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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第九章・からくりの王国パープルアメジスト

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BOSS・黄金級鉄機『獅子座』レオ・ノウヴァ②

 カグヤとドミニクの戦いは、佳境に入っていた。

 互いに一歩も譲らない攻防で、決定打が入らない。

 カグヤの回し蹴りがドミニクの腹部に突き刺さり後方に吹っ飛ぶ。だが、ドミニクはピンピンしていた。

 少し距離が空き、ドミニクは首をコキコキ鳴らす。


『大したものだ……ふふ、恐るべき使い手が外にはいるのだな』

「アンタもね。ふふ、外はいいわよ? とんでもない奴がゴロゴロしてる。アタシ、そいつらと戦って強くなったのよ。アンタも外の世界に出てみたら?」

『……それもいいな』


 レオ・エボルを装備したドミニクは構えを取る。

 カグヤも構え、呼吸を整えた。


「アンタは強い。だからこそアタシも敬意を払うわ」

『ほう、今までは本気でなかったと?』

「ううん、本気よ。でも……ここからはもっと本気。全身全霊で行くわ」

『それは楽しみだ……オレもリミッターを外そう』


 すると、レオの銀色の装甲が淡く輝きだす。

 黄金級の本気に、カグヤの背筋が凍り付く……だが、それ以上に落ち着いていた。

 足を抱げ、そのままくるりと回り、足を地面にたたきつける。

 舞台に亀裂が入る。

 

「神風流皆伝七代目『銀狼』カグヤ───」


 カグヤが、ポツリと名乗る。

 レオの爪が銀色に輝きだす。

 間違いなく、最強の技で来るだろう。

 黄金級ゴーレムは、固有の特性がある。

 キャンサーは体内が工場になっており、分裂体を自在に生み出せる。

 タウルスは黄金級最硬度の装甲を持つ。

 アクエリアスは水分を自在に操る。

 そして、レオ。レオの能力は装着者の身体機能を極限までアシストするサポート機能。身体能力が高い者が装備すれば、恐るべき真価を発揮する。

 ドミニクという条件を満たした男が装備したレオは、第二階梯天使に匹敵する強さを持っていた。


『いくぞ……『獅子十王裂爪ししじゅうおうれっそう』!!」


 リミッターカットし、極限まで身体機能を増幅させたレオ。

 輝く爪で対象を十の部位に切断する奥義を繰り出したドミニクは、軋む四肢を無視しカグヤに向かって行く。

 対するカグヤは、真正面からドミニクを迎え撃つ。

 

『───』


 勝った。

 ドミニクはそう確信した。

 真正面のカグヤを倒す───いや、殺すことになる。

 それでもよいと、ドミニクは思った。

 カグヤは、きっと恨まない───と。


『───……!?』


 そして、ドミニクは見た。

 真正面にいるカグヤ。今まさに爪を喰らおうとしているカグヤが───笑っていたのを。

 そして、カグヤの足が輝いた。


「神風流最終奥義───『天狼銀牙(てんろうぎんが)』!!」


 恐るべき衝撃と共に───ドミニクの意識はそこで消えた。


 ◇◇◇◇◇◇


『……………………え、えーと……か、カグヤ選手の、勝利……です』


 マックスの『気が付いたら出てた』みたいな声が響いた。

 レオが粉々に砕かれ、ドミニクは壁に叩き付け……いや、めり込んで気絶。

 全身汗だくのカグヤは膝をつき、呼吸も荒々しくいっぱいいっぱいだった。


「はぁ、はぁ、はぁ……っく、はぁ、はぁ……あ、アタシの、勝ち……」


 観客に応える気力もないのか、フラフラとしたまま手を上げた。

 足に力が入らず、そのまま倒れてしまう───が。


「お疲れさん」

「あ───」


 いつの間にかいたフレアが、カグヤをそっと抱きとめた。

 フレアの胸の中で、カグヤが赤くなる。


「驚いた。いや……マジで驚いた。最後の蹴り、全然見えなかった……たぶん、俺の先生よりも早い。はは、すげぇよ……カグヤ、お前ってマジですげぇ」

「……当然でしょ。アタシは最強なんだから」


 すると、会場内が爆発したような歓声に包まれた。

 傍から見ると、黄金級ゴーレムを倒した二人が抱き合い、愛を囁き合っているようにも見えたのだが……フレアはもちろん、カグヤも気付いていない。

 フレアはカグヤを支え、観客に応えていた。

 カグヤも、フレアに抱かれたまま観客に応える。カグヤの『女』としての感情が、フレアにくっつくのを躊躇っているのだが、今はされるがままだった。

 そして、担架で運ばれそうになっていたドミニクと、レイニーゼが舞台へ。


「完敗ですわ」

「ああ……ふん、だが気分がいい。こんなに『負けた』と思える敗北は初めてだ」

「いや、あんたらも強かったよ。なぁカグヤ」

「ええ。つーかアンタ触んな。もう立てるっての」

「お、おう」


 カグヤはフレアから離れ、ドミニクに言う。


「楽しかったわ。ありがとね」

「オレも、感謝する。お前のおかげでわかった。オレはまだまだ強くなれる」

「あなたも、ありがとう」

「おう。俺、海は好きけどアクエリアスの水は嫌いだなー」

「うふふ。可愛い子ね」


 互いに健闘をたたえ合っていると……パチパチと拍手しながら、一人の男が現れた。


「うんうん。いやーいい試合だった。うんうん」


 薄汚れた白衣に、珍妙な髪型、大きなゴーグル。

 半袖短パンにサンダルを履いた、特級冒険者序列五位のクレイ爺だった。


「うんうん。素晴らしい素晴らしい……そっちのキミ、あとそっちの女の子。小生の傑作である黄金級ゴーレムを破壊しちゃうなんてすごいねぇ。うんうん。あのさ、お話を聞かせておくれ。小生のラボに遊びに来て欲しいんだが、どうかな?」


 クレイ爺さんは、穏やかな笑みを浮かべていた。

 

 ◇◇◇◇◇◇


 全ての試合が終わり、閉会式も恙なく終了した。

 試合は終わったが、明日はオリジナルゴーレム大会がある。関係者は準備に入っているため、舞台内は忙しそうに人が走り回っていた。

 そんな中、ヤンガース整備場のヤンガースは、会場外で爪を噛んでいた。


「おのれ……黄金級ゴーレムを破壊しただと? あのモルガン整備場の雑魚が……くそ、せっかく私の最高傑作を持ってきたのに……くそ」


 黄金級ゴーレムの敗北は、瞬く間にパープルアメジストに広がった。

 ヤンガースは、自身の最高傑作でフレアたちを倒そうとしたが……黄金級ゴーレム破壊のニュースを聞いて断念せざるを得なかった。

 

「くそ、くそくそ!! モルガン整備場め……!!」


 一人、会場前で悪態をつくヤンガース。

 このまま、おめおめと引き下がるしかないのか……と、その時だった。


「あー、ちょっとそこのキミ。いいかね?」

「む……ん、なぁっ!?」


 呼ばれ、振り返り……仰天した。

 そこにいたのは、信じられない人物だった。


「うんうん。ちょーっと話を聞かせてくれないかな? うんうん、きみにとっていい話になると思うんだ。うんうん……うんうん」


 うんうんと、しつこく頷く男がそこにいた。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
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