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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第九章・からくりの王国パープルアメジスト

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BOSS・黄金級鉄機『獅子座』レオ・ノウヴァ①

 控室に戻ると、唖然とするメイカと無言のカグヤがいた。

 メイカは、信じられない者を見るような目で俺を見て言う。


「し、信じられない……さ、最強無敵の、玄人ゴーレムマスターと黄金級に……勝っちゃった」

「いやー、けっこう強いな。でもま、俺のが強い」

「い、いやいや、強いとか弱いとか……あ、あはは。ご、ゴーレムって冒険者より強いってのがパープルアメジストの常識なんですけど、今の見ると揺らいじゃいますね」

「ま、そういうこった。いやー楽しかった……でも、思いっきり炎出せないのが辛いわ。あとで町の外で発散してくるかー」

「…………あ、あたし、マジで夢見てるのかも」


 メイカは頭を押さえてソファへ座った。

 そして、カグヤが無言で立ち上がり首をコキコキ鳴らす。


「アンタ、いい試合だったわ。おかげで……アタシも滾ってきた」

「そうかい。じゃあ、勝てよ?」

「当然。ガチでいく」


 俺は手を開いて上げると、カグヤがその手をバチンと叩いた。

 さーて。俺の仕事は全部終わり、プリムのところで観戦すっか。


「メイカ、プリムのところ行こうぜ」

「え、ええ……」

「あ、なぁなぁここに出店とかある? 俺、肉食べたい」

「外に露店ありますよ……たぶん、会場の整備に時間かかるんで、買い物してから行きましょうか」

「おう!」


 会場の整備とは、アクエリアスが吐きだした水の始末だ。

 レイニーゼが起きていればすぐに処理できたんだけど、今は気絶してるからなぁ……会場整備の作業員さん、お疲れ様です。


 俺はメイカと一緒に、会場外の出店に向かった。


 ◇◇◇◇◇◇


 カグヤが会場に入ると、すでにドミニクはいた。

 舞台の中央で仁王立ちし、傍らには巨大な銀色の獅子がいる。

 銀色の獅子は、全長五メートルくらいの巨獅子だ。ゴーレムなのに威圧感があり、カグヤも一筋の汗を流す。

 カグヤが舞台に上がると、ドミニクは言う。


「貴様は強い」

「いきなりね。でも、その通りよ」

「だからオレも全力で行く。くくく……久しぶりに血沸き肉躍る」

「アタシが子供だとか、女だとか言わない奴も久しぶりね……アタシも、本気で行くわ」

「ふん、見かけや性別なぞどうでもいい。強いか弱いか、それだけよ」

「……アンタ、マジで嫌いじゃないわ……『実装』」

『ウェアライズ』


 ハヤテ丸がカグヤの身体に装着された。

 カグヤは準備運動とばかりに、足を高く上げる。


「さ、アンタの番よ」

「ああ……そうだな」


 ドミニクは、レオの身体を優しく撫でる。

 すると、レオの目が赤く光り、咆哮を上げた。


『ウォォォォォォーーーーーーンン!!』

「行くぞ!! 『実装』ぉぉぉっ!!」

『ゾディアックライズ』


 レオの装甲が分解され、中から人型のゴーレムが現れる。

 ゴーレムがさらに分解され、ドミニクの全身を覆う甲冑となった。

 これには、カグヤも驚いた。


「おっどろいたぁ……いきなり最終兵器?」

『出し惜しみするつもりはない。最初から全力でいこう』


 レオ・ノウヴァが最終形態レオ・エボルとなりドミニクと一体化した。

 銀の甲冑に、両腕に巨大なクローが装備されている。兜も獅子を模した形状で、全身に棘のような突起が伸びているのが特徴だった。


「やっばぁ……ガチでゾクゾクしてきたわ」

『ふ……では、やろうか』

「ええ。アタシも本気でいくわ。死なないでね」


 開始の合図も待たず、獅子と狼が激突した。


 ◇◇◇◇◇◇


 カグヤとドミニクは同時に飛び出した。

 カグヤはともかく、恐るべきはドミニクのスピード。舞台に亀裂が入るほど踏み込み、一瞬で二人の距離は縮まった。


「神風流、『凪打ち』!!」


 速度を載せた延髄蹴り。

 対し、ドミニクは躱しもせず、岩をも砕くカグヤの蹴りを延髄に受けた。


「っく───」

『ふん』


 だが、手ごたえでわかった。

 純度百のオリハルコンを砕くには、まだ威力が足りない。

 ドミニクはカグヤの足を掴み、自前の腕力とレオのパワーアシストを加えた超腕力で、オリハルコン製の『神風零式・甲脚』ごと握り潰そうとした。

 

「舐めんな!!」

『ぬぅ!?』


 だが、カグヤは足を膨張させ離脱。

 ハヤテ丸は無理だが、長年装備しているオリハルコン製の具足はカグヤの身体の一部だ。たとえオリハルコン製でも『特異種』の力が通用する。この辺りの認識は個人差があるようだ。

 カグヤは軽業師のようにその場から離脱する。


「神風流───『円舞陣』」


 そして、ドミニクを包囲するように走り出す。

 ドミニクはカグヤの包囲から逃れようと、その場で跳躍した。


『ガァァァァァァーーーーーーッ!!』

「くっ……」


 驚いたことに、ドミニクは空中で軌道を変え、正確にカグヤに飛び掛かってきた。

 カグヤは走るのをやめ、思いきり後方へ飛ぶ。

 だが、ドミニクは着地と同時にカグヤに飛び掛かる。

 カグヤは真横に飛ぶ。だがドミニクも同時に飛ぶ。

 圧倒的身体能力を持つ者同士の追いかけっこが始まった。


 ◇◇◇◇◇◇


「恐らく……レオの特性は『圧倒的アシスト機能』ですね」

「なんだそりゃ?」

 

 フレアは、屋台で買った串焼きを齧りながらメイカに聞いた。

 試合も終わったのですっかり観客気分で、屋台でたくさんのお菓子や串焼きを買ってプリムの隣に座っていた。

 プリムは、綿菓子を食べながら言う。


「つまり、あのレオさんはパワーアシスト、スピードアシストが非常に優れている、ってことですね!」

「恐らく……」

「おお、さすがお嬢様!」

「ふふん。ずーっと試合見てましたから!」


 胸を張るプリム。

 アイシェラの視線はプリムの豊満な胸に向いていたのを、クロネはばっちり見ていた。

 フレアは、モルガンに言う。


「なぁモルガン、そこの串焼きくれ」

「き、キミ……食べてばかりじゃないか。応援しないのかい?」

「別に。勝っても負けても、お前の会社が優勝したことに変わりないだろ? それに、あの馬鹿カグヤは負けないと思うぞ」

「え……?」

「あいつ、本気になれば俺でも苦戦しそうだしな。初めて戦った時も、蝕の型で腹痛にして勝ったくらいだし……マジでやれば俺もタダじゃすまない」


 フレアは、カグヤと戦った時のことを思い出す。

 呪術師らしい技で戦う、と言ったが……正直なところ、カグヤが強すぎてフレア自身もタダでは済まないと直感したからだ。メンタル的な弱さがあったが、それも克服しつつある。

 フレアは言う。


「カグヤは強い。はっきり言って、今の俺が背中を預けられるのはあいつだけだ」

「…………むぅ」

「ん、なんだよプリム」

「いーえ。フレア、カグヤのことばかりです」

「はい?」

「おい貴様!! むくれお嬢様の表情を見れたぞ、感謝する!!」

「意味わかんないにゃん……」

「えーと……メイカ、どうすればいいのだ?」

「兄さん。とりあえず試合を見ましょう」


 こうして喋っている間も、戦いは続いていた。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』をいただけると嬉しいです
― 新着の感想 ―
[気になる点] フレアとカグヤがいい勝負ってのは無理があるんじゃない? 吸血鬼の第3神祖だかなんかにボコられてたし、 フレア>ミカエル>>>>カグヤくらいなもんでしょ。 カグヤってよく見積もっても普通…
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