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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第九章・からくりの王国パープルアメジスト

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暁の呪術師

 俺の知らない呪術師。

 ジョカと名乗った女は、呪術師が着る呪力を込めた『呪道着』を纏い、俺の眼を見て笑っていた。

 俺は距離を取り、構えを取る。


「安心なさい。もう目的は達成したから」

「…………っ」


 冷たい汗が流れ落ちた。

 呪術師。たった一度の攻防でわかった。

 流の型『漣』……あれは、一朝一夕でできる技じゃない。攻撃の軌道を反らす、流の型の初歩中の初歩だ……それを、間違いなく使った。

 俺は、構えたままジョカに聞く。


「あんた……もしかして、村の出身なのか?」

「ふふ、違う違う。呪術師の村は千年前に滅びたでしょ?」

「じゃあ……」

「あんたとは違うわ。とりあえず、今はそれでいいでしょ?」

「…………」


 なんて答えればいいかわからない。

 俺の知らない呪術師に会えた喜びなのか。それとも、なぜいきなり襲って来たのかとか……何を質問すればいいのか、整理できない。

 言葉は、なんとなく出てきた。


「その、他にも……ほかにも、呪術師はいるのか?」

「いるわよ。ねぇ?」

「え……?」


 ジョカが俺を───いや、俺の後ろを見て言う。

 振り返るとそこには、白い髪の女がいた。


「なっ……いつの間に」


 真っ白な髪の女……たぶん、同い年くらいか。

 着ているのはやはり呪道着で、胸元がゆるゆるで胸が見えていた。

 ジョカは俺から離れ白髪の女の元へ。そして、白髪の女に言う。


「来てたの、ハクレン」

「うん。ジョカ、遅い」

「ごめんごめん。この子の実力を見たくてね……まぁ、想定内かな?」

「あ?」

「ハクレン、帰るわよ」

「うん」

「おい、ちょっと待てよ!! その白いの誰だ? 帰るって……一体、俺になんの用事だったんだよ!?」


 俺がそう言うと、ジョカはハクレンと呼ばれた女の頭を撫でた。


「この子はハクレン。『裏切りの八天使(ブリューゲル・エイト)』の一人イアカディエル……っていうのは仮の姿。呪闘流八極式曲種第一級呪術師のハクレンちゃんよ?」

「ちゃんはいらない。よろしく、ヴァルフレア」

「俺の名前……おい、あんたらマジで何者……」


 俺が言いきる前に、ジョカが手で制した。

 

「今は言えないわ。来るべき日に、みんなでご挨拶するから。それまで、このパープルアメジスト王国の冒険を楽しみなさい」

「お、おい!!」

「ばいばい、ヴァルフレア」


 そして、ジョカは紫色の炎(・・・・)を目の前に燃え上がらせると……その姿が忽然と消えた。

 俺は、二人が消えた場所を見つめたまま……しばらく動くことができなかった。


 ◇◇◇◇◇◇


「遅い!!……なに、どしたのアンタ?」

「フレア……?」

「おい貴様、飲み物はどうした」

「にゃん……なんか、上の空にゃん」


 カグヤたちの元に手ぶらで戻った俺。

 正直、何を買うかとかもう思い出せない。無言で席に座った。

 すると、カグヤが言う。


「アンタ遅いわよ。もうモルガンたちのアピールタイム終わっちゃったわ」

「ああ……悪い」

「……マジで何?」

「…………」


 俺は椅子の背もたれに寄りかかり、ドームの天井を見た。

 あのジョカって奴……紫色の炎を使ってた。


 俺は目を閉じ、意識を内側に向ける───。


 ◇◇◇◇◇◇


 そこは、真っ暗な空間───おお、いつもの空間だ。


『よぉ、相棒』

「焼き鳥……なぁ、どういうことだ?」

『あぁん?』


 焼き鳥こと、第一地獄炎の魔王『火乃加具土』は、大きな赤い身体を丸めたまま目を開けた。

 周囲を見ると……誰もいない。他の魔王たちがいると思ったのに。


『他の連中は自分の《魔王宝珠》の中にいるぜ』

「え?」

『お前が取り込んだ宝石だ。お前が最初に取り込んだのがオレの宝珠だったせいか、お前が意識を内側に向けて最初に来れる場所みてーだな……他の連中は来たがらねぇんだよ』

「そんなことより、他の呪術師のことだけど……」

『知らね』

「…………使えねー鳥だな」

『あぁ!? おいこら相棒、言っていいことと悪いことあるぞ!!』


 焼き鳥は身体を起こし翼を広げる。

 

『そーだな……『黒』の奴が詳しいぞ。呪術師に呪力を与えた奴なら知ってんじゃね?』

「…………おいお前、今なんて言った?」

『あ? 他の呪術師のこと知りたいなら『黒』の奴に聞けってんだよ』

「いやいや!! 呪術師に呪力を与えたってなんだよ!?」

『知らねーのか? 第六地獄炎は『呪い』の炎。呪術師が使う全ての呪術は、第六地獄炎が起こしてんだよ。お前ら、生まれたときに魂に呪を刻むだろ? それは第六地獄炎の呪いなんだよ……待てよ?……ああそういうことか。わかったぜ』

「おい、わけわかんねーよ。なんだよ一体」

『あー……他の呪術師のことだ。いやはや、オレも気付かなかったぜ。まぁ気にするレベルじゃねぇよ。ま、お前の炎には勝てないってことだ』

「…………?」

『とにかく、あんま気にすんな。『黒』も出てこねーし、今は旅を楽しめ。どうせそのうち、思いっきり暴れることになるかもしれねーしな』

「お、おう……」

『じゃ、帰れ。オレは寝る』

「いやいや、まだ聞きたいことあるし」

『うるせーな。オレは寝るんだよ……じゃぁな』

「あ、おい焼き鳥───」


 と、ここで目が覚めた。

 オリジナルゴーレム大会の会場内……すると、アナウンスが響く。


『ここで特別賞!! モルガン整備工場のゴーレム『キュータマ1号』が特別賞に輝きました!!』

「うぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーっ!!」


 モルガンが、壇上で雄叫びをあげていた。

 ああ、オリジナルゴーレム大会……終わったようだ。

 けっきょく、呪術師の手がかりはなかった……焼き鳥の野郎め。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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