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BOSS・黄金級鉄機最終形態『キャンサー・エボル』

 キャンプ地でまったりしていたプリムとアイシェラ。そして、戻ってきたクロネ。

 このキャンプには医療班とその護衛として十名ほどの冒険者がいる。プリムは治療のお手伝い、アイシェラはその護衛だ。

 戻ってきたクロネは木の上で昼寝を始めた……が、しばらくすると大変なことになった。


「……にゃん? 何か……来る?」


 木の上で寝ていたクロネのネコミミがぴくっと動く。

 そして、妙な気配のする方向をじーっと見て……愕然とした。


「にゃ……にゃんだこれ!? たた、大変にゃん!! 『カニ』が襲ってくるにゃん!!」


 クロネは木から飛び降り、アイシェラとプリム、そして冒険者たちに言う。

 だが、全員が「?」という表情だ。それもそのはず……『カニ』って『蟹』? こんな平原で?

 アイシェラは胡散臭そうに言う。


「貴様、カニが食べたいのか?」

「ちっがうにゃん!! カニ、小さいカニのゴーレムがこっち来てるにゃん!!」

「……なんだと?」

「狙いはどう考えてもここにゃん!! 本体に何かあったのかも……とにかく、逃げないと!!」

「待ってください!!」


 すると、プリムが言う。


「この先にはユポポの村があります。そのカニさんがどういうゴーレムなのか知りませんが……ここから先に行かせるわけにはいきません」

「じゃ、じゃあどうすんにゃ!! このままじゃ」

「戦います……私たちで」

「え」


 プリムは、医療班と護衛を集めた……たった十人しかいない。

 対して、こちらに向かっている子蟹は二十以上。戦力的にはかなり厳しい。

 冒険者たちは全員がD級以上だが、後方支援専門が殆どだ。

 そのうちの一人が言う。


「お、おい。ゴーレムが向かってるって……オレらじゃどうしようもねぇぞ」

「そ、そうよ。あたしは攻撃魔法なんて少ししか使えないし……」

「け、怪我の手当てだけって聞いてるぞ」


 冒険者たちはオドオドしていた。

 プリムは、アイシェラに言う。


「アイシェラ、どうにかできる?」

「……大丈夫です。ここからは私にお任せを」


 アイシェラは剣を抜き、冒険者たちに言った。


「武器を使える者は前へ。魔法使いは援護を頼む」

「だ、だから、少ししか」

「その少しが必要だ。いいか、どういう状況なのかさっぱりだが……ここにゴーレムが向かっている。そのゴーレムは敵である可能性が非常に高い。この先を抜けられるとユポポに行く。ということは……私たちで止めるしかないということだ」

「そ、そんな……」


 アイシェラは女性冒険者に言う。


「少しでいい。援護を任せるぞ」

「……わかった」

「お前たちもだ。それに、怪我をしても大丈夫。お嬢様の能力で治療可能だ」

「任せてください!!」

「クロネ、お前はお嬢様の護衛と援護を頼む」

「……はぁ~、わかったにゃん」


 アイシェラは即興で組み分けをし、子蟹たちが向かってくるのを視認……武器を構えて叫んだ。


「いいか、ここで足止めをするぞ!!」


 アイシェラを中心とした防衛部隊が、キャンサーの子蟹と戦いを始めた。


 ◇◇◇◇◇◇


 黄金級ゴーレム、キャンサー。

 でっかいカニの殻が剥けたら、なんとヒト型のゴーレムが出てきました。

 俺は構え、様子をうかがう。

 身長は二メートルない。両手がカニのハサミのようになっていて、身体はオレンジの女性用全身鎧を着ているような姿。

 顔は見えない。でも……不気味な黄色い目がキラリと光った。


「ヒト型なら呪闘流の技が使える。さぁ、ぶっ壊してやる!!」


 俺はキャンサーに向けて接近───すると、キャンサーが右のハサミをガパッと開き、俺に向かって飛ばしてきた。

 ハサミと手首はワイヤーで繋がれている。それに、ハサミからは火が噴き推進力となっている。

 だが───この程度。


「流の型、『漣』」


 飛んでくるハサミを引き付けて躱し、ハサミの外側を叩いて地面に落下させる。

 その隙に急接近───拳の射程内。

 だが、キャンサーの手はもう一本ある。

 左のハサミを開き───いや、ハサミが高速で開閉し、振動していた。


「───で?」


 右のハサミが一気に巻き戻り、左のハサミで俺の首を切断しようとしている。

 だが……その程度、俺に躱せないはずがない。


「おらぁっ!!」


 左のハサミを躱し、ボディに一撃。

 右手が戻り、そのまま突き出してきたので懐に潜り込み、肘鉄をかました。

 だが───やっぱり硬ぇ!!


「いっでぇ!? ちくしょう、このオリハルコン野郎め!!」


 キャンサーのボディには傷一つ付いていない。

 甲の型『四肢鉄塊』で拳や足を固めても駄目だ。青銅級や白銀級とは硬さの次元が違った。

 でも……俺はひたすら殴る。

 キャンサーのハサミの動きは完全に読めた。俺がキャンサーから離れないのでキャンサーもハサミで攻撃するしかない。

 キャンサーのボディに俺の拳が突き刺さるがダメージゼロ。

 キャンサーのハサミは俺にかすりもせずダメージゼロ。

 つまり、互いに意味のない攻撃を繰り返していた。

 でも……俺はやってみたかった。


「オリハルコン!! はは、俺の拳で壊してみせる!!」

『───』

「滅の型、『百花繚乱』!!」


 顔面だけを狙った拳がキャンサーの顔面に突き刺さる。そして、両手で顔を掴み飛び膝蹴りで顔面を潰す……が、効かない。

 キャンサーが両手のハサミを高速振動させ、俺をチョンパしようとする。


「流の型、『流転掌』───」


 敢えて、全て受ける。

 突き、薙ぎ、挟み、振り下ろし───まっすぐで狂いのないキャンサーの技を全て受ける。

 こいつ、感情もないし喋らないし疲れないから攻撃が読みにくい。

 受けに回るとけっこう大変───でも、いい。

 面白い。だからこそ……真正面から受け止めたい。


「ふぅぅ~~~───っ!!」


 呼吸を整え、構えを取る。

 この技は、呼吸を整えないと使えない。

 最も習得に苦労した技───。


『───』

「むっ」


 キャンサーのハサミが、俺の左腕を切断しようと挟み込む。

 そして、超振動する両刃が閉じ、俺の左手を切断───。


『───!?』


 キャンサーのハサミが、俺の腕を切断(・・・・・・)することはなかった(・・・・・・・・・)

 そして、オリハルコン製のハサミがピキリと欠けた音が響く。

 俺はニヤリと笑い、キャンサーに告げる。


「甲の型『(きわみ)』───『金剛夜叉(こんごうやしゃ)』」


 俺の皮膚が、褐色に変わっていた。

 甲の型『極』である『金剛夜叉』は、全身に『鉄丸』をかけた状態で自在に動ける技だ。

 だが、これには多大な集中力を必要とする。

 呪闘流最硬度の技であり、どんな攻撃でも防御できるが習得も最も難しい。現に、四大行の『極』で最後に習得した技でもあった。


「はっきり言う。『金剛夜叉』の硬さは───オリハルコンなんて目じゃねぇぞ!!」


 俺はキャンサーのハサミを掴み、右手を手刀にして腕の付け根に振り下ろした。


「だらぁっしゃ!!」

『───!!』


 バギャン!! と、キャンサーの左手が破壊された。

 片手を失い体勢が崩れるキャンサーの右側に回り込み、右腕を掴んで関節に肘を落とす。

 腕は再び破壊され、キャンサーの武器はなくなった。


『───』

「ったく、なんか言えよ……まぁ、これで終わりだけどな!!」


 とどめ───最後は格の違いを見せつけてやる。

 俺は『金剛夜叉』を解除。右手に魔神器『火乃加具土』を装備し、炎を燃やす。


「最後は、俺の『ゴーレム』で倒してやる。魔神顕現(オーバードライブ)!!」


 魔神器が燃え上がり、俺の隣には炎に包まれる全身鎧がいた。

 

「『火乃加具土・煉獄絶甲(れんごくぜっこう)』……へへ、さしずめ炎のゴーレムだ」


 俺は手をキャンサーに向ける。


「第一地獄炎極限奥義!! 『真・灼熱魔神拳』!!」


 煉獄絶甲の拳が、キャンサーを粉々にし炎上……パーツも全て溶解した。

 

「よし、俺の勝ち!!」


 黄金ゴーレム・キャンサーは消滅した。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
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