表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第九章・からくりの王国パープルアメジスト
196/395

工業都市エルモア

 ユポポから出発して数日。

 俺たちの旅は、のんびりゆったり続いていた。

 俺の定位置となった馬車の屋根で寝転がり、大きな欠伸をする。


「ふぁぁ~~~……天気いいわぁ」

「神風流、『流星杭』!!」


 ズドン!!と、野良ゴーレムが吹っ飛ぶ音がした。

 視線を向けると、カグヤが野良ゴーレム相手に戦っている。

 工業都市エルモアへ向かう途中、けっこうな数の野良ゴーレム(青銅級)に遭遇した。いちいち二人で戦うのも面倒なので、交互に戦っている。

 最初こそ驚いていた御者のアイシェラも、野良ゴーレムの出現に慣れていた。


「野良ゴーレム、けっこうな数が潜んでいるな……工業都市エルモアが近いことが関係しているのか?」

「知らね~……なぁアイシェラ、いつ到着するんだ?」

「あと数日だ。我慢しろ」

「ああ。何もない街道って暇だなぁ……行商人でもいないかね」

「確かに、それは私も思う」

「神風流、『凪打ち』!!───おしまいっ!!」


 あ、全部のゴーレムが破壊された。

 カグヤはバラバラになったゴーレムを踏んづけ、勝利のポーズをとっている。


「お~い、終わったならさっさと来いよ」

「うるさいわね。ちょっとくらいいいじゃん」


 ゴーレムのパーツは放置。

 ゴーレムマスターなら回収し、売却。それか修理して無人ゴーレムとして販売とかになるんだけど、俺たちは興味がなかった。

 カグヤを馬車に載せ、エルモアに向けて馬車は進む。


 ◇◇◇◇◇◇


 数日後……高台からついに見えた。

 壁に囲まれた大きな都市だ。煙突がいっぱいあり、大きな建物がたくさん並んでいる。

 工業都市エルモア。ゴーレムの部品製造のために作られた町。

 俺たちもテンションが上がってきた。


「見ろよ、ようやく到着だ!!」

「おっきいですぅ~……あれが工業都市エルモア」

「お嬢様、屋根の上は危ないので私の隣に!!」

「いやでーす」

「アイシェラ、早く行きなさいよ早く!!」

「やかましい連中にゃん……」


 屋根の上から俺とプリムとカグヤ、馬車の窓からクロネとシラヌイ、手綱を握るアイシェラがギャーギャー騒ぐ。

 ようやく見えた都市に、テンションが上がっていた。


「まずは宿の確保。それから買い出しだ。馬も休ませなければ……」

「なんでもいいから早く行こうぜ!!」

「馬鹿者。補給が優先だ。観光は明日にでもできるだろう? 馬車の点検もしなければならないし、やることは山積みだ」

「えぇ~……」

「はぁ……馬車は私が点検する。お前はお嬢様を連れて買い出しに行け」

 

 なんと、アイシェラが優しいことを言う。

 てっきり、また変態的なことを言ってプリムを怒らせるかと思ったのに。


「アイシェラ、いいの?」

「はい。どうかお気を付けて」

「アタシも行く!! フレア、プリム、おいしい物いっぱい食べましょ!!」

「いいね。腹減ったし……あ、アイシェラのぶんも買ってくるよ。クロネも行くだろ?」

「うちはいい。うちは情報集めしてくるにゃん」

『わん!!』

「ん……にゃに? あんたも行きたいの?」

『わぅぅ』

「わかった。じゃあ一緒に行くにゃん」


 意外にも、シラヌイはクロネと一緒に情報集めするみたいだ。

 俺、カグヤ、プリムが買い出し。

 アイシェラは馬車の点検。

 クロネとシラヌイが情報集めと、見事にばらけた。

 

 それから間もなく、工業都市エルモアの入口正門に到着した。

 身分証明書のチェックをして、積荷の確認……他領土から来た旅人には必ず行っているらしい。

 技術の漏洩ってやつが嫌みたいだ。めんどくせーのな。

 それが終わり、ようやくエルモアに入れた。


「「「おぉぉ~~~っ!!」」」


 俺、プリム、カグヤは揃って驚く。

 工業都市エルモア……建物がデカい。

 塔みたいな建物、横長の箱みたいな建物、半円形の建物がいっぱいあった。

 それ以外にも、普通の住宅や商店も並んでいる。道行く人は冒険者や商人で、作業着を着た男の人たちが並んで歩いてたり、白衣を着た研究員、ゴーレムの部品を積んだリヤカーや、ゴーレムそのものやゴーレムマスターが歩いていた。

 すると、馬車の窓を開けたクロネ。


「うち、情報集めしてくるにゃん。くふふ……全く知らない場所の情報集め、すっごく楽しみにゃん」

『わん!』


 そういって、クロネとシラヌイは馬車から飛び出し、ぴょんぴょんと住居の屋根に飛び乗り、あっという間に姿が見えなくなってしまった。

 その様子を見ていたカグヤは言う。


「あいつ、情報集めーとか言っておきながら、情報集めすること自体楽しんでない?」

「俺もそう思った。ま、別にいいだろ」

「あ、あはは……」

「お嬢様、宿はどちらにしましょう?」

「そうですね……こういう都市の場合、町の中心にいい宿屋が多く立ち並ぶものですが」

「では、中心街へ向かいます」


 アイシェラが手綱で白黒号を軽く叩くと、速度が上がった。

 それから間もなく中心街へ。

 プリムの言う通り、大きな宿屋が数件と冒険者ギルド、各種商店……そして、この中心街で最も大きな建物があった。


「でっかいなぁ……えーと、『ゴーレム・エンタープライズ』だって」

「確か、ゴーレムを作ってる会社だっけ?」

「ああ。そんなこと言ってたな」


 でっかい塔みたいな建物に看板がかかっており、そう書いてあった。

 大きいだけで特に興味はなかったので、厩舎付きの宿を探してチェックイン。

 大部屋一つと小部屋一つを借り、荷物を置いた。

 

「では、私は馬の世話と馬車の手入れを依頼してきます」

「うん、いってらっしゃい、アイシェラ」

「ああ、行ってくるよ……くふふ、将来こんな感じでお嬢様に送り出してもらいたい!!」

「さっさと行きなさーい♪」


 アイシェラはどこまでもアイシェラだった。

 さて、俺とカグヤとプリム……この三人だけって何気に初めてだな。


「えーと、買い出しだっけ?」

「はい!! じゃあさっそく行きましょう!!」

「テンション高いわねー、まぁアタシもワクワクしてきたけどっ」

「俺も。なぁなぁ、買い食いしようぜ」


 俺たち三人は、エルモアの町に繰り出した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』をいただけると嬉しいです
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ