買い出しとゴーレム
買い出しをちゃっちゃと終えた俺たちは、荷物を置いて再び町へ。
手ぶらで町を歩き、気になった店の覗いてみる。
「あ、なんだかいい匂いがしますー」
「肉!! 肉の匂いだ!!」
「見てみてあそこ!! 串焼き売ってるわよ!!」
カグヤが指さした先に、露店があった。
串焼きが売っていたので三本購入。俺とカグヤは豪快にかじり、プリムはちょっとオロオロしていた。
そして、意を決したようにガブっとかじる。
「ん、ウマイな。塩利いてる」
「んー!! しあわせねぇ~♪」
「こ、こういう食べ方、すっごく憧れてました!! おいしいですー!!」
ガフガフと肉をかじるプリム。
町を歩きながら露店巡りをしてお腹を膨らませ、冷たい果実水を買って町の公園に来た。
公園は狭く、ベンチくらいしかない。なんとも寂しいね。
とりあえず、果実水のカップを持って座る。
「はぁ~、腹いっぱいになったかな」
「そーね。じゃ次は買い物しましょ!! 買い出しじゃない、面白そうなもの!!」
「面白そうなもの……この町でしたら、ゴーレムでしょうか?」
「あ、そういや……ゴーレムのパーツショップとか、ゴーレム本体を売ってる店があったな」
「お、いいわね。行ってみる?」
果実水を飲み欲し、カップをゴミ箱へ。
三人で並んで歩いていると……馬鹿は寄ってくるもんだなと思い知らされた。
町の大通りに出ようと、人通りのない裏道を通ったところ。
「へっへっへ……兄ちゃん、ちょっといいかい?」
「カワイイ子連れてんじゃん。どっちかくれよ?」
「ぶひひ、金髪と銀髪……お、おっぱい大きいんだな」
不細工なチンピラに絡まれた。
どこにでもこういう馬鹿はいるもんだな。
とりあえず、俺は言う。
「やめとけやめとけ。こっちの金髪の子はともかく、こっちの銀髪はガチな狂犬だぞ。ゴーレムを素手で蹴り壊すような魔獣に手を出したら、お前ら全員蹴り殺されるぞ」
「……アンタ、死にたいようね」
「ふ、フレア!! 言いすぎですぅ!!」
「だって事実だし。なぁ?」
不細工三人組に言うと、なぜか切れた。
「兄ちゃん、舐めんじゃねぇぞ!!」
「そうだそうだ!! オレらC級冒険者クラン『エルモアの肉食獣』を相手に落ちなかった女はいねぇ!! へへ、男付きだろうと可愛がってやるぜぇ?」
「お、おっぱい……うひひ、ぶっひひぃ」
な、なんかマジでキモイな。
カグヤの額に青筋が入った……プリムも気持ち悪いのか嫌そうにしてる。
とりあえず、カグヤが蹴り殺す前に、全員呪術で腹痛に───。
「……ん? なんだあれ?」
「あぁん!? おい兄ちゃん、たっぷり可愛がってやるぜ!!」
「いや、あれあれ、後ろ」
「へん、そんな手に乗るかよ」
「あれ……ゴーレムか? 変なの」
「ぶひい、ぶひひ」
次の瞬間───不細工三人組が謎のゴーレムに吹っ飛ばされた。
俺はプリムを抱え横っ飛び、
「「「ぶっひゃぁぁぁぁーーーっ!?」」」
「だから言ったのに……」
「ひゃぁぁっ!? な、なんですかあれ!?」
路地裏を一直線に通り過ぎたのは、妙な形のゴーレムだった。
寸胴に車輪を付け、半円形の頭にはガラス玉みたいな目、ゴムホースの腕に輪っかみたいな手のゴーレムだ。
不細工三人組を吹っ飛ばしたゴーレムは急停止し、その場でぐるぐる回る。そして、半円形の頭がぐるぐる回転し、ガラス玉の目が俺たちを捕らえる。
「お、こっち見た」
「どうやらアタシたちを狙って……いや、無差別かな」
「あああ、あの、フレア……て、手」
「手? ああ悪い」
俺の手はプリムの胸をがっちりつかんでた。どうりで柔らかいと思った。
すると、妙なゴーレムの車輪が回転し、再び突っ込んできた。
「面白い!! 神風流、『破城鉄槌』!!」
カグヤの両足を揃えたドロップキックがゴーレムの胸に直撃。
妙なゴーレムは吹っ飛び、地面を転がってバラバラになった。
なんか弱いな。青銅級か?
「終わり……って、弱っ」
「バラバラです……」
「なんだったんだ?」
首を傾げていると、俺たちの後ろから人が。
「あぁぁぁぁぁーーーっ!? ぼ、ボクのゴーレムぅぅぅっ!!」
変な男が、俺たちを無視してゴーレムの元へ。
見るも無残なゴーレムの残骸を拾い上げ、がっくりとしていた。
わけわからん……とりあえず、壊したのはカグヤだし、カグヤを見る。
「な、なによ」
「いや、壊したのお前だなーって思って」
「に、ニヤニヤしてんのムカつく!! その顔止めなさいよ!!」
「あっはっは。悪い悪い」
「ふ、二人とも喧嘩は……「こいつを壊したのはキミか!?」きゃっ!?」
突如、ゴーレムの残骸を投げ捨てカグヤに迫る男。
いきなりでビビった。カグヤに迫る男は、むむむと唸る。
「ボクの『試作44号』を破壊するなんて。今回のゴーレムはオリハルコンを含んだ合金で作ったのに、見るも無残にバラバラ……きみたちゴーレム持ってない? どうやって壊した……お、この具足……そうかキミの足で壊したのか!! そういえば噂になってたな、素手でゴーレムを破壊する冒険者……」
「ちょ、ちょっと近い……離れなさいよ!!」
「おっと失礼」
カグヤをジロジロ見ていた男は離れた。
ゴーレムの残骸など見向きもせず、俺たちを見る。
「見たところ冒険者だね? もしかして噂の『生身でゴーレムを破壊する冒険者』さん?」
「……まぁ、そんな感じだな」
「おおおお!! すごい、すごいぞ!! いやはや、自己紹介しなくては!! ボクはモルガン!! この先で『ゴーレム整備工場』を営んでるんだ!! よかったらお茶でもどう?」
「「「…………」」」
なんだこいつ……が、俺たち三人の感想だった。
ぼさぼさの髪、丸い眼鏡、無精ひげ、白衣、サンダル……怪しいな。
モルガンと名乗った技術者は、頭をぼりぼり掻きながら言う。
「お願いだ、ちょーっとだけお話させてくれ。きみたちを見てると何か掴めそうなんだ!! もうすぐ開催される『オリジナルゴーレム大会』に出すゴーレムの着想が浮かびそうなんだ!!」
「オリジナル、ゴーレム大会……ですか?」
あ、プリムが乗ってしまった。
モルガンはニンマリ笑い、大きくうなずく。
「そうなんだ!! この大会で成績上位になれば『ゴーレム・エンタープライズ』が主催で、パープルアメジスト王国で開催される本選に出れるんだ!! そこでいい成績を残せば、オリジナルゴーレムを販売することができる!! 技術者の夢の大会なんだ!!」
説明ありがとう……なんか面白そうだな。
「実は、ちょっと悩んでてね……でも、キミの美しい脚を見ていたら何か浮かびかけた!! 頼む、少し話をしてほしい!!」
「う、美しい脚……ふーん、わかってんじゃん」
カグヤが上機嫌に……こいつも載せられてる。
まぁ、面白そうだしいいか。
「プリム、いいか?」
「はい。わたしは構いません」
「カグヤは?」
「アタシもいいわ。足を褒める奴に悪いのはいない」
「おお、じゃあ!!」
「少しだけな」
「やったー!!」
モルガンは馬鹿みたいにジャンプして喜ぶ……そんなに嬉しいのか。
「じゃあこっちに。ボクの工房へ案内しまっす!!」
モルガンは、ゴーレムの残骸をかき集めて歩きだした。
オリジナルゴーレムの大会か。せっかくだし見物していくか。