゴーレムの紹介をしていた───次の瞬間。

 空から巨大な『二頭犬』が落ちてきて、農耕用ゴーレムを踏み潰した。


『グォルルルルル……』


 それは、ゴーレム・エンタープライズ最高傑作の『Type-シリウス・オルトロス』だった。

 二頭の頭を持つ巨大なゴーレムが、パープルアメジストの約八割の住人が集まるアメジストドームの中央に現れた。


『え、え?……えっと、なんでしょうこれは……こんなの予定にありましたっけ?』


 司会のマックスも困惑。会場内も困惑していた。

 そして───。


『グォォォォォォォーーーーーーンンン!!』


 シリウスの雄叫びが会場内に響いた。

 プリムたちは耳をふさぎ、クロネが言う。


「な、なにこれ……こんなの、情報にないにゃん!! 黄金級……じゃ、ない!?」

「っく……まさか」

「……たぶんですけど、フレアとカグヤが関係しているような気が……」

『グルルルル……わう?』


 すると、身体を燃やし唸りを上げていたシラヌイが、再び上空を見上げ……嬉しそうに吠えた。


『わんわん!! わんわん!!』

「し、シラヌイ? どうし───あ」

「…………やはり、あいつか」

「にゃん……後で話をきくにゃん」


 上空で、真っ赤な炎が荒れ狂っていた。

 紅蓮の炎が、太陽よりも明るく会場を照らす。


「第一地獄炎『火乃加具土』魔神解放(オーバドライブ)!! 『火乃加具土(ひのかぐつち)煉獄絶甲(れんごくぜっこう)』!!」


 炎が爆発的に燃え上がり、フレアの右手の籠手が消え───背後に、巨大な『炎の鎧』が顕現する。

 肉のかわりに炎が詰まった紅蓮の鎧は、フレアの動きに合わせ拳を振りかざす。

 その姿はまるで───炎の化身。究極の炎。真紅と紅蓮のゴーレム。

 フレアは、シリウスの真上で叫んだ。


「燃え尽きやがれぇ!! 第一地獄炎、極限奥義!! 『真・灼熱魔神拳』!!」


 フレアの拳がシリウスの頭を直撃し、煉獄絶甲の拳がシリウスのボディを溶解させた。

 砕け、ドロドロに溶けたシリウスの傍には、勝利の構えをしたフレアと煉獄絶甲が立っていた。


「押忍!!」


 こうして───シリウスとの戦いは幕を閉じた。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
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[気になる点] カグヤ弱い
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