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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第八章・温泉とゴーレム

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BOSS・黄金級鉄機最終形態『タウルス・エボル』

 巨大な拳を持つ『タウルス』の最終形態がカグヤの相手。

 タウルスは巨大な拳をカグヤめがけて振り下ろす。カグヤはそれを真っ向から受けるべく、身体を回転させた斜め蹴りを繰り出した。


「だりゃぁぁぁぁぁぁっ!!」


 カグヤの蹴りとタウルスの拳が正面から激突した。

 轟音が響き衝撃が相殺───とはいかなかった。

 カグヤが顔を歪め、自分の足からビシビシと亀裂が入るような音が聞こえた。


「いっ───っが、あぁぁっ!?」


 カグヤが押し負け、吹っ飛ばされた。

 地面を転がり、右足を確認───どうやら骨が折れているようだ。

 だが、カグヤは一瞬で足を復元する。


「あ、アタシが押し負けるなんて……なんつー拳してんのよ……っ」


 カグヤの能力は『神脚』。

 自分の足に限り、なんでもできる。伸ばしたり巨大化させたり重量を増やしたり……当然、折れたり千切れたりしても治る。その場合、痛みはあるが。

 カグヤは構え、タウルスを見る。


「この、人みたいなウシ……さっすが黄金級。アタシが蹴りで撃ち負けるなんて初めてかも」


 ずんぐりむっくりした体躯。丸太のような腕。右拳は巨大で、左手は鉄球になっている。

 巨大な緑色の牡牛形態とは違う、純粋な対人用ゴーレムだった。

 すると、タウルスは───左手の鉄球をカグヤに向けて射出した。


「うわわっ!?」


 鉄球はオリハルコン製のチェーンで繋がっている。

 カグヤが避けると同時に腕を引き軌道を変える。

 さらに、引きもどした鉄球を頭上でブンブン廻し、カグヤめがけて振り下ろしてきた。


「くっ……神風流───」


 技を出そうとしたがキャンセル。

 カグヤは後ろに跳躍───鉄球が大地を割り、揺らした。


「あっ、がっ!?」


 大地を割った鉄球。

 飛び散った小石がカグヤの身体を傷つける。

 痛みはあったが、この程度で怯むカグヤではない。鉄球が地面にめり込んでいることを確認した。


「裏神風流───」


 『神脚』を発動。

 ダッシュ力強化───速度を上げタウルスへ接近。

 ジャンプ力強化───タウルスに向かって飛ぶ。

 脚部硬化、オリハルコン製具足形状変化───ドロップキックの構えを取る。

 重量増加───飛んだ勢いに合わせ、両足の重量を一気に増やした。


「『破城鉄槌(はじょうてっつい)』!!」


 カグヤのドロップキックが、タウルスの胸元に突き刺さる。

 タウルスの巨体が揺れたが、倒れない。

 だが、衝撃は伝わった。タウルスの動きが止まったのだ。


「勝機!!」


 カグヤは連続蹴りをタウルスに叩き込む。

 足の重量を増やし、一撃一撃を重くする。並みのゴーレムなら一撃で破壊できる威力の蹴りを、タウルスのボディに叩きこむ。

 

「だりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 さすがのタウルスも、カグヤの猛攻に腕が動かなかった。

 だが、チェーンが一気に巻き戻り、鉄球が左手に戻る。

 そして、巨大な拳と鉄球を使い、カグヤを叩き殺そうとする。

 だが、カグヤはその動きを読んでいた。


「これだけ接近すればその腕、振り回すくらいしかできないでしょ!? 躱すのなんて楽勝なんだからっ!!」


 カグヤは連蹴りをボディに叩きこむ。

 タウルスはカグヤを掴もうと両手で抱え込もうとするが、カグヤはタウルスの両手から逃れるように後ろ向きに跳躍。サマーソルトキックを顎に叩きこむ。


「神風流、『円影蹴(えんえいげ)り』!!」


 ガギン!!と顎が跳ね上がり、タウルスの頭がガクガク揺れる。

 カグヤは、この瞬間に勝機を見た。


「行くわよ!! 裏神風流『双狼』奥義!! 『狼王(ろうおう)牙狼牙(がろうが)』!!」


 カグヤは跳躍する。

 すると、両足が膝上から千切れた。

 千切れたオリハルコン製具足を纏った足が形状を変え、脚が生え、狼のような顔が作られ……二匹のオリハルコン製狼がカグヤと着地した。

 カグヤの両足は銀色の素足になっている。


「行きなさい、牙狼(ガロウ)狼牙(ロウガ)、あのウシに喰らいつけ!!」


 二匹のオリハルコン狼はタウルスに向かって走り、喰らい付く。

 バキバキとオリハルコンの牙がタウルスの身体を傷つける。

 そして、カグヤはとどめの一撃を繰り出した。


「これで───終わり!!」


 カグヤは走り出し───跳躍。

 捻りを加えた跳躍。カグヤは空中で高速回転し、タウルスに向かって飛び蹴りをした。


「神風流第二奥義!! 『竜巻(たつまき)爛々梟(らんらんふくろう)』!!」


 回転によって威力を増した蹴りが、タウルスの胸に突き刺さり貫通───タウルスが完全に機能停止し、そのままズズンと後ろに倒れた。

 カグヤは息を荒くしながらオリハルコン狼を足に戻し、勝利宣言した。


「アタシの勝ち!!」


 ◇◇◇◇◇◇


 一方そのころ、キャンプ地───。


「ぐあぁぁぁぁっ!?」

「なんだこのカニ、やべぇぞ!?」

「か、硬いっ!!」


 冒険者たちは、必死に子蟹と戦っていた。

 その中に、アイシェラもいる。子蟹を相手に剣を振っているが、ボディが鉄製なので効果が薄い。

 一人、また一人と子蟹にやられては倒れていく。


「やばいにゃん……もう、逃げるしか……」

「馬鹿を言うな!!……っく」


 子蟹は三十体ほどに増えている。

 味方は子蟹にやられ、大怪我で苦しんでいる者ばかり。

 プリムは大汗をかきながら『神癒』を行使していた。


「お嬢様……私は、絶対に守ります!!」


 味方が倒れ───残りは、アイシェラとクロネだけ。

 子蟹は怪我人に見向きもせず、アイシェラとクロネを狙って来た。

 おそらく、生物の無力化という命令を受けているのだろう。動かなくなれば無視だ。

 

「…………っく」

「もう、駄目にゃん……」

「お嬢様……」


 アイシェラとクロネは、迫りくる子蟹を眺めながら、己の無力さをかみしめる。

 このまま、自分たちも、プリムもやられ……子蟹はユポポを襲う。

 村は間違いなく、壊滅す───。


「あー、ちょっと失礼」

「「え」」

「ふむ。カニとは……ははは、いやぁカニといえばカニ鍋かねぇ」


 諦めかけた瞬間、どこからともなく一人の男が現れた。

 編み笠を被った僧侶だった。

 歳は七十を超えていた。

 腹がでっぷりと出ており、長い髭を生やしていた。


「だ、誰だ!? ここは危険だ、逃げ」

「まぁまぁ、ここはわしに任せんしゃい。ほれほれお嬢さん方、下がって下がって」

「ちょ、後ろ!!」


 初老男性の後ろにいた子蟹が、男性の腕を挟もうと飛び掛かってきた。

 だが、男性はその子蟹をひょいっと掴むと、頭上でクルクル回す。


「ほれほれー」


 くるくる、くるくる───回転は勢いを増し、とんでもない速度になる。

 そして、初老男性はそのまま子蟹を地面に叩きつけた。


「錦流拳法、『円旋落(えんせんお)とし』……ほほほ、回転は無限の力じゃ」


 ドッパァン!!と、回転の力を加えて叩きつけらた子蟹は木端微塵に。

 初老男性は編み笠を外し、首をコキコキ鳴らした。


「さてさて、わしは僧。命を奪うことを良しとはせんが……命なき鉄の塊なら話は別じゃ。たまたま通りかかったのがわしでよかったなぁ?」


 突如として現れた特級冒険者序列1位『覇王拳』メテオ・ブルトガング爺さんは、たった一人で向かってくる子蟹を殲滅した。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
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