パープルアメジスト王国、到着
街道を超え、林を超え、ようやく俺たちはパープルアメジスト王国に到着した。
遠目でもわかる……パープルアメジスト、とんでもない規模の国だ。
俺とカグヤは、馬車の上で驚いていた。
「すっげぇ~……」
「技術大国パープルアメジスト……こんな遠くからでもすごいってのわかるわね」
まず、今までの王国と違い、門がない。
横開きの門ではなく、扉のない門構えだった。そこを馬車やゴーレム荷車が潜っている。
建物は、遠目でもはっきりわかるくらい大きい。いや……細長い。
細長い建物や、平べったい建物、ドーム状の建物もある。さらに、煙突から煙がモクモク出てる。
俺たちが走っている街道も、先程から様々なゴーレム荷車とすれ違う……正直、馬車のが少ない。
「王国ってことは、王様がいるのよね?」
「そうじゃねーの? ま、興味ないけど」
パープルアメジストの風は少し油の匂いがする。
馬車の上でそんなことを考えていると、クロネが窓からしゅるっと屋根へ。
「パープルアメジストは王政だけど、王の権力はあんまり強くないにゃん。一応、貴族とかもいるけど、ゴーレム技術の国だから企業のが強い力を持ってるにゃん。特級冒険者の経営する『ゴーレム・エンタープライズ』のが国からは信頼されてるかも。貴族とか金持ちは会社のパトロンにゃん」
と、誰も聞いていない説明をした。
説明なら任せろとばかりのドヤ顔。
「こ~の知識自慢め! このこのこのっ!」
「にゃふっ!? や、止めろにゃん!!」
カグヤがクロネを捕まえネコミミを揉みまくる。
じゃれ合いをする二人を放置し、俺は御者席へ。
「なぁアイシェラ。パープルアメジスト王国って、この領土で一番デカい国なんだよな?」
「ああ。それがどうした?」
「いや、この国見たら次はどうすっかなーって……」
「……まだ見てもいないのに、もう次のことか?」
「いや、なんとなくだよ。いやー……俺、いろんなもん見た過ぎて、焦ってるのかな」
ブルーサファイア、レッドルビー、イエロートパーズ、ブラックオニキス。そしてパープルアメジスト。
ホワイトパール王国を除いた、最後の一つ。
「行くとしたら、グリーンエメラルド王国だな。エルフと龍人の国……」
「おお、えるふ……りゅうじん」
「今は気にするな。それより、目の前の国を見ておけ」
アイシェラはそう言う。
俺は目の前に大国パープルアメジストを見て、胸を躍らせるのだった。
◇◇◇◇◇◇
パープルアメジストに入国した。
モルガンとメイカが手続きをして、大会関係者と言ったら通してくれた。しかもかなりの好待遇だ。
俺は、モルガンのゴーレム荷車に移動し、操縦席に座るモルガンに聞く。
「いい待遇だなー」
「まぁね。年に一度のお祭りであるゴーレムバトル大会とオリジナルゴーレム大会の参加社なんだ。大会関係者は宿泊所も用意されてるし、『ゴーレム・エンタープライズ』が準備した工房も使用できる」
「おお!」
「というわけで、まずは宿泊施設に行こう」
モルガンが操縦するのを隣で見ていたが……なんかムズムズしてきた。
ゴーレム荷車はゴーレムが巨大な倉庫を引っ張っている形だが、荷車部分に操縦席がある。モルガンがレバーを操作すると、荷車を持ったゴーレムが左右に動き、荷車も同じように動く構造だ。
なんというか……俺もやってみたい。
「な、なぁ……それ、俺にもやらせてくれよ」
「駄目。ゴーレム荷車を動かすには免許が必要だ。教習所で学科をクリアして実地試験をクリアしてから来たまえ。はっはっは!」
「ぐぬぬ……」
ゴーレム荷車、面白そうなのに。
すると、メイカが操縦席に入ってきた。
「兄さん、宿に到着したらゴーレムの整備をするから。兄さんは大会本部に行って手続きを済ませてきて」
「ああ! ふふふ、あこがれの『ゴーレム・スタジアム』……くぅぅ! メイカ、土産は何がいい!?」
「あたしも明日行くからいいよ……それより、無駄遣いしちゃダメだからね!」
「なぁメイカ、俺たちは?」
「フレアさんたちは……一応、兄さんの護衛とあたしの護衛に付いていただければ」
「わかった」
俺は操縦席のドアを開け、プリムたちのいる馬車に飛び乗った。
「む、無茶するね……けっこう速度出てるんだけど」
モルガンがそんなことを言った気がした。
◇◇◇◇◇◇
宿泊所は、ゴーレム荷車も停車できるようになっていた。
厩舎もあったので白黒号を預け、荷台部分はモルガンのゴーレム荷車と一緒にしておく。
荷物を下ろし、宿泊所へ。
「わぁ……すごく立派です」
「さすが技術大国。見たことのない物が多いですね」
プリムとアイシェラが宿泊所の中を見て驚いている。
確かに、煌びやかな内装で、見たことのない調度品が多い。
カグヤは欠伸し、クロネは尻尾を揺らしていた。
「ねぇ、部屋行こうよ。荷物下ろしたーい」
「にゃん。うちも情報収集に行きたいにゃん」
メイカとモルガンが受付を済ませて戻ってくる。
そして、何やらカードを渡した。
「部屋のキーカードです。私と兄さん、プリムさんとカグヤさん、アイシェラさんとクロネさん、フレアさんはシラヌイと一緒の一人部屋です」
なるほど。このカードが部屋の鍵か。
そして、昇降機とやらで建物の上層へ向かい、フカフカな絨毯のある階層へ。
メイカに案内された部屋にカードを差し込み、部屋の中へ。
「おお、いい部屋じゃん」
ベッドに机、椅子にテーブルがある。
シャワー室やトイレもあり、カーテンを開けるとパープルアメジスト王国が一望できる部屋だった。
シラヌイは絨毯の上で丸くなる。
「いやー……呪術師の村から出て千年、すごいや」
そう呟き、俺は景色を堪能した。




