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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第九章・からくりの王国パープルアメジスト

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試合開始前

 大会本部前は、静寂に包まれていた。


「あれ? もうおしまい?……つまんなーい」


 カグヤが、たった一人で襲撃者を返り討ちにした。

 その光景たるや、大会前の風物詩とばかりに楽しんでいたおばちゃんたちや町の住人も凍り付くほどで、フレアと違い全く容赦のないカグヤの恐ろしさを見せつけた。

 カグヤは、地面にめり込んでいる襲撃者の一人を蹴り上げ、地面に転がす。


「で、誰の差し金?」

「…………へっ」


 次の瞬間、襲撃者の顔の真横にカグヤの足がめり込む。

 地面が揺れ、硬い石畳に巨大な亀裂が入る。そして、翡翠のように輝くカグヤの眼が細くなり、静かな殺気を周りに振りまく。


「ヤンガース整備場です!! おお、オレたち、金で雇われたんでっす!! はい!!」


 襲撃者は命惜しさに全て吐いた。

 エルモアのヤンガース整備場が腹いせに襲撃者を雇い妨害していること。工房に別動隊が派遣され、メイカを襲い大会を辞退……いや、辞退はもったいないので、ヤンガース整備場に出場権を譲ると署名させようとしていること、などだ。

 これにはプリムが叫ぶ。


「そ、それじゃあ……メイカが!!」

「いえ、問題ないでしょう。メイカにはフレアが付いています」

「あ」


 フレアが護衛している。

 それだけで、プリムは安心した。


「ま、待ってくれ!! 早くメイカのところに戻らないと!!」


 だが、プリム達ほどフレアを知らないモルガンは焦っている。

 受付は済ませたので、あとは帰るだけ。

 最後にカグヤが襲撃者を睨む。


「次に会ったら殺す」

「ひ、ひゃぃぃぃっ!!」


 シンプルな言葉に込められた殺気を感じた襲撃者は、気絶している残りのメンバーを叩き起こして逃げるように走り去った。

 そして、プリム達は急いで宿へ戻ったのだが……。


「…………こ、これは」

「ね? 心配なんていらなかったでしょ?」


 カグヤが言う。

 プリムは苦笑し、アイシェラはため息を吐く。

 工房前には、ボコボコにブチのめされた男たちが山のように積み重ねられていた。

 しかも、全員が呻いている。


「おもいぃぃ~~……」

「くるじいぃ~~……」

「だじゅげぇ~~……」


 全員が『重いだろ、潰れろ(ジジ・グラビデ)』という呪いをかけられている。体重が重すぎて立てなくなり苦しんでいるのだ。

 そんな男たちを見張るようにシラヌイがいた。


『わん!』


 シラヌイは、「おかえり」とでも言うように吠えた。


 ◇◇◇◇◇◇


「メイカ!! 無事だったか……」

「兄さん。おかえりなさい。受付は?」

「終わったぞ。バトル大会もオリジナルゴーレム大会も参加できる」

「そうですか。こちらもほぼ終わりました……キュータマ1号と、シラヌイ弐型とハヤテ丸。それとあたしのゴーレムも」


 モルガンとメイカが何やらゴーレムについて話している。

 邪魔するのは悪いので、俺たちは俺たちで集まっていた。


「襲撃、大丈夫……だよな」


 襲撃のことを聞こうとしたが、カグヤと目が合ったのでやめた。

 こいつがいれば雑魚なんて目じゃないし。

 アイシェラは腕組みをする。


「ヤンガース整備場……この先も何か仕掛けてくるだろうか」

「怖いです……」

「ま、大丈夫だろ。街中じゃ爆弾馬車は使えないし、雑魚が何人来ても俺とカグヤの敵じゃないしな」

「その通り。もっと強いの来てもいいけどねー」

「お気楽な奴らにゃん……」


 と、いつの間にかクロネがいた。

 こいつも腕を上げたな。俺もカグヤも直前まで気付かなかったぞ。


「クロネ、おかえりなさい!」

「にゃん。いっぱい情報集めてきたにゃん。人が多いと集めるのも楽でいいにゃん」


 クロネはネコミミをピコピコ動かした。

 クロネがちらっと視線を向けた先では、モルガンとメイカはゴーレム整備と確認をしている。


「あっちは忙しそうだし、先にゴーレムバトル大会の情報を話すにゃん」

「えー? 別にいらないわよ。どんなの相手でもアタシが負けるわけないし」

「いいから聞くにゃん。というか、ゴーレムバトル大会の情報は嫌でも集まったにゃん。パープルアメジストで一番盛り上がるお祭りだしね」


 工房の隅にある休憩スペースに座り、クロネは話す。


「大会の特別ゲストに、二人の『玄人(スペシャリスト)』ゴーレムマスターが来るにゃん」

「スペシャリスト……すげーのか?」

「ユポポで会ったマーマレードより上にゃん。ゴーレムマスターの最上級クラス。しかも……問題なのは、そいつらが使ってるゴーレムにゃん」


 クロネは一度話を切り、息を吐く。


「玄人ゴーレムマスターが使っているのゴーレムは『黄金級(ゾディアック)』……全十二体作られ、暴走せず機能停止したまま封印されている二体にゃん。個体名『獅子座(レオ)』と『水瓶座(アクエリアス)』……あんたらが戦った黄金級と同格にゃん」

「おおー」

「へぇ……楽しそうじゃん」

「……そう言うと思ったにゃん」


 クロネの話は、オリジナルゴーレム大会のこともあった。

 オリジナルゴーレム大会は、どんなゴーレムが出てくるのか当日まで秘密だ。各企業が徹底的に守っているらしい。

 ま、こっちはモルガンに任せよう。

 問題は、バトル大会中の護衛だ。


「アイシェラ、大丈夫か?」

「何がだ?」

「いや、俺とカグヤが大会に参加している間、モルガンとプリムの護衛だけど……あ、シラヌイもいたな」

「……馬鹿にするな。私は王国流剣術を修めた身だ。剣術なら負けん」

「そうだよね。アイシェラは強いもん。でも、ほんとは……」


 プリムが何かを言いかけたが、アイシェラはコホンと咳払い。

 すると、いつから話を聞いていたのか、メイカが言う。


「アイシェラさん、人や魔獣はともかく、ゴーレム相手に通常の剣はあまり効果がありません。お望みでしたら、ゴーレム用武装をカスタムして渡しましょうか?」

「……いいのか?」

「はい。この工房に素材はいっぱいありますし。実はその……昔から兵器用の図面は書いていたんですけど、お金がなくて作れなかったんです……こんな機会ないですし、参加企業は素材を使い放題ですので、空いた時間に作ってみようかなぁと」


 メイカは、カバンから大量の羊皮紙を出した。

 どれもゴーレム系の図面ばかりだ。中にはハヤテ丸やシラヌイ弐型の図面もある。

 アイシェラも興味を持ったのか、さっそくメイカと話し合った。


「どれどれ……おお、立派な剣じゃないか」

「ライジングソードです。スイッチを入れると蓄電された電気エネルギーによって電気を纏います」

「ほお、ではこれは……」

「こっちはダートナイフ。スイッチを押すとガス圧によって刃が飛びます。奥の手ですので、一度使うともう使えません」

「ふむ……ん? これは」


 何やら楽しそうだ。

 ま、アイシェラはそこそこ強い。俺とカグヤが前衛を務めているから目立たないけど、外で苦しんでいる襲撃者全員を相手にしても勝てるだろうな。

 

「アイシェラ、楽しそうです」

「変態的なこと言わないアイシェラも不気味ねー」

「ひどい言い様にゃん……」

「ま、護衛は任せていいだろ。シラヌイもいるし」

『わん!』


 そして、モルガンも混ざりアイシェラのパワーアップ計画は続くのだった。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
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