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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第九章・からくりの王国パープルアメジスト

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二回戦、本選トーナメント

 俺たちは二回戦も難なく突破し、三回戦に出場決定。

 全二十の企業が、パープルアメジスト最強のゴーレム会社の名を手に入れるため、自慢のゴーレムを戦わせることになる。

 俺たちは、控室にいた。

 メイカが、シラヌイ弐型とハヤテ丸の調整をしながら言う。


「最終本選は、各企業代表のゴーレム一体だけ使用しての戦いになります」

「え!? なんでー? それじゃアタシかフレアのどっちかしか出れないじゃん!!」

「今まではあくまで予選。この最終本選トーナメントは、各企業代表最高のゴーレムを一体だけ使用しての戦いです。企業の人員が総出で仕上げた至高のゴーレムは、天使様を圧倒するくらい強いそうです」

「へぇ~……あむ……面白そうじゃん」


 俺はベンチに寝転がり、プリムが差し入れに持ってきた小麦焼きを食べていた。

 シラヌイにも食べさせていると、カグヤが言う。


「アンタ、リラックスしすぎ……で、どうすんの」

「順番的には俺だろ」

「ぐ、ぬぬ……」


 昨日の戦いでは、俺が最初に出て次がカグヤだったからな。

 さすがのカグヤも、順番と言われてグググと唸る。

 メイカは、少し疲れたような表情をしていた。


「メイカ、なんか疲れてるか?」

「え、ええ……その、アイシェラさんの専用装備を作ってたんですけど、思いのほか盛り上がっちゃって。あたし、試合に出てないし、お二人の戦いを見て興奮してたのか、ゴーレム造りに気合が入っちゃって」

「ふーん。で、アイシェラの装備って完成したのか?」

「はい!! 設備の素材だけじゃ足りなかったのですが、アイシェラさんが資金提供してくれたので、最高級素材をふんだんに盛り込んだ装備が完成しました! 今まで図面だけで放置していた装備が形になるなんて……うふふ、楽しかったぁ」


 メイカはとろーんとしていた……この辺、モルガンと似てるな。

 そして、シラヌイ弐型の整備を終えたメイカは言う。


「できました。調整完了です」

「おう、ありがとな」

「はい。そろそろ試合の時間ですね……対戦相手の情報は大丈夫ですか?」

「ああ。クロネから聞いてる」


 俺の対戦相手は『ブレード・スミス』だ。

 接近戦ゴーレムにかけて右に出る者はいない企業。中でも、ヒートスパーダという熱を持った剣を開発した企業で、超高温のブレードは鉄をも焼き切るとか。

 俺は立ち上がり、シラヌイを撫でてシラヌイ弐型を撫でた。


「よし。シラヌイ弐型、今日も頼むぞ」

『ワン!』

『わぅぅ、わんわん!』

『ワン!』


 シラヌイは、シラヌイ弐型を激励するように吠えた。


 ◇◇◇◇◇◇


『さぁ!! 最終本選五回戦!! ここまで快進撃のモルガン整備工事からは、灼熱バーニングな特異種フレア選手だぁぁ~~っ!』

「うぇーい!! プリム、モルガン、アイシェラ、クロネー!!」


 万歳して応えると観客が湧いた。

 プリムたちの席に向かって手を振ると、プリムとモルガンが両手をブンブン振り、アイシェラとクロネは少しだけ頷いてくれた。


『対するは!! 接近戦ゴーレムならここにお任せ!! 『ブレード・スミス』から熟練(プロ)ゴーレムマスターのエッジ!! そして専用機ブレードバスターだぁぁぁぁ!!』

「愛してるぜ、ウォンチュー!!」

「「「「「きゃぁぁぁぁぁっ!! エッジぃぃぃぃっ!!」」」」」


 エッジとか言うゴーレムマスターが投げキッスをすると、観客の女性たちが湧いた。

 どうやら女に人気があるようだ。


『かーっ!! 相変わらずのイケメンめ!! だがイケメンだけじゃない、実力も本物だ!! 果たしてフレア選手はどう出るのか? 準備はいいかぁ?……レディィィ~、ファイトォォォ!!』


 試合が始まった。

 俺はシラヌイ弐型を纏い、敵ゴーレムのブレードバスターは両手の長い剣を真っ赤にした。

 そういや、接近戦が得意なんだっけ。


「さぁ兄ちゃん!! オレの操作テクに溺れな!!」

「面白い!! やってやるよ!!」


 俺は左半身を炎で燃やし、ブレードバスターに向かって走り出した。


 ◇◇◇◇◇◇


 フレアの試合が始まり、応援席にいたプリムたちは必死に応援……していたのだが。


「ぅ……」

「お嬢様?……くんくん……この匂い、尿意を催して「アイシェラ、それ以上言ったら死ぬまで許さない」


 プリムの席のサイドテーブルには、お菓子や飲み物の残骸があった。

 お祭りなので露店も多い。美味しい物ばかりでつい食べすぎた。

 プリムは試合に集中できず、応援の声も小さくなる。


「お嬢様、無理をせずお手洗いに」

「で、でも……フレアが」

「大丈夫。あの馬鹿が負けるわけありません。それに、モルガンやクロネも応援していますので」

「…………ぅん」


 プリムは、お手洗いへ立った。

 当然ながら、アイシェラも付いてくる。


「……アイシェラ」

「大丈夫。ドアの前で待っています」

「そうじゃなくて!! 付いてこなくていいの!!」

「はぅん♪」


 見悶えるアイシェラを無視し、プリムはお手洗いへ。

 広い会場なだけあり、お手洗いの数も多い。自分たちの席からほど近い場所で済ませ、急ぎ席に戻ろうとするプリム。

 だが───ここで予想外のことが。


「モルガン整備工場の者だな」

「え……」


 お手洗いから出ると、三人の男たちがプリムを包囲した。

 いきなりのことで反応が遅れるプリム。

 そして───背後から口を押えられ、意識が消えた。


「行くぞ」


 男たちは無駄な会話をせず、プリムを大きなカバンに詰め込んで運び出す。

 そして、誰もいなくなった。


 ◇◇◇◇◇◇


「───お嬢様?」

「にゃ? どうしたにゃん?」

「いや、お嬢様の匂いが……」

「…………あんた、犬獣人かにゃん?」


 魚の干物を齧っていたクロネは、どうでもよさそうに前を向く。

 フレアとブレードバスターの試合は最高に盛り上がっていた。


「…………すまんが、席を開ける」

「あ、アイシェラくん? フレアくんの試合が」

「どうせ勝つ。それより……お嬢様の匂いが消えたことの方が心配だ」


 アイシェラは、メタリックブルーの腕輪を装備する。

 そして、席から一番近いお手洗いに向かって走り出した。


「お嬢様……!!」


 アイシェラの予感は、的中していた。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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