温泉郷ユポポはいいところ
冒険者ギルドで開かれた祝勝会は、それはそれは盛り上がった。
ギルド内が広いってのはいい。テーブルにはたくさんの料理が並び、集まった冒険者やゴーレムマスターたちが何度も乾杯を繰り返し、次々と出てくる料理はすぐに平らげてしまう。
俺たちは、英雄みたいな扱いを受けた。
一番大きな円卓に案内され、冒険者たちが何度も感謝の言葉をかけてきた。
さすがに何度もうっとおしい。カグヤがイライラしてきた辺りで、ママさんが来た。
「あんたらには感謝しかないよ。ユポポの恩人さね」
「いやいや。俺もカグヤも楽しんだからいいって。なぁ?」
「そーね。それよりさ、他の黄金級は? アタシ、他のも狩りたい」
ぶっそうな奴だな……プリムが苦笑してるぞ。
アイシェラはエールをがぶ飲みし俺を見ようとしない。どうも混浴で裸を見たのがまずかったようだ。
クロネは焼き魚を食べてご満悦だ。猫みたいで可愛い。
ママさんはエールをグイっと飲み欲し、俺に言う。
「報酬の件だが……」
「ん、そういやそんなのあったな」
「ああ。黄金級を仕留めたのはアンタらだ。素材も全てあんたらが所有する権利がある。回収した『キャンサー』と『タウルス』の素材を査定中だが、高純度オリハルコンだからけっこうな値段になる。ぶっちゃけ、このユポポの金庫じゃ足りなくてね、換金しようにもできないんだ……素材、そのまま持って帰ってパープルアメジスト王国で換金したほうがいいと思うが、どうだい?」
「え、いらねーよ。めんどくさい」
「そう言うと思ったよ……なら、うちのギルドで素材を預かって王都で換金してから渡してもいい。それだと二十日ほどかかるが、いいかい?」
「だからいらねーって。素材は全部やるよ」
「……それじゃあんたらはタダ働きだ。さすがにそれはギルドのプライドが許さない」
「めんどくせー……なぁ、素材は俺とカグヤのもんだよな?」
「そうだが……」
「よし、決めた」
俺は、ギルドの隅で飲んでいる三人……ケインとエミリーとアルコを見つけた。
軽く挨拶したら隅っこでチビチビ飲み始めたんだよな。こっちに来ればいいのに。
さっそく三人を呼ぶ。
「あ、あの……何か?」
「約束してたからな。黄金級の素材やるって」
ケインがちょっとビクビクしていた。
俺の言葉が理解できないのか、首を傾げている。
俺は、ママさんに言った。
「ママさん、ケインたち三人に黄金級の素材あげてくれ。それと、残った素材はここにいる連中で分け合ってくれ。みんな、壊れたゴーレムとか修理しなきゃだろ?」
「だから、それじゃあんたらの報酬が」
「じゃあさ、ユポポのお土産くれよ。明日には出発するからさ、馬車で食べれそうなお菓子とか」
「…………マジかい?」
「マジ。いいよなカグヤ?」
「アタシはいい。つーか金も黄金級の素材も興味ない。どうせなら黄金級の情報ない?」
「プリム、アイシェラ、クロネもいいか?」
「はい。わたしは構いません!」
「お嬢様が言うなら私もかまわん」
「うち、お魚いっぱい食べれて満足にゃん!」
みんな問題ないようだった。
ママさんはため息を吐き、ケインたちは「お、黄金級の素材?」とか呟いて首を傾げている。
「わかったよ。ったく……黄金級の素材は全てユポポに寄付、キャンサー討伐に関わった冒険者とゴーレムマスターで分配でいいんだね?」
「うん。それでいい」
「やれやれ……」
とりあえず、ユポポでの戦いは終わり、次の町に向けて出発する。
◇◇◇◇◇◇
次の日。
俺たちはユポポから次の町へ出発する。
宿屋の前には馬車が。アイシェラが馬をブラッシングし、シラヌイが尻尾を振りながら様子を見ていた。
宿屋の前には、ママさんとケインたちが見送りに来てくれた。
「次は工業都市エルモアかい。厄介なことに巻き込まれないよう気を付けな」
「わかった。まぁ、売られた喧嘩は買うけどな」
「「「うっ……」」」
ケイン、エミリー、アルコは渋い顔をする。
カグヤはニヤニヤし、プリムはくすっと笑う。
すると、ケインが一歩前に出た。
「フレアさん。黄金級の素材、ありがとうございました」
「うん。かっこいいゴーレム作れよ。いつか機会あったら見せてくれ」
「はい。必ず」
ケインと握手。
エミリーとアルコとも握手した。
カグヤとプリムも握手し、アイシェラが俺たちを呼ぶ。
「準備ができた。行くぞ」
アイシェラが御者席に座ると、シラヌイが馬車の屋根に飛び乗る。
プリムとカグヤも乗り込み、俺はもう一度挨拶した。
「ママさん、みんな。また温泉入りに来るよ」
「ああ。その時はまた飲もう。ふふ、お前さんの武勇伝、聞かせておくれ」
「本当に、ありがとうございました!」
「この恩は忘れません!」
「また……お元気で」
俺は軽く手を振り、馬車の屋根に飛び乗った。
馬車はゆっくり走り出し、ユポポの北門を抜ける……すると、クロネがどこからともなく現れ、屋根の上に飛び乗った。
「どこ行ってたんだ?」
「周囲を警戒してただけにゃん」
「アタシとフレアがいるから平気よ?」
「昔からの癖みたいなものにゃん。気にしなくていいにゃん」
そう言って、クロネは馬車の中へ。
残された俺とカグヤは、遠ざかる温泉郷ユポポを見た。
「温泉、気持ちよかったなぁ」
「そうねぇ~……また来ましょ」
「ああ」
次は、ゴーレムの町エルモア。
カグヤは黄金級が出ないかと楽しみにしてるけど……俺は楽しく観光したい。




