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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第九章・からくりの王国パープルアメジスト

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パープルアメジストへ向かう道

 パープルアメジスト王国へ向けて出発した。

 モルガンの馬車はゴーレムが引いている。命令するだけでその通りに動くらしく、モルガンとメイカは荷台の居住スペースでのんびりしたり、箱の中でゴーレムを整備していた。

 

 俺たちは馬車だ。

 アイシェラが手綱を握り、カグヤとクロネは昼寝、プリムは窓の外を見て、俺は馬車の屋根でシラヌイとシラヌイ弐型と一緒に横になっていた。

 

「なぁシラヌイ。パープルアメジスト王国はゴーレムの国だぞ」

『わん!』

『ワン!』

「おお、お前も楽しみか」


 シラヌイとシラヌイ弐型は同時に吠えた。

 メイカに調整してもらい、声だけじゃなく装甲もミスリル製にしてもらった。カグヤのハヤテ丸も同様だ。

 すると、アイシェラが言う。


「装着型か……」

「お、アイシェラも欲しいのか?」

「……そうだな。それがあれば、もっと強くなってお嬢様を守れる」

「アイシェラ、けっこう強いじゃん」

「けっこう、ではダメなのだ。私はお嬢様の騎士……もっと強くならねば」

「だったら、メイカに作ってもらえば?」

「そう簡単に言うな。貴様やカグヤはどう考えているか知らないが、実装型ゴーレムを作る技術者は、パープルアメジスト王国にも何人もいない。メイカの腕は本物だ。無償で作ってくれなど言えるはずないだろう」

「そんなもんかね」

「そうだ。いいか、全ての用事が終わったら、実装型ゴーレムは返却しろ」

「えー? メイカ、くれるって言ったけど」

「駄目だ。親しき中にも礼儀あり。希少な実装型をタダでというわけにもいかん。それに、貴様は素手のが強いだろう」

「まぁ確かに。んー……ま、いっか」


 シラヌイ弐型とお別れは寂しい……でも、着て戦うより生身で戦った方が強い。

 アイシェラに説教されつつ、馬車は進む。

 パープルアメジスト王国は整備された街道が多い。横幅の広い道を左側に沿って進んでいた。


「なぁ、なんで真ん中走んねーの?」

「馬車は左側に沿って走るのがマナーだ」

「ふーん……でもよ、あの馬車は? 真ん中走ってるけど」

「なに?…………どこだ?」

「前だって。ほら」

「…………」


 たぶん、一キロくらい先。

 大きな荷車を引いた馬車が、すごい勢いで走ってきた。

 ようやくアイシェラも視認……すぐに目を厳しく細める。


「……様子がおかしい」

「え?」

「嫌な予感がする……おいフレア、警戒しろ。あれだけの大きさの荷車を引いてあの速度、異常だぞ!!」

「あ、もしかしてアレか? クロネが言ってた妨害とか?」

「可能性はある。ええい、多少強引な手段でもいい、あの馬車を止めるんだ!!」

「了解!!」


 俺は第三地獄炎を纏い馬車から飛び出す。

 そのままダッシュで馬車から離れ、すごい勢いで走って来る馬車に向かって走り出した。

 

「おーい!! ちょっと止まれー!!」

「はっ、誰が止まるかよ!! 死ねぇぇぇぇぇっ!!」


 御者はなぜか鎧を着ていた。

 丸っこい鎧を着た御者は、俺の静止を無視して馬車を加速させる。

 しかも、俺を轢き殺すつもりだ。御者のやつ、めっちゃ笑ってるし。


「じゃ、無理やり止めるわ。第三地獄炎『泥々深淵』───【泥沼】!!」


 地面が黄色く燃え、一気に泥化した。

 馬車があっさり底なし沼に半分ほど沈み、鎧を着たせいで御者は泥沼に沈んでいく。

 

「たた、たすけ、たっすけ……助け」

「ほい」


 もがく御者の足元を少し硬くし、首から上だけ泥から救ってやった。

 さっそく尋問開始。


「お前、俺たちの馬車やゴーレムを狙ったな?」

「…………」

「泥に沈め」

「わわ、わか、わかった言う!!」


 沈黙した御者の足を再び泥にすると身体が沈み始めた。恐怖で御者はあっさり吐く。


「お、オレはヤンガース整備場に雇われたんだ!! モルガン整備工場がイカサマで本選出場したからって……馬車に火薬をたっぷり載せて体当たりしろって。オレは衝突の直前で脱出しようと……」

「ヤンガース整備場……ああ、あの雑魚か」

「ざ、雑魚って……毎年ゴーレムバトル大会で成績上位や優勝経験のある整備場だぞ……お前ら、その功績に泥を塗ったんだよ。はは、今のオレは泥に浸かってるけどな」

「面白くねーよ。もっと沈むか?」

「すす、すみませんでした!!」


 思い出した。ヤンガース整備場って、メイカに絡んだ奴じゃん。


「ヤンガースは……オレが失敗しても次の刺客を送って来るだろうさ。悪いことは言わねぇ。危険だし棄権しな」

「お前、この状況でよくギャグ言えるな。まぁわかった」


 俺は御者を泥から引っ張り上げ、馬車を完全に沈めて地面を固めた。

 

「た、助けてくれんのか?」

「うん。また狙ったら許さねーけどな」

「も、もうしない!! 失礼しましゅぅぅぅぅぅっ!!」


 御者は逃げ出した。

 ま、聞きたいこと聞けたからいいや。

 すると、ようやくカグヤが下りてきた。メイカもいる。


「ちょっと!! なんで起こさないのよ!!」

「いきなりそれかよ。あ、メイカ。今の奴だけど……」


 俺はヤンガース整備場のことを話す。

 すると、メイカは大きくため息を吐いた。


「やっぱり妨害してきたか……」

「まさか、爆弾乗せた馬車で体当たりとはな。なかなかぶっ飛んでるじゃん」

「……フレアさん、カグヤさん。爆弾はもちろん、暗殺者なども警戒してください。ヤンガースはきっと、次の刺客を送り込んできます……七日間、気を抜かないようにしましょう」

「おう」

「アタシ、次は絶対起きてるから!」


 パープルアメジスト王国まで、あと七日。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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