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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第九章・からくりの王国パープルアメジスト

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ゴーレムバトル大会・予選

 ゴーレムバトル大会と、オリジナルゴーレム大会は一日ずれて行うようだ。

 理由はまぁ言わなくてもわかる。どっちも観戦したいし、企業の都合もあるからな。


 そして、驚いたのは……ゴーレムバトル大会に参加する企業が四十社ほどあったことだ。つまり、四十組の企業がこの日のために開発した戦闘用ゴーレムと、そのゴーレムを操るゴーレムマスターがいるってことだ。

 

 ゴーレムバトル大会の会場は、『ゴーレム・エンタープライズ』が所有する巨大ドーム。

 ここに、俺とカグヤとメイカの三人と、三体のゴーレムが集まった。

 俺は、周りを見る。


「かっこいいゴーレムだらけだな!」

「確かにね。アタシわっくわく!」

「…………すごい。オリハルコン合金のゴーレム、それにあの脚部……あ、あっちは腕部の重量を増やして下半身をタンクにしてる。そっか、あんな工夫があったなんて……」

 

 俺とカグヤ、メイカでは見るべきモノが違うようだ。

 というか、俺たちのゴーレムが一番貧相な気がする。

 周りのゴーレムは大きいのばかりだ。ヒト型や四足歩行型、車輪が付いたやつもいるし、どうみてもデカい箱にしか見えないのもある。

 それに対し、俺たちは……犬と狼とデカいボールだ。


「なぁメイカ。それってモルガンの最高傑作だろ? 持ってきてよかったのか?」


 メイカのゴーレムは、モルガンが自慢してた球体だ。

 モルガンが作ったのは灰色だったが、これはピンク色になってる。


「これ、兄さんが設計したゴーレムの二号機です。兄さんの一号機はコンテスト用、あたしの二号機は戦闘用に調整しました」

「ふーん。あのさ、アンタってゴーレム動かせんの?」

「はい。『新人(ルーキー)』クラスですけど、一応ゴーレムマスターの資格はもってます」


 メイカは自信満々だ。

 ちなみに、プリムとアイシェラとクロネとシラヌイは、観客席にいる。企業の招待客はけっこういい椅子に座れるみたいだ。

 カグヤは、自分のゴーレムである『ハヤテ丸』を撫でる。


「ハヤテ丸。目指すは優勝よ!」

『イエス』

「……ねぇメイカ。この鳴き声なんとかしてよぉ」

「えっと、ゆ、優勝したら賞金が入りますので……少しは調整できます」

「お願いね!」


 俺も、自分のゴーレムである『シラヌイ弐型』を撫でた。


「シラヌイ弐型、お前も頑張ってくれよ」

『オーケー』

「……まぁ、うん。メイカ、俺も頼むわ……なんか嫌だ」

「は、はい」


 シラヌイ弐型は置物みたいに動かない。

 メイカ曰く、もう少し改造すれば普通の犬みたいにすることができるそうだ。

 すると、妙な連中が近づいてきた。


「こ~れはこれは。モルガン『ボロ』整備工場のメイカさんじゃありませんか?」

「……どうも、ヤンガース整備場の皆さん」


 メイカが嫌そうにそっぽ向く。

 カグヤは首を傾げて言う。


「だれ?」

「……ヤンガース整備場のゴーレムマスター、ヤンガースです」

「どうもお嬢さん。ヤンガースと申します」


 毛皮のコートを着た二十代くらいの男だ。

 ヤンガースの傍にいるのは、ヤンガース整備場の専属ゴーレムマスターらしい。

 ゴテゴテに改造されたゴーレムを連れ、挨拶に来たようだ。


「ふふふ。メイカさん、例の話ですが」

「……何度もお断りしているはずです」

「おやおや……あんなボロ工場にこだわらず、うちの整った設備でゴーレムを作りたいと思わないのですかねぇ……私、あなたの腕前は買っているのですよ。それと……」

「……っ」


 ヤンガースは、メイカの身体を舐めるように見る……こいつ、プリムを見るアイシェラそっくりの眼だ。気持ち悪いな。


「ふふ。私の恋人になれば、こんな生活はしなくて済みますよ」

「結構です!! あたしはお父さんの工場を兄さんと守ります!!」

「……そうですか」


 ヤンガースはニンマリと笑い、俺たちのゴーレムを見た。


「……ははっ、ハハハハハッ!! なんですかなこれは!? まさか『愛玩鉄機(ペットゴーレム)』? それとただの鉄球とは!! 金も資材もない、スクラップでゴーレムを作っているという噂は事実のようだ!! はーっはっはっは!!」

「……っ」

「あなたたちも笑いなさい。はーっはっはっは!!」

「がーっはっはっはっは!!」

「ぎゃはははははっ!!」


 ヤンガースの連れのゴーレムマスターもゲラゲラ笑う。

 メイカは歯を食いしばって震えた……何も言い返せなかったからだ。

 

「みなさーん!! モルガン整備工場のゴーレムは、ペットゴーレムですよぉぉ~んっ!! 一回戦で当たる企業は実にラッキーですなぁ!!」


 さらに、ヤンガースは周りにいる企業たちに言いふらす。

 すると、ヒソヒソ馬鹿にするような声や、指を刺して笑う声が聞こえてきた。

 ああ、こりゃめっちゃ馬鹿にされてるわ。


「いやぁ~、一回戦で当たりたいものですな。ふふふ、では」


 ヤンガースはゲラゲラ笑いながら去った。

 

「いやー、馬鹿にしてたなあいつ」


 俺は特に気にしてなかった。

 呪術師の村でもけっこう馬鹿にされてたし、こういう嘲笑は慣れっこだ。

 だが、案の定……。


「…………よし、殺そう」


 アホのカグヤは青筋を浮かべていた。

 メイカは俯いて震えている。

 さて、どうしたもんか……と思っていると、ドーム中に声が響いた。


『これより、開会式を始めます。各企業のゴーレム、ゴーレムマスターは整列してください』

「お、開会式だってよ。行こうぜ」

「アンタ!! 頭にこないの!?」

「いや、むかつくけど開会式だし……おいメイカ、行くぞ」

「……はい」


 開会式が始まり、お偉いさんの挨拶、そして組み合わせが発表された。

 各企業は控室に入り、ゴーレムの最終調整をする。

 ちなみに、俺たち『モルガン整備工場』は第一試合。

 メイカは、自分のゴーレムの『ボール二号』の整備をしている。カグヤも青筋を浮かべてだんまり……あー、なんかめんどくさいことになりそう。


「メイカ」

「はい」

「派手にやっていい?」

「……ええ、ブチかましてください」

「え、おいお前ら」

「「……なに(なんでしょう)?」」

「ひっ……い、いや、なんか怒ってる?」


 カグヤはともかく、メイカも青筋を浮かべていた。

 あれ? メイカってこんな顔だったっけ?……こ、怖いな。


「カグヤさん」

「ええ、メイカ。売られた喧嘩は買う」

「そうですね。フレアさんも、よろしくお願いします」

「は、はい……」

「じゃ、行くわよ」

「はい」

「お、おー……」


 メイカといカグヤは、怖いオーラを放ちながら会場へ向かった。

 

「なぁシラヌイ弐型……女って怖いな」

『オーケー』


 シラヌイ弐型に話しかけるが、よくわからん答えが返ってきた。


 ◇◇◇◇◇◇


 会場内に入ると、爆音……いや、歓声が響いた。

 半円形のドーム中央が俺たちが戦うステージで、壁側には観客席がある。

 クロネ情報によると、この観客席は三万人ほど座れるらしい。


「……観客多いな」

「工業都市エルモアの住人だけじゃなく、観光客やパープルアメジスト王国からの技術者も見にきてますからね」

「へー……って、ヤバいな」

「え?」

「いや、カグヤだよ。こいつ、こういう場でこそ力出るタイプなんだ」


 すると、またもやデカい声が響く。


『えー、それではさっそく第一試合!! モルガン整備工場とヤマモト工業のゴーレムバトルを始めたいと思いますっ!!』


 会場内に響く声。拡声器という技術で声をデカくしてるらしい。

 この声は実況だとか。声がノリノリだな。


『それでは各企業、代表選手はステージへお上がりください!!』


 すると、何も決めてないのにカグヤが言う。


「アタシが行く」

「あー……好きにしろよ」


 カグヤがステージに上がる。

 相棒のハヤテ丸も一緒に上がると、嘲笑が聞こえた。


「おいあれ……」「ペットゴーレムじゃん」「マジか?」

「だっさぁ~」「つまんなーい」「おいおい、モルガン整備工場」


 さらに、ヤマモト工業はデカいゴーレムだ。

 腕力が自慢なのか、腕がデカい。下半身は巨大な箱のようになっており、底に球体が埋め込まれていた。どうやらその球が転がって移動できるようだ。

 ヤマモト工業のゴーレムマスターが前に出る。


「へへへ、お嬢ちゃん……負けを認めるなら今しかないぜ?」

「うっさい豚クソハゲデブ。いいからやるわよ」

「……後悔すんじゃねぇぞ」


 ゴーレムマスターがステージから降りる。

 そして、カグヤがハヤテ丸に命じた。


「実装」

『ウェアライズ』


 ハヤテ丸が変形し、カグヤの身体にくっついた。

 必要最低限の部分しか守ってない鎧。だが……これで十分なのだ。

 相手のゴーレムも起動した。

 そして、審判が出てきて確認する。


「準備はいいな?……では……ファイッ!!」


 審判の合図が会場内に響き、試合が始まった。


「───あーあ、終わったな」


 俺はそう呟いた。


 ◇◇◇◇◇◇


 試合が始まると同時にカグヤは走り出した。

 だが、ただ走るだけじゃない。途中で横回転を加えながら走った。


「───なんだ?」


 ゴーレムマスターにはわからない。

 あんな脆弱な鎧、パンチ一発で砕けてしまう。

 この大会が、命を奪っても何ら責任がないとは知っているが、やはり躊躇した。

 その一瞬の躊躇が、大きな隙になる。


 カグヤは回転したままゴーレムに接近し、片足だけで回転。

 そのまま身体を的確な位置に変え、回転を利用した恐るべき廻し蹴りを敵ゴーレムに喰らわせた。


「神風流、『風轟脚(ふうごうきゃく)』!!」


 ズッドォォン!! と、爆音がした。

 推定数トンはあるゴーレムが水平に飛び、このドームの入口である巨大鉄扉に激突。鉄扉を突き破って地面を何度も転がり、ようやく停止した。


 一瞬で静まりかえる会場。

 カグヤは銀髪をなびかせ、審判に言った。


「アタシの勝ち。それとも……まだやる?」


 静寂のまま、カグヤの勝利がポツリと告げられた。

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脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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