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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第九章・からくりの王国パープルアメジスト

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BOSS・?????&?????②

「…………」

「アイシェラ、仏頂面しないの」

「はい。ですが、一度誘拐に合ったのです。大勢の前でも警戒せねば」


 アイシェラは、オリジナルゴーレム大会の観戦中でも警戒していた。

 プリムは、クロネとアイシェラに挟まれる形で座り、足下にはシラヌイが座っている。さらに、アイシェラの傍にはブルーメタリックな豹ことブルーパンサーが控えていた。

 クロネは、出店で買った魚の干物を食べながら言う。


「うちもヤンガース整備場のこと調べたにゃん。でも……誘拐の痕跡も、その後の足取りもさっぱりにゃん。まるで最初から存在しなかったみたいに……」

「そうなんですか……?」

『くうん……』


 シラヌイは、プリムに撫でられて気持ちよさそうにしていた。

 新入りのブルーパンサーにちょっとだけ構い、その後はのんびりしている。

 この国ではプリムを守るというフレアの命令を忠実に守っていた。


「クロネ。何度も言うが警戒はしておけ」

「はいはい。うち、ここに来てから調べものばっかりだし、今日は純粋に楽しみたかったにゃん……バトル大会で優勝したのに、大手企業は声掛けしてこないし……」

「特級冒険者のせいだろうな」

「うん。そう思うにゃん」


 会場では、オリジナルゴーレムのお披露目が続いている。

 人型ではなく動物型やドラゴン型などのゴーレムや、新型のゴーレム荷車だったり、アトラクションのような斬新なゴーレムが紹介されている。

 そして、モルガンの出番が来た。


『続きまして、モルガン整備場の新型ゴーレム!! おっと、先日のバトル大会で優勝を飾ったモルガン整備工場だぁぁぁぁっ!!』


 司会のマックスが紹介すると、ド派手な衣装を着たモルガンと、似たような衣装を着て真っ赤になっているメイカが登場した……ちなみに、メイカは衣装を拒否したが、他に着る予定だった衣装をモルガンに隠され、やむを得ず着ての登場だった。


「……兄さん、後で殺す」

「ふっはっは!! 後でなら死んでも悔いはない!! さぁ妹よ、夢の大舞台で羽ばたこうじゃないか!!」

「は……?───って!?」


 すると、モルガンとメイカの背中からマントが広がった。

 そして、モルガンはステッキをクルクル回す。すると、会場の隅っこに設置された砲台から砲弾……いや、キュータマ1号が発射され、モルガンとメイカの前で止まった。


『なーんとド派手な演出ぅ!! さぁ、モルガン整備場のゴーレムはぁぁ!! キュータマ1号だぁぁ!! さぁ仲良し兄妹、さっそく説明を頼むゼェ!!』

『おふこぉぉーーーっす!! さぁ諸君、聞いてくれたまえ!!』


 メイカは恥ずかしそうで、モルガンは……どこまでも楽しそうだった。

 

 ◇◇◇◇◇◇


「───カグヤ、どうだ?」

「うん、見えてきた……」


 俺とカグヤは、闇の中で背中合わせしていた。

 敵の実装型は漆黒で、闇の中で真価を発揮するようだ。奇襲と離脱の繰り返しをしているようだが……さすがに、もう慣れた。

 俺とカグヤは離れ、前に向かってダッシュする。


「甲の型、『捻打厳』!!」

「神風流、『鉄杭』!!」


 強烈な正拳と前蹴りを繰り出すと、硬い感触がした。

 鎧が砕ける感じ。たぶんカグヤも感じているだろう。

 目も完全に慣れ、黒い実装型の僅かな気配も感じ取れるようになった。あとは、隠れている実装型を一人ずつ潰すだけ。

 

「滅の型、『桜花連撃』───からの『轟乱打』!!」

「神風流、『凪打ち』!!」


 十人ほど屠ったところで、闇が晴れた。

 室内に明かりが灯った。室内はやはり広い。だが、壁や地面は鉄板になっており、壁自体が発光して明るくなっているようだ。

 

『お疲れさん。いいデータが獲れたよ』

「そりゃよかった。で、次は?」

『もちろんいるよ。休憩しなくて平気かい?』

「ああ「フレア───」……ん、どうした?」


 カグヤが、何かを見つめていた。

 それは、今まで闇に紛れて戦っていた実装型ゴーレムだ。

 手加減はしたから中の人は死んでないはず───。


「…………おい、これって」


 だが、おかしかった。

 実装型ゴーレムの仮面部分が割れ、顔が見えていた。

 顔が見えるのはいい。だが……その顔が問題だった。


「……こいつは、ヤンガース……だよな」


 そう。実装型ゴーレムを纏っていたのは、ヤンガースだった。

 しかも、様子がおかしい……顔は真っ赤になり、目も充血している。それに、鼻血も出てるし、呼吸が荒かった。


「なんでこいつが……しかも、様子がおかしいぞ」

「か、かが……だ、ずげ……」

「お、おい……?」

「ぁ───」


 すると、ヤンガースの目が真っ白になり……そのまま死んでしまった。

 カグヤが他の連中を調べたが、全員が死んでいた。

 

「おい、なんだよこれ……!!」

『ん? ああ、それ? いやぁ、新型の実装型を着たい人がいなくてね。うんうん。ちょうどきみたちやモルガン整備場に復讐したいって子がいたから使わせてもらったのさ。きみたちを殺せば復讐は果たせるし、小生も実験データが取れるしね。肉体強化にいっぱい投薬したせいで寿命が短くなっちゃったけど』

「…………マジで言ってんの?」

『もちろん。うんうん。それより、次の実験をするから。準備はいいかい?』


 俺は、ヤンガースたちを見下ろす。

 確かに、ムカつく野郎だ。でも……こんな死に方は望んでいない。

 誰かが言っていた……特級冒険者は、頭がおかしいって。

 確かにその通りだった。クレイ爺さんは、頭がおかしい。人の命なんて何とも思っていない。冷酷とかじゃない、何かが欠落していた。

 

「フレア、さっさと終わらせて帰るわよ。ここ、いたくない」

「同感……」


 なんとなくわかった。

 クレイ爺さんには、何を言っても無駄だ。

 頭にくるとか、ぶっ飛ばしてやるとかじゃない。あれは、悪意でも善意でもない何かで動いている人だ。

 

『じゃ、次は小生の究極傑作だから。これまでゴーレム・エンタープライズの商品ゴーレム全てを戦わせてみたけど、全く相手にならなかった。いやはや、強すぎて性能をフルに発揮できないのは困るからねぇ。うんうん。本気で相手をしてくれたまえ』


 すると、床が割れ、何かがせり上がってきた。

 

「……なんだ、これ」

「ゴーレム……よね?」


 それは、あまりにも巨大な人型ゴーレムだった。

 以前、レッドルビー王国で戦った双子天使が作った巨大天使よりも大きい。

 外観は人型。全身甲冑を着込んだようなスタイルで、身体中にゴテゴテしたパーツがくっついている。


『黄金級十二体を一体で破壊することを想定して作った究極の黄金級(ゾディアック)……その名も、『Type-シリウス』だ。いろいろ兵器を搭載しているから、順に試していくよ』

「試してって……マジかよ」

「でっかぁ……でも、あんまり気ノリしないわね」


 戦闘バカのカグヤが言うのは珍しい。

 だが、敵ゴーレム……シリウスとやらは、すでにやる気になっていた。

 目が赤く光り、ゴゴゴと音を立てて動き始める。


『じゃ、実験開始』

「じゃ、じゃねーよ……まぁ、思いっきり燃やしてやるか」

「アタシも、蹴り壊す。さっさと終わらせて帰るわよ」


 パープルアメジスト最強のゴーレム、シリウスとの戦いが始まった。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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