本選出場決定!
モルガンの『キュータマ1号』が入賞、順位とかじゃなくて『面白いゴーレム』ということで特別賞を受けた。そして本選出場枠を勝ち取った。
さらに、ゴーレムバトル大会予選で優勝。モルガン整備工場は一躍有名になった。
町の裏路地の入り組んだスラム街っぽいボロ工場の快挙!ということだ。モルガンにインタビューをしようと記者が向かったのだが、モルガン整備工場の場所がわからず困惑したって笑い話もある。
お祝いもしたのだが……俺は呪術師が気になって上の空だった。
本選出場ということで、パープルアメジスト王国に行かなくてはならない。
バトル大会で出た賞金は俺とカグヤのゴーレム改造と、モルガン兄妹の旅費にした。
出発は二日後ということで、みんなで買い物に来ている。
プリムとアイシェラは服屋を覗いたり、クロネは乾物屋で魚の干物を買い、カグヤは武器屋で具足を眺めていた。
俺はと言うと、みんなの後ろに続くだけ。
『くぅぅ~ん……』
「ん、どうしたシラヌイ」
『わぅぅん……』
シラヌイが、俺の足に身体を擦り付けてきた。
ああ、心配させてるようだ……いかんな、たるんでる。
「悪い。他の呪術師に会うなんて考えもしなかったからさ……俺らしくない」
『わん!』
「よし!! 考えるの止めた!! シラヌイ、なんか食おうぜ」
『わぅん』
とりあえず、呪術師のこと考えるのは止め!!
今はパープルアメジストの冒険を楽しもう。
「フレアー! そろそろお昼にしましょー!」
「おい、遅れるなよ」
「フレア! 肉食べるわよ肉!」
「魚がいいにゃん。お魚食べたいにゃん」
いつの間にかみんなが集まり、俺を呼んでいた。
「ああ、今行く!」
そう言って、シラヌイと一緒に俺は走り出した。
◇◇◇◇◇◇
数日後。
宿を引き払い、全ての荷物を馬車に積み込んで出発準備を終えた。
白黒号もゆっくり休めたのか機嫌がいい。
宿の前で、モルガンたちを待っていると……来た。
「おーい!! フレアくん!! みなさーん!!」
モルガンが手を振っていた。
メイカは恥ずかしいのか止めさせる。
だが、そんなことよりも、俺たちは二人の背後にある大きな鉄製の箱に興味津々だった。
真っ先に、プリムが聞く。
「お、おはようございます……その、なんですか、この箱は?」
箱を見上げるプリム。
驚いたことに、箱には車輪が付きゴーレムが引っ張っている。
モルガンが、嬉しそうに説明してくれた。
「いやぁ、大会運営が用意してくれた『ゴーレム荷車』だよ。ここに大会用ゴーレムと旅の荷物が積んであるんだ。さらに!! 荷台上部は宿泊スペースにもなっている!! 引き手のゴーレムもパワー重視で、頑強な脚部は道を選ばな「兄さん、その辺で」
メイカがモルガンを押しのける。
そして、俺たちに頭を下げた。
「みなさん、おはようございます。パープルアメジスト王国まで七日ほどの距離、護衛をお願いします」
「任せなさい!!」
「お嬢様は私に任せろ!!」
「アイシェラうるさい。メイカ、道中よろしくお願いします」
「はい!」
「おいモルガン。ゴーレムの話聞かせてくれよ」
「おお、任せたまえ!!」
『わんわん!!』
うんうん。楽しい旅になりそうだ。
すると、クロネが俺たちに割り込んで言う。
「確かに、ここからパープルアメジスト王国まで七日ほどの距離にゃん。でも……道中気を付けるにゃん」
「は? なんでだよ」
「過去のゴーレムバトル大会で、原因不明の不参加がいくつもあるにゃん……敵対企業が刺客を放ったり、敗者の企業に高額を支払って妨害工作をしたりと、黒い話ならいくらでもあるにゃん」
「え、マジ? 最高じゃない!!」
カグヤが大喜びだ……こういう話、好きだもんな。
メイカとモルガンもちょっと顔色が悪いので、俺も言った。
「ま、大丈夫だって。どんなのが出てきても、俺とカグヤでブチのめしてやるからさ」
「は、はい……」
「た、頼んだぞ。フレアくん」
こうして、工業都市エルモアを出発……パープルアメジスト王国に向けて出発した。




