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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第九章・からくりの王国パープルアメジスト

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護衛のお仕事

 宿泊所の真後ろに、メイカとモルガン用の工房はあった。

 モルガンは大会本部に到着と大会の手続きに、メイカはゴーレムのチェックだ。

 さて、護衛が必要ということでパーティーを分けよう。


「じゃ、俺はメイカに。力仕事も必要だろ?」

「アタシはモルガン! 町見て回りたいしー」

「わたしも行きたいです!」

「お嬢様の傍に私は存在する。お嬢様大好き!」

「うちは情報収集にゃん」

『わん!』


 というわけで、俺とシラヌイがメイカ。残りはモルガンに付く。

 モルガンたちはさっそく出かけた。俺もメイカと一緒に宿の裏手に回り、ゴーレム荷車から『キュータマ1号』や、シラヌイ弐型とハヤテ丸を下ろす。

 そして、工房に運ぶと俺の仕事は終わった……いやまぁ、護衛って暇なのよね。


『わん!』

『ワン!』

『クルル……』

「お前ら仲いいな……」


 シラヌイは、シラヌイ弐型とハヤテ丸を相手に何やら意思疎通していた。

 犬の言葉はわからん。俺は工房にあった椅子に座り、メイカの作業を眺める。 

 メイカはキュータマ1号をバラし、何やらチェックしていた。


「なー、手伝おうか?」

「いえ、大丈夫です。フレアさんは周囲の警戒を……もう、試合は始まっていますから」

「はい?」

「けっこう有名な話です。敗北した企業が勝った企業の邪魔をする……過去に、工房内で変死体が見つかったなんて話もありますから。でも、運営側は一切関与せず、大会は通常通りに行われたと。あたしたちは初出場ですし、本選常連のヤンガースたちが邪魔してくることは必須……」


 メイカは、どこか緊張していた。

 確かに、爆弾馬車はヤンガースの妨害だったようだし。

 すると、シラヌイが立ち上がり、ドアをじーっと見ていた。

 遅れて俺も気付く。


「メイカ、パープルアメジストに知り合いっている?」

「え?……いえ、エルモアから出たことは殆どないので」

「そっか。シラヌイ、いくぞ」

『グルル……』


 そして、いきなりドアが破られ、屈強そうな男たちがゾロゾロ入ってきた。

 人数は十人……全員、武装してる。


「ひっ……な、なんですかあなたたち!! ここは関係者以外立ち入り禁止です!!」


 メイカがそう言うが、男たちはニヤニヤしたまま室内を眺める。

 そして、シラヌイ弐型とハヤテ丸とキュータマ1号を見て、汚い顔をさらに歪めた。


「わりーけどよ、ゴーレムぶっ壊させてもらうぜぇ?」


 男たちは鈍器を取り出し、メイカと俺を見てニヤニヤしていた。いや、ニヤニヤしすぎで気持ち悪い。

 シラヌイは唸ってるし、こりゃもう決まりだな。

 俺は拳をコキコキ鳴らしながら前へ。


「ヤンガースの手先?」

「へへ、さぁな」


 男たちのニヤニヤが止まらない。

 いやもう、気持ち悪い。メイカも顔を歪めて距離取ろうとしてるし。

 俺は構え、気軽に言った。


「ま、とりあえずぶっとばすか」


 ◇◇◇◇◇◇


 カグヤたちもまた、妙な連中に絡まれていた。

 観光でもしながら行こうと町を歩いていたのだが、大会本部が意外と近く、本選受付を済ませてから観光しようと考えていたのだが。


「なに? こいつら?」


 大会前本部。パープルアメジストで最も大きな『アメジストドーム』の前にある特設会場で受付をしようとしたら、屈強な男たちが十名以上でモルガンたちを囲んだのだ。

 モルガンは震えた。


「なな、なんだねキミたちははははは……」

「悪いな。あんたらには棄権してもらわねーと」

「へへ、そうだぜ。お……可愛い子が三人もいるじゃねーか。冴えねーツラしてやがるのにハーレムかぁ?」

「ちち、ちがわい!! ボクの好みはふっくらしたお姉さんタイプででで……」


 モルガンの好みはどうでもいいが、アイシェラは気が付いた。


「妙だな……これだけの人数に囲まれているのに、大した騒ぎにならない……?」


 会場受付前はとても広く、冒険者やゴーレムマスターがたくさんいる。

 露店や公園も併設され、人通りはかなりある。それでも、この状況で騒ぐ者はほとんどいなかった。

 すると、プリムが気付く。


「アイシェラ、あの人たちの会話……」

「お嬢様?」


 プリムが聞いたのは、こちらを見て苦笑しつつ話すおばさんたちだ。

 

「今年も始まったわねぇ、妨害工作」

「そうねぇ……ふふ、大会前の風物詩ねぇ」

「ええ。棄権する企業があるのは寂しいから、なんとか頑張って欲しいわ」

「そうね。去年は受付前でもめ事を起こして医院送りだったわね? あの子たち、どうなるかしら?」

「さぁ? でも、女の子ばかりの企業ってことは、本選初参加かしら? 若いわねぇ。受付するのに護衛を雇うのは当然なのに」


 つまり、受付前から他企業の妨害は当たり前。

 それどころか、大会公認の風物詩になっているようだ。

 

「なんということだ……もう大会は始まっているとでもいうのか?」

「すっごく危ない大会です……でも、なんだかあまり怖くないです。今までいろいろあったし、慣れちゃいました」

「お嬢様、お強くなって……くぅぅ、私は嬉しいです!」

「アイシェラ、くっつかないで」


 抱き着くアイシェラを引き剥がし、プリムはカグヤに言う。


「カグヤ、その……やりすぎないでくださいね?」

「はっ、こういうの久しぶりだしね。それは了承しかねるわ」


 カグヤはモルガンを押しのけ前に出た。


「あ? なんだお嬢ちゃん?」

「アンタら、アタシたちの妨害?」

「妨害ねぇ……まぁ、そんなところよ。金もらってるしな」

「ふーん。モルガンをブチのめして大会に出させないつもりね。うんうん、アタシってばモルガンの護衛だからさー、守らないといけないわけよ」

「おいおいお嬢ちゃん。この人数相手に何言ってやがる? はは、大人しくしてりゃ可愛がってやるぜ?」


 すると、カグヤは笑った。

 そして……凍り付くような殺意を振りまき、足を上げる。


「じゃあさ、アンタらは思いっきり暴れてね? 可愛がってあげるから」


 荒くれ者たちは、地獄を見ることになった。 

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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