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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第九章・からくりの王国パープルアメジスト

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新ゴーレム。そしてゴーレムバトル大会!

 モルガンの工場から宿に戻った俺たちは、帰ってきたクロネとシラヌイ、馬車の手入れと馬の世話を終えたアイシェラと一緒に、宿の近くにあった大衆食堂へ夕飯を食べに来た。

 食堂のメニューは大雑把な物ばかりで、食堂内にいる人たちも作業着のおじさんたちばかりだ。どうも工場帰りでそのまま晩酌してるって感じ。

 俺たちは、アイシェラとカグヤに今日の出来事を話した。ちなみにシラヌイは外で待ってる。


「オリジナルゴーレム大会か……そういえば、宿屋の女将もそんなことを言ってたな」


 そういって、エールを飲むアイシェラ。

 クロネも焼き魚をもぐもぐ食べながら言う。


「オリジナルゴーレム大会で優勝すれば、パープルアメジスト本国で開催される本選に出場できるにゃん。そこでいい成績を残せば、ゴーレム・エンタープライズから正式に販売許可がもらえるにゃん」


 ゴーレム・エンタープライズって会社が認めた物じゃないとゴーレムは販売できない。

 なので、整備士たちはゴーレム整備の仕事と、このオリジナルゴーレム大会に出すゴーレムの設計に力を注いでいる。

 現在、ゴーレムの販売ができるのはたった四社。オリジナルゴーレム大会も、その四社のどこかが毎年優勝しているらしい。


「ちっちゃい個人経営の工場が優勝なんて、夢のまた夢にゃん。あむ……それに、設計士から職人まで、大手四社は桁違いの数を揃えてるにゃん」

「そうなんですか……」


 プリムはスープを啜り、口を丁寧に拭く。


「でも、モルガンさん、すっごく自信満々でした」

「あーむっ……そういや、また明日来いってメイカが言ってたわね。行く?」


 カグヤが骨付き肉をムシャリと齧りながら言う。

 俺はパンをかじり答えた。


「ま、お呼ばれしたし行ってみるか。それに、オリジナルゴーレム大会が近いなら見なきゃ損だしな。大会が開催されるまで滞在しようぜ」

「さんせー! あ、フレア、冒険者ギルドの依頼も受けましょうよ!」

「いいね。面白い依頼あるかもな」


 と、焼き魚を完食したクロネが言う。


「そういえば、ゴーレムバトル大会のことは知ってるにゃん?」

「「ゴーレムバトル大会?」」

「わわ、フレアとカグヤの声が重なりました!」

「相変わらず似た者同士だな」

「うっせえな。で、クロネ、ゴーレムバトル大会ってのは?」

「なんか面白い気がするわ!」

「にゃん」


 クロネは果実水を飲み、喉を潤す。

 

「ゴーレムバトル大会ってのは、オリジナルゴーレム同士を戦わせる大会にゃん。オリジナルゴーレム大会と同じく、この町の目玉の一つ。予選を突破したゴーレムは、パープルアメジスト本国で開催される本選に出場できるにゃん」

「なーんだ、ゴーレムの大会かぁ……つまんなーい」


 カグヤはつまらなそうに椅子に寄りかかる。

 だが、クロネは続けた。


「話は最後まで聞くにゃん。ゴーレムバトル大会の参加条件は簡単にゃん。オリジナルゴーレムであること、タイプはなんでもあり、死んでも文句を言わない……つまり、攻撃型、防御型、支援型の枠にとらわれない参加が可能にゃん」

「…………なるほどな、そういうことか」

「そうにゃん。あんた、察しがいいにゃん」

「え、え、どゆこと?」


 俺はわかったが、カグヤは首を傾げていた。

 せっかくだ。答え合わせをしよう。


「ママさんのゴーレムを思い出せよ」

「…………あ!!」

「そう、【実装型】だっけ? つまり、あれを使えば俺たちもゴーレムと戦える」


 ゴーレムを『着る』ってことだ。

 合法的に、俺も戦える。

 すると、アイシェラが言う。


「待て待て。まさか貴様、ゴーレムバトル大会に参加するのか?」

「なんか面白そうだ。モルガンに相談してみようかなーって今思った」

「アタシも!! アタシも出たい!!」

「うちも賛成にゃん。フレアとカグヤなら間違いなく優勝できる。モルガンとかいう奴の企業が本選に出ればそこでも優勝する。そうすれば、四大企業は必ず接近してくるにゃん。くふふ、パープルアメジストのゴーレム技術の情報をゲットするチャンス、さらにコネも手に入るかも……」


 打算的なクロネだった。

 でも、野良ゴーレムじゃないオリジナルゴーレムと戦ってみたかった。

 プリムは、首を傾げる。


「でも、モルガンさんはオリジナルゴーレム大会に参加するんじゃ?」

「にゃん。オリジナルゴーレム大会もゴーレムバトル大会も参加すればいいにゃん。現に、他の企業はみんなそうしてるにゃん」

「なるほど……」

「よーし!! モルガンに頼んでみようぜ。明日はみんなであいつの工場行くか!!」


 ゴーレムバトル大会、ぜひ参加したい!!


 ◇◇◇◇◇◇

 

 翌日。

 今度は全員でモルガンの工場へ。

 複雑な裏道を通り、オンボロ整備工場に到着した。


「こ、ここか?」

「ぼ、ボロボロにゃん……」

『わぅん』


 アイシェラ、クロネ、シラヌイは、工場のボロさに驚いていた。

 俺たちは二度目だから気にしていない。

 さっそく中へ行こうとしたら、工場のボロいドアが開き、目に隈を付けたメイカが出てきた。


「や、やっと……やっと完成……ね、ねむぃぃ」

「め、メイカ!? だ、大丈夫ですか!?」


 ボロボロのメイカがよろよろしながらこっちへ来たので、プリムが慌てて受け止める。

 相当疲労しているようだった。


「疲労に効くかな……」

「おぉぉ~~~……」


 プリムの手が輝き、メイカを包み込む。

 どうやらプリムの癒しは疲労にも効果があるようだ。

 どこかスッキリしたメイカがプリムに言う。


「驚いた。あなた、特異種だったんだ……ありがとう」

「いえ、元気になってよかったです。ところで、何をしてたんですか?」

「……お兄ちゃんに付き合わされてたの。新しいゴーレムが完成して、これでオリジナルゴーレム大会に出場するって息巻いてるんだけど……」


 すると、工場の入口から何やら『球体』が転がってきた。

 大きさは直径150㎝くらいで灰色の、ヒビだらけの球体だ。どういうわけかコロコロ転がって、メイカの前でピタッと止まる。

 いきなり現れた球体に、カグヤが不審げな目を向けた。


「なにこれ?」

「……兄の最高傑作です」

「ふっふっふっふ……」


 すると、工場からモルガンが出てきた。

 たぶん徹夜だったんだろうけど、メイカと違って全く疲れている感じはしない。

 妙な球体の隣に立つと、いきなり叫んだ。


「見てくれ!! これがボクの最高傑作、『キュータマ1号』だ!!」

「「「「「…………」」」」」

「あ、あの皆さん。お兄ちゃんは真面目ですので、そんな目で見ないであげて……」

「フレアさん!! あなたのヒントから得た着想で作り上げた最新型ゴーレムです!! 見てください!!……コマンド、【変形】!!」


 すると、亀裂の入った球体が変形する。

 亀裂が分かれ、丸っこい腕や足に変形し、二足歩行のゴーレムになった。

 これには、俺たちも驚いた。


「そう、球体!! 球体こそゴーレムの理想形!! これこそ、このキュータマ1号こそ至高のゴーレムなのです!! ふぁーっふぁっふぁっふぁ!!」

「「「「「…………」」」」」

「す、すみません……こんな兄で。え、えと、皆さんはどんな用事で?」

「あ、ああ。えっと……ゴーレムバトル大会のことで話があるんだ。いいか?」

「は、はい。わかりました。どうぞこちらへ……」

「ふぁーっふぁっふぁっふぁ!!」

「兄さんうるさい!」


 メイカに案内され、俺たちは家の中に入った。

 さて、ここからが本番。メイカとモルガンを説得して、ゴーレムバトル大会の参加権を得なくては。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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