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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第二章・風のラーファルエル

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BOSS・聖天使教会第八階梯天使マルシエル

 マルシエルと名乗った天使は、気持ち悪いくらいその場で身体を回転させ始める。


「聖天使武術・『スピンアターック』!!」

「え、これ武術なの?」


 両手を広げ、回転しながら俺のもとへ。

 というか遅い。回転してるから前がよく見えていないのかフラフラしている。

 俺は人差し指と中指を立て、『呪炎弾』を一発発射した。


「効かん!!っっぎゃあだだだだだぁぁぁーーーーーっ!?」

「効いてんじゃん……なんだこいつ」


 炎弾は回転にかき消されたが、これは炎でダメージを与える技じゃない。触れるだけで効果を発揮する。

 回転が止まり、虫歯の呪いで苦しむマルシエル。

 俺、一歩も動いてない。こんなアホくさい天使がいるなんて……なんかやる気でないぞ。

 アイシェラとプリムも唖然としてる。


「あ、あの、この方は本当に天使なのですか? なんだか天使のふりをした一般人のような気がして……」

「確かに。姫様の言うとおりかもしれん……」


 いやいや、どうしろってのよ。

 第八階梯とか言ってたから、モーリエとかいう奴より強いはず……だよな?

 するとマルシエルは虫歯を堪え立ち上がる。

 

「やるな……だが、私はまだ変身を二回残しているぞ!! へん・しん!! とうぉぉぉぉぉぉっ!!」

「…………」


 マルシエルの背中から四枚の翼が広がる。

 こうしてみると天使っぽいけど……アホっぽいポーズと言動で台無しなんだよなぁ。

 なんというか、憎めない。

 モーリエとかいう小デブ天使は頭に来たからブチのめしたけど、こいつは純粋に力比べ…………待てよ?


「ちょっと待った。質問していい?」

「はい、なんでしょう」

「あのさ、俺のことどこで知った? あのモーリエとかいう奴が報告したのか?」

「いえ。私はラーファルエル様の命令であなたをツツきに来ました」

「ラーファルエル?」

「はい。説明しましょうか?」

「あ、はい」

「ではこちらへ。よろしければみなさんも」

「「あ、はい」」

『きゅーん』


 俺、プリム、アイシェラ、シラヌイは、いつの間にか用意されていた椅子に座る。

 椅子の前には大きな板(黒板というらしい)が置かれ、メガネをかけたマルシエルが咳ばらいをした。


「こほん。ではまず、ラーファルエル様とはどういう存在かを説明します」

「おい貴様、なんだこれは」

「俺が知るかよ……でも、せっかくだし聞こうぜ。というか、なんかこいつ嫌いになれないんだよなぁ。しかも虫歯なのに全然痛がってないし」

「わ、わくわくしますね!!」

『わんわんっ!!』


 黒板に、『ラーファルエル様とはだれか?』と書かれる。


「ラーファルエル様とは、我々聖天使教会の最高戦力にして全ての天使の象徴である、『聖天使教会十二使徒』のお一人でございます」

「おおー、なんかすげぇな」

「十二使徒……天使最強にして、呪術師との大戦で多くの呪術師を屠った天使だぞ」

「私もそう習いました……」


 マルシエルはにっこり笑って頷いた。


「よろしい。ではなぜ私がここに来たか。そう!! 地獄門の呪術師であるあなたをツツけと命令されたからなのです!!」

「まんまだな……」

「ええ。というわけで地獄門の呪術師、私と戦ってください」

「いきなりだなおい。いやまぁ、いいけど……つーか、あんたって悪い奴に見えないよな」

「ははは。ありがとうございます」

「褒めてないし……」

「ではこうしましょう。私は『神器』を使いあなたをツツこうと思います。私も上司の命令には逆らえない末端の木っ端天使ですので。このまま帰るとどやされて給料も減らされてしまうのですよ」

「あ、ああ……そりゃ大変ですな」

「では、再開しましょうか」

「あ、はい」


 黒板と椅子を丁寧に片付け、マルシエルは手をかざす。


「しなれ!! 『蛇腹連鞭』!!」

「はい?」


 マルシエルの手に、一本のギザギザした『剣』が生み出された。

 なにこれ? 武器……ああ、小デブ天使の槍みたいなもんか。


「あのー、それは?」

「はーっはっはっは!! 第八階梯以上の天使が生み出せる『神器』である!! 下級天使の持つ『光の槍』とは比べ物にならん強さであるぞ!!」

「喋り方戻ってる……まぁ、ちょっとはやる気出たかな」


 俺は全身を炎で覆い、両拳の炎を巨大化させる。

 真っ赤な炎が俺を中心に猛り、猛火となる。


「改めて名乗ろう。私はマルシエル!! おまえをツツく天使である!!」

「俺はヴァルフレア!! お前を呪ってやるよ!!」


 さぁて、そろそろ終わりにしてやる─────。


 ◇◇◇◇◇◇




『─────あれ? なにこれ』




 真っ暗だった。

 そして、手足の感覚がない。

 それだけじゃない。この感覚……ああ、地獄門にいたころに似てる。

 魂だけの存在として漂ってた─────。




『おい』

『はい?…………う、うぉぉ、なにこれ』

火火火(ヒヒヒ)……オレがお前をここに呼んだのさ。初めましてだな小僧』

『あ、どうも……えーと、焼き鳥さん』

『誰が焼き鳥だコラァ!!』


 真っ暗な中でひと際明るく燃えていたのは、真っ赤な炎の鳥だった。

 すっごくデカい。この色、俺が使ってる炎と同じ色だ。


『そりゃそうだろ。おめーが使ってるのはオレのハナクソみてーな火の粉だからな』

『へーハナクソ。ハナクソ!?』


 大きな焼き鳥は口を開けてゲラゲラ笑う。


『オレを取り込んだだけの炎だ。カスみてーな火の粉しかでねーのは当然だろ?』

『むぅ……けっこう強い炎だけど』

『カス。それでもカス。カスなのカス』

『カスカスやかましいなぁ……喰っちゃうぞこの焼き鳥』

『いや、もう喰われてるし』


 焼き鳥は翼をブワッと広げる。なんというか……すっごく綺麗だ。


『で、なんか用か?』

『ああ。天使の神器っぽい気配を感じたからな。さすがに放っておけなくてよ』

『いや、大丈夫だし』

『アホたれ。天使の神器舐めんなボケたれ。おめーが死んだらオレも消滅しちまうんだ。だから契約しようぜ契約。オレの炎をくれてやるよ』

『え、いいの?』

『おう。オレの炎を理解すれば今までとは比べ物にならん炎が使えるぜ? どうよどうよ?』

『おおー、で……条件は?』

『ねーよ。あ、そうだ。じゃあ教えてくれ。なんでお前は地獄門に入っても消滅しなかったんだ?』

『しらね』

『…………まーいーや。火火火っ、ノーリスクハイリターンで最高の力を手に入れるチャンス!! いやーおめでとうございます! あなたはこの『第一地獄炎』の魔王『火乃加具土命(ヒノカグツチ)』の炎をゲットしました~っ!!』

『…………なんか怪しい。おい、何か企んでるか?』

『んなわけあるか。つーか、おめーこそなんなんだよ。オレだけじゃなくて他のクソ共も取り込んで平然としてやがる人間なんざ初めてだぜ。まぁ退屈な地獄を抜けて外の景色を拝めるのはありがたいがね』


 焼き鳥は翼をたたむと寝転がる。なにこいつめっちゃトロンとした表情してる。


『あぁ、教えてやる。他の連中はオレみてーに優しいとは限らないから気を付けな。力ぁ貸してもらいたきゃ頑張るんだな』

『……俺、冒険したいだけだからいらねーよ。でもありがとな』

『おーう。まぁ頑張れよー』


 ─────はっ。


 目が覚める……って表現はどうか知らないけど、目の前にマルシエルがいた。

 妙なギザギザの剣を振りかぶって払う。けっこう距離が離れているけど……。


「なっ……剣が伸びた!?」

「フレアっ!?」

『…………』


 アイシェラとプリムが叫ぶ。シラヌイはジッと見てる。

 伸びた剣が俺に巻き付こうとしてる。

 なるほど。この剣が巻き付けば肉は裂けてぎちぎちに食い込んでいく。さすがに痛いだろうな。

 でも、負ける気がしない。


「第一地獄炎の魔王『火乃加具土命』よ─────」


 俺の右腕。

 指先から肩までが燃え上がる。

 いつもと違うのは、炎が形となったこと。

 炎が塊となり、右腕を覆う籠手になったことだ。


「魔神器─────『火乃加具土命』」


 魔王の神器。

 今度は、俺の全身が燃え上がる。

 

「へっ……?」


 マルシエルの剣が俺に巻き付いた瞬間、一瞬で溶けてなくなった。

 こんな結果は予想していなかったのか。ポケッとするマルシエル。

 俺は両足から炎を噴射し一瞬でマルシエルの懐へ潜り込む。


「あ、死んだ」

「第一地獄『火乃加具土命』奥義!! 灼熱魔神拳!!」


 全身全霊を込めた炎の正拳が、マルシエルの腹にヒット。


「ボボボボボボボボボオォォォォォォォォーーーーーーんっ!!!!!」


 火達磨となったマルシエルは、遥か彼方に吹っ飛んだ。


「押忍っ!!」


 俺は勝利の構えを取り、戦いは終わった。


 ◇◇◇◇◇◇ 


 聖天使教会十二使徒・『風』のラーファルエルは、火達磨になって吹き飛んだマルシエルを遠くから眺めていた。


「いや~、飛んだ飛んだ。ふぅむ……あれが地獄の炎ねぇ」


 マルシエルを当てたのは、フレアの実力を測るため。

 そして見た。フレアの右腕に現れた真っ赤な炎の籠手を。


「あれが『魔神器』……地獄門の呪術師たちが求めた秘宝。まさかあんな子供にねぇ」


 宙に浮くラーファルエルは、薄く笑う。


「ま、あの程度なら楽勝かな……仕掛けるのは……うん、海にしよーっと」


 地獄門の呪術師。

 ラーファルエルは、最高の遊び相手を見つけた。


「くくっ、少しは楽しませてくれるかな? ボクの『風』で踊ってくれよ……?」

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』をいただけると嬉しいです
― 新着の感想 ―
[良い点] この炎……熱いっ! ボボボボボボボボボオォォォォォォォォーーーーーー!
[一言] 焼き鳥さん『暴食』って呼ばれてた時代が有ったりしませんかね(ぉぃ
[気になる点] めっちゃクソダサネーミングセンス [一言] 登場人物全員知能低そう
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