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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第九章・からくりの王国パープルアメジスト
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次の町へ

 俺たちの馬車は、『工業都市エルモア』というゴーレムの部品やゴーレムの製造を行っている町へ向かっていた。

 工業都市エルモアは『ゴーレム・エンタープライズ』とかいう特級冒険者の経営する会社があり、ゴーレム製造工場もその会社の持ち物らしい。

 ユポポとは打って変わり、あまり観光に適した町ではないみたいだ。どちらかと言えば職人の町で、ゴーレム製造の技術を応用した武器防具や、最新式の小物や家具なんかも取り揃えているらしい。

 技術漏洩を防ぐために、他領土への持ち出しは厳禁だとか……厳しいね。

 そして、工業都市エルモアの目玉は、工場見学だ。


「ほんとは、パープルアメジスト王国にある『ゴーレム・ハイスクール』に通う生徒たちが職業見学をするために始めたのがきっかけにゃん。ゴーレムのパーツや製造過程を見て学び、組み立てに参加したり……ゴーレムマスターに欠かせないゴーレムの知識を磨くのが目的にゃん」

「そうなんですか……それって、一般の人も参加できるんですか?」

「いちおうは。工場受付で申し込みできるにゃん」

『わぅん』


 夜。野営の食事中にクロネが教えてくれた。

 俺はシラヌイに干し肉を食べさせながら聞いてみた。


「そこに行けば『黄金級(ゾディアック)』の情報もあるかなー」

「知らないにゃん。黄金級なんてもう関わりたくないにゃん」


 クロネは川で釣った魚を焼いてもぐもぐ食べていた。

 アイシェラは骨付き肉をかじりながら言う。


「ゴーレムか……戦力としては間違いなく最強だ。並みの冒険者では太刀打ちできないだろう。だが……敵になれば恐ろしい。感情のない相手ほどやりにくいものはない」


 これに、リンゴを一個丸かじりしているカグヤが言う。


「難しく考えなくてもいいわよ。敵なら蹴る、アタシはそれだけでいい」

「お気楽な奴だ……だが、それが正しいのかもしれないな」

「アイシェラ……」


 プリムが心配そうにアイシェラを見た、が……アイシェラはすぐに嫌らしい笑みを浮かべたのでプリムは心配を止めた。

 俺はユポポで買った犬用の櫛でシラヌイを梳く。


「はぁ~……それにしても、いろいろあったなぁ」

「なによ急に。オヤジ臭いわね」

「うっせ。なんだかんだで、けっこう冒険してきたよな」


 ホワイトパール王国の森でプリムたちと出会い、船に乗ってブルーサファイア王国へ、そしてレッドルビー王国にニーアを送りに行ってカグヤと出会い、イエロートパーズに行ってダンジョンに挑戦、そしてブラックオニキス王国で吸血鬼と戦って……今、こうしてパープルアメジストを冒険している。

 生き返ってから、俺の毎日は充実していた。


「さーて、そろそろ水浴びしよっと。プリムも行く?」

「はい!」

「よし。じゃあフレア、光ちょーだい」

「はいよ。『光球(デラセ)』」


 呪符で光球を造ってやる。

 カグヤはリンゴを完食し、芯をポイっと捨てた。

 アイシェラも「私も!」と言って水浴びに。クロネは行かなかった。


「お前は?」

「あとでいい」

『わぅぅ』

「お前も行くか? ほれ」


 シラヌイは、プリムたちを追って川へ。

 俺は武器の手入れをするため、ブレードと回転式を分解掃除する。

 最近、あまり出番がないけど、手入れはマメにやる。


「……あんた、けっこうマメにゃん。大雑把そうに見えて、武器に気を使ってるにゃん」

「当然だろ。先生も『装備はマメに手入れしろ』って言ってたからな」

「ふーん……じゃあ、うちもやる」

「ん」


 クロネもブレード型の短弓を分解し、掃除をする。

 俺が使ってる道具を借りるため、俺の隣にちょこんと座る。

 こうして近づくと、けっこう小さいな。


「なぁ、次の町の次はどんなところだ?」

「……パープルアメジスト王国に行くなら、小さい町をいくつか経由するだけにゃん。特に目ぼしい産業のない、ありきたりな町ばかり」

「ふーん。とりあえず、次の町を観光したら、冒険者ギルドで依頼受けながら進むか。そっちのが面白そうだ」

「……あんた、ほんとに面白いことばっかりにゃん」

「そりゃそうだろ。呪術師の村から出たことなかったし、楽しみは見逃さないぞ」

「…………言うか言わないか迷ったけど、聞く?」

「ん、なんだよ?」


 クロネは手早く分解、掃除を終え、短弓を装備した。

 そして、ネコミミをぴこっと動かし俺を見る。


「このパープルアメジスト……三大ダンジョンの一つ、『古代遺跡アメノオハバリ』があるにゃん」

「え、ダンジョン!? マジで!!」

「ん。あんたなら絶対行くって言うと思ったから言わなかったにゃん」

「なんでだよ、言えよ」

「だって、天使とか、ブラックオニキスに行くきっかけになったのもダンジョンだし……また何かあったら面倒にゃん」

「あ、そういうことか」

「うにゃっ!?」


 俺はクロネの頭を撫で、ネコミミを揉む。


「ふにゃぁ~……」

「大丈夫だって。もうあんなミスはしない。みんな俺が守ってやるからさ」

「にゃぁ……って、撫でんにゃ!! ネコミミ揉むにゃ!!」


 クロネは顔を赤くして俺から離れた。

 

「まったく……うちのネコミミと尻尾は敏感にゃん。あんまり触られると気持ちよくなっちゃうにゃん」

「気持ちいいならいいじゃん」

「よ、よくないにゃん!! 気持ちいいっていうのは……」

「ん?」

「……ああもう!! なんでもないにゃん!!」

「お、おお」

「水浴びしてくるにゃん!! まったくもう……」


 クロネは逃げるように川へ……変なやつ。

 それにしても、いいこと聞いた。


「ダンジョンかぁ……」


 また楽しみができた。

 へへ、これから先も、いっぱい楽しいことがあるといいな。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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