EXTRA BOSS・『?????』
「では!! 予選突破を祝してぇぇ……きゃんぷわぁぁーいっ!!」
「「「「「「乾杯!!」」」」」」
モルガンの巻き舌による『乾杯』の音頭で、俺たちはグラスを合わせた。
ゴーレムバトル大会の予選を突破し、モルガン整備工場はパープルアメジスト本国で行われる本選に参加することが決定。今日はそのお祝いで、個室のある食事処で食事会だ。
あ、ちなみに決勝の『フジヤマ設備』って会社は、初戦でカグヤがゴーレム蹴り壊したら棄権した。戦うより、壊されてかかる修理代を心配したようだ。
俺は、モルガンに言う。
「ゴーレムバトル大会は楽勝だったけど、明日のオリジナルゴーレム大会は大丈夫なのか?」
「当然!! ボクの最高傑作『キュータマ1号』の素晴らしさ、ご覧あれ!! わーっはっはっは!! げっほげっほ!!」
笑いすぎてむせるモルガンに、メイカが水を差しだす。
カグヤは串焼きを齧りながら言う。
「アンタには悪いけど、アタシはあんまり興味ないわねー……あむ……ゴーレムの性能を競う大会でしょ?」
「そんな!? 見てればきっと面白いぞぉ!!」
「んー……」
カグヤとしては、見るより動く方が好きだからな。
すると、サラダをもぐもぐ食べるプリムが言う。
「わたしはすっごく楽しみです!! いろんなゴーレムが集まる大会……わくわくです!!」
「おおおおお!! ありがとうプリムくん!!」
「貴様!! お嬢様に近づくな触れるな!!」
「アイシェラ、触らないで抱き付かないで胸を撫でないで」
「うへへ……」
モルガンから守るフリをして変態行為を行うアイシェラ。
ギャーギャーワーワーと騒がしかったが、こういう食事会も悪くない。
騒ぎに巻き込まれないように隅っこで焼き魚を食べていたクロネが俺に言った。
「オリジナルゴーレム大会が終われば、次は本選にゃん。次の目的地がパープルアメジスト王国になるけど、いいのかにゃん?」
「いいだろ。今はいろんなゴーレムと戦ってみたいし、本選を優先しよう」
「にゃん。モルガン、メイカ、パープルアメジスト王国までの道、わかるかにゃん?」
「はい。何度か行ったことありますので」
「一本道だし、迷うことはないぞお!!」
モルガンのテンションがうっとおしくなってきた。
こいつ、けっこう酒飲んでやがるな。
そして、プリムがまとめる。
「では、明日のオリジナルゴーレム大会の後は、パープルアメジスト王国への出発準備。そしてみんなで仲良く出発ですね!!」
「はい。その……よろしくお願いします!!」
「妹ともども、よろしく頼むぞ!! わーっはっはっは!!」
というわけで……明日はオリジナルゴーレム大会だ!!
◇◇◇◇◇◇
翌日。
モルガン整備工場のボロリヤカーを使い、キュータマ1号を運び出す。
今日はモルガンの出番。俺たちは完全な観客だ。
会場はバトル大会と同じ場所で、控室が整備場になっている。予選ルールは、各企業が作りだしたオリジナルゴーレムの性能を見せつけ、パープルアメジスト王国から来た審査員が審査をする。
上位八組の企業が本選に出場できるというルールだ。
俺、カグヤ、プリムとアイシェラ、クロネの五人は、企業専用の観客席でのんびりしている。ちなみにシラヌイはシラヌイ弐型やハヤテ丸が気に入ったのか、宿にいる。
「カグヤ、串焼きくれ」
「ん、じゃあアタシにカスティラちょーだい」
「おう。プリムも食べるか?」
「はい! じゃあフレアにチョコあげますね」
「おう」
「貴様!! お、お嬢様の、お嬢様のちょ、チョコ……チョコをぉぉぉぉ!!」
「うっせーな……つーか意味わかんねーし」
「アイシェラ黙ってて」
「はぃぃぃ……」
「にゃん。お茶くれにゃん」
俺たちは、完全にリラックスしていた。
ゴーレムの町でゴーレムと戦って、オリジナルゴーレムの大会を、お菓子やお茶をお供に観戦……これ、完全な観光客だよな。
俺はカスティラというふわふわしたケーキの玉を口に入れる。
「うめぇなぁ」
「ん~、アタシはお肉が好き」
「肉もいいなぁ……よし、ちょっと露店に行ってくる!!」
「あ、アタシのも追加で」
「私の分も買ってこい」
「うち、魚が食べたいにゃん」
「わ、わたしはその、大丈夫です」
「……まぁいいや」
俺は一人、会場の外にある露店へ向かった。
◇◇◇◇◇◇
「ふんふんふ~ん♪ 肉に魚に甘い物~♪」
一人、会場のドームを出て会場前露店広場へ向かう。
オリジナルゴーレム大会は大きなイベントなので、お店もいっぱい出てる。それに観光客も多く、お祭りならではの雰囲気だ。
さっそく露店探しをしていると。
「もし、そこのあなた……もし」
「ん、俺?」
「ええ。少しお願いがありまして……」
妙な女に話しかけられた。
全身ローブを着ているせいで顔しか見えない。
たぶん、十八歳くらいかな。
「なに? お姉さん、迷子にでもなったのか?」
「いえ……あなた、昨日のゴーレムバトル大会で優勝したお方ですよね?」
「うん、そうだけど」
「ほぼ生身であれだけの強さ……あなたにしかお願いできないことがあります」
「えー……これからオリジナルゴーレム大会あるし」
「ほんのすぐ、すぐに終わります。実は……あちらの裏路地に落とし物をしてしまいまして」
ローブ女は、会場前露店広場の脇にある小さな小道を指さす。
そこから裏路地へ続いているようだ。女は悲しげに言う。
「大事な物でして……ですが、あの路地はならず者たちも多く出る通りで、女一人では危険なのです。お礼もしますので、少しだけご一緒していただけないでしょうか?」
「んー……まぁ、それくらいなら」
「ありがとうございます」
女は頭を下げた。
ま、大会まで時間あるし、少しくらいならいいだろう。
◇◇◇◇◇◇
お姉さんと一緒に路地裏へ。
路地裏という割には道幅が広い。だが……人の気配がない。
俺もお姉さんも無言だった。そして、路地裏の中ほどまで進んで俺は止まる。
「この辺でいい?」
「……え?」
「いや、お姉さんの落とし物って噓だろ? 狙いは俺……違う?」
「…………何故、そう思うの?」
「だって、お姉さん強いじゃん」
「…………」
俺は甲の型で構えを取る。
お姉さんはニヤリと笑い、ローブに隠れていた両手を広げた。
両手の指先に、鉄の爪が装備してある……たしかこれ、暗器ってやつだ。
「そう。私の狙いは初めからあんたよ。地獄炎の呪術師……あんたの実力、見てあげる」
「はっ……なんか、こういうの久しぶりだな」
俺は第一地獄炎を身体に纏わせる。
「第一地獄炎……ふふ、真っ赤で綺麗な炎ね」
「そりゃどうも……じゃあ、やるか」
「ええ……」
───俺が地面を蹴ると同時に、女も飛び出した。
「第一地獄炎、『紅蓮五指』」
指先に炎を集中。相手は手刀のように指を固定した。
「甲の型、『虎甲掌』」
燃える手を開き、『硬くなれ』の呪術で完全固定。
この状態なら、岩や鉄板ですらブチ抜ける。
拳の射程距離に入ると、女の腹めがけて連撃を繰り出した。
「おぉぅ、知り合って間もない女の腹に手を伸ばすとは、破廉恥なガキね」
「───っ!!」
女は、俺の掌打を全て躱す。
そして、手刀を俺の顔めがけて突き出した。
俺は突きを躱し反撃の隙を伺うが……かなりの速度だ。
「くっ……」
「ふふふっ───私の突き、なかなか早いでしょ!!」
「このっ」
俺は『紅蓮五指』を解除。
集中し、変幻自在の突きを躱し軌道を読む。そしてタイミングを見計らい───!!
「流の型、『漣』!!」
「───」
手刀の側面を軽く叩き、両手の軌道を変えて体制を崩す。
そして、バランスが崩れた瞬間を狙い、女の腹に拳を叩き込んだ───が。
「……!?」
「痛いわね……」
「な、これ───噓だろ!?」
女の腹が、鉄のように硬くなっていた。
女は動かず笑みを浮かべている。
俺は迷わず、女の顔めがけて拳を放った。
そして───聞いた。
「流の型、『漣』」
俺の拳に横から軽く衝撃を与え、軌道を反らされた。
馬鹿な。馬鹿な。馬鹿な。
そんな、馬鹿な。
そして、女の反撃───。
「……うん、ここまでね」
「なっ……」
女は、俺の頭に手を載せて撫でた。
反撃は、来なかった。
「なかなかいい腕ね。基礎四大行は完成している」
「あ、あんた……一体」
「ああ、そう言えば名乗ってなかったわ」
女はローブを脱ぎ捨てた。
ローブの下に着ていた服に、俺は見覚えがある。
「じゅ……呪、道服……」
女が着ていた服は、呪術師が着る呪力を込めた道着だ。
俺が着ている服と似ている。
そんな、まさか。
女は、にっこり笑って言った。
「私の名は『懲罰の七天使』のクシエル……と言うのは仮の名前。本名は……呪闘流八極式幻種第一級呪術師ジョカ。よろしくね、呪術師ヴァルフレア」
呪術師。
目の前にいる女は、俺の知らない呪術師だった。




