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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第八章・温泉とゴーレム

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BOSS・黄金級鉄機『蟹座』キャンサー・ノウヴァ②

 オレンジ色のデカいカニ。

 黄金級ゴーレム・キャンサーは、カニのくせに前に向かってシャカシャカ歩いてきた。

 前歩きするデカいカニって正直気持ち悪い。


「お先っ!!」

「あ、待てこらっ!!」

『待つのはお前たちだよ!! 不用意に飛び込むな!!』


 カグヤ、俺、ゴーレムを纏ったママさんが飛び出す。

 速度はカグヤが一番早い。

 シャカシャカ歩きをするキャンサーに向かって跳躍し、強烈な前蹴りを放った。

 俺も負けじと加速し、キャンサーの腹にむかって拳を叩き込む。


「神風流、『流星杭』!!」

「甲の型、『捻打厳』!!」


 カグヤの飛び蹴りと俺の拳がキャンサーにヒット───した。

 だが、キャンサーは吹っ飛ばない。六本の脚が地面に食い込み、衝撃を流したのだ。

 ママさんが叫ぶ。


『黄金級ゴーレムは耐衝撃・耐魔法オリハルコン合金だ!! 生半可な攻撃は吸収される!!』

「はぁ!? そんなのどうしろってんのよ!!」

『衝撃の吸収限界まで叩くしかない!!───来るぞ!!』

「カグヤ!!」


 俺は叫び、カグヤと一緒に背後へ飛んだ。

 同時に、俺とカグヤのいた位置に巨大な『鋏』が突き刺さる……なんとキャンサーの鋏、関節部分が伸びるようで。

 キャンサーの『鋏』が伸び、鞭のようにブンブンしなる。

 ママさんが離れた場所からガトリング砲を撃った。なんとママさんの突撃槍、ガトリング砲が内蔵されているらしい。


『ちぃぃっ!! お前ら、鋏を躱しつつ攻撃を加えろ!! オリハルコンの耐久限界まで攻撃し続けるんだよ!!』

「「了解っ!!」」


 俺はカグヤと目配せする。


「とにかくブッ叩くしかないな」

「そうね。ってか、オリハルコン硬っ」

「だなぁ……ま、こんなデカいゴーレムと戦えるのもいい経験だ。いくぞ」

「仕切んなっての……じゃ、行くわよ!!」


 飛び出したカグヤ。

 鋏を躱しつつ懐に潜り、蹴り技を浴びせている。

 俺は呼吸を整え、両手の五指をゆっくりと固めた。


「甲の型、『四肢鉄塊』……よし、やるか」


 この拳でゴーレムをぶっ壊す。へへ……やってやるよ。


 ◇◇◇◇◇◇


 キャンサーのメイン武装は両手の鋏。

 片方の鋏は切れ味重視、もう片方の鋏は圧迫重視で、最長三十メートルほどのオリハルコン製ワイヤーだ。カグヤが切断を試みたが上手くいかなかった。


「ったく、硬いわね!!」

「……このままじゃじり貧だな」


 フレアも、炎を纏わせた拳や呪闘流の技でキャンサーを叩くが効果は薄い。

 キャンサーもだが、ここに来てフレアの興味は別のところにあった。


「オリハルコン……地獄炎でも燃えにくい物質か」

『そりゃそうだ。これは天の神が作りだした鉱石だからな』

「や、焼き鳥!? 久しぶりじゃん!!」


 フレアの右腕に『火乃加具土』の籠手が現れ、第一地獄炎の魔王『火乃加具土』が語りかけてきた。

 こうして話すことは久しぶりのフレアは、キャンサーの鋏を躱しつつ聞く。


「天の神って?」

『天使たちの神だ。他にも堕天使の神、黒天使の神と三柱いる。ま、オレらと同類だね』

「その神が生み出した鉱石が、オリハルコン?」

『ああ。さすが神の鉱物……でも、オレらの炎で燃やせるぜ。できねぇのはおめぇがヘボいからだ』

「は、はっきり言うな……でも、負ける気はない」

『はいよ。じゃあオレは寝る……おやすみ』


 火乃加具土が消え、魔王の声も消えた。

 天の神・三柱。地獄炎の魔王と同類の存在。

 そんなことよりも、フレアはオリハルコンと目の前のキャンサーが大事だった。

 紙一重でキャンサーの鋏を躱し、拳を叩き込んでいく。

 すると───。


『───来たね!! あんたら、ここは任せる!! すぐに援護してやる!!』


 ママさんが後退した。

 フレアは一瞬だけ振り返り納得───増援部隊が到着したのだ。

 総勢二十体ほどのゴーレムと冒険者たち。

 ママさんが迅速に指揮を執り、ガトリング砲をキャンサーに向ける。


『いいかい、あの子たちに当てるんじゃないよ!! 撃て───っ!!』


 ゴーレムたちのガトリング砲が火を噴き、キャンサーに命中した。

 恐るべき弾幕に、さすがのフレアとカグヤも一時離脱。

 鉛の弾丸とオリハルコンの装甲がぶつかる音に、カグヤは耳をふさいだ。


「う、うるさぁっ!?」

「よーし俺も!!」


 フレアは回転式を抜き、キャンサーに向かって引金を引く……が、どう見ても意味がない。

 そして、キャンサーが一歩、また一歩と後退を始めた。

 弾切れになったゴーレム。すると、弾幕が消えたのでフレアたちが攻撃を再開。

 魔法使いが魔法で銃身を冷やし、冒険者がゴーレムマスターと一緒に銃弾を込める。


「神風流、『烈刺剣山(れっしけんざん)』!!」

「滅の型、『轟乱打』!!」


 カグヤの連蹴り、フレアの連打がキャンサーのボディに突き刺さる。

 キャンサーがゆるりと後退……戦況は間違いなく有利だった。


 いや───有利に見えていた。


 ◇◇◇◇◇◇

 

「ん……?」

「え……?」


 間違いなく、俺たちが押していた。

 ゴーレムマスターたちによるガトリング砲の一斉射撃、俺とカグヤの攻撃。

 キャンサーはゆっくり後退し、二本の鋏を収納した。

 前傾姿勢でピクリとも動かなくなり、俺とカグヤの攻撃は止まった。


「あれ、壊れたのかな?」

「動かねーな?」

 

 もしかして勝った?───なーんて考えたのも束の間。

 

 ───ガシャン!!


「え」

「は?」


 キャンサーの腹部分が開いた。

 まるでドアのように開き、スロープがウィーンと下りてくる。

 猛烈に嫌な予感がした。ま、まさか……?


『脅威度大。対処法変更。【キャンサー・マイナー】射出します』


 次の瞬間───キャンサーの腹から、全長二十センチほどの『子蟹』がワラワラと現れた。

 

「なっ……なんだこれ!?」

「知らないわよ!!」


 子蟹は十や二十、百や二百じゃ利かない。

 千、二千……数えるのがアホらしくなる数だ。

 大きさはそれほどでもない。形はまんまキャンサーの縮小版で、鋏もしっかり付いている。

 だが、動きはキャンサー本体より速い。


「きゃぁっ!?」

「カグヤ!! のわぁっ!?」


 カグヤの背中に子蟹が張り付いた。

 俺の背中、足、腕にもくっついた。そして、鋏で切りつけようとしてくる。


「舐めんじゃねぇぞゴラァァァッ!!」


 俺は自らの身体を第一地獄炎で一気に燃やす。すると子蟹が一瞬で燃えた。

 どうやらオリハルコン製ではない。通常の金属だ。


「カグヤ!! このっ!!」

「いたたたた、痛いって!! いったい!!」


 カグヤの身体に張り付いていた子蟹を叩き落した。

 でも、まだまだ子蟹……待てよ。


「しまった!!」


 俺が振り返ると、やはり───ゴーレムマスターたちとママさんが子蟹の猛攻を受けていた。

 冒険者たちは己の武器で子蟹を叩き、ゴーレムも近接武器に持ち替え子蟹を叩き潰している。でも、子蟹の数があまりにも圧倒的だった。

 俺とカグヤの周りにも子蟹が集まっている。


「このこのこのっ!! ああもう子蟹めっ!!」

「よし。第三地獄炎【泥々深淵】───『闇沼』!!」


 俺とカグヤの周囲に黄色の炎を展開。大地を泥化、底なし沼にした。

 子蟹は一気に沈む。キャンサーを見ると、未だに子蟹を吐きだしていた。

 カグヤは後ろを見て叫ぶ。


「どうする!? あっち、けっこうヤバいかも!!」

「くそ。『闇沼』をあっちまで広げるか……ダメだ。あんまり広げ過ぎると味方も巻き込んじまう」

「やっぱり、キャンサーを……」

「待て、今は子蟹を何とかしないと、あっちが全滅だ!!」

「じゃあアタシが行く!! キャンサーをぶっ飛ばして子蟹を」

「あの装甲を壊せないと無理だっての!!」

「っく……」


 キャンサーを泥沼に引きずり込もうと考えたがやめた。子蟹は俺たちを避けるようにママさんたちに向かっている。地面を泥化するまえに逃げられるだろう。

 なら、これしかないな。


「とりあえず───子蟹をなんとかするか」

「で、できるの?」

「ああ。それなら問題ない」


 俺の左手に『大地の爪(テラ・ペ・ウェイン)』が装着される。

 

「黄昏の世界より来たりし我が炎。第三地獄炎の覇獣『ガイア』よ」


 俺は大地に魔神器の爪を深々と差し込む。

 泥沼が消え、周囲を黄色い炎が包み込み、一気に黄色い世界が広がった。


「第三地獄炎『大地の爪(テラ・ペ・ウェイン)土竜登場(オーバードライブ)!! 『パンデミック・ガイア・スタンピード』!!」


 黄色い炎が一気に大地を燃やし尽くし───消えた。

 カグヤは周囲をキョロキョロ見渡す。

 

「……え? あれ、終わり?」

「アホ。これからだって……見てろ」


 びし、びし、びし……と、周囲一帯の大地に亀裂が入る。

 それは、ママさん率いるゴーレム部隊や冒険者たちの立っている地面でも同じだった。


「な、なんだ!?」「地面が……」

「な、なにかいるぞ!!」「きゃぁぁっ!?」


 子蟹たちも、亀裂の入る大地に脚を取られてバランスを崩す。

 そして───それは現れた。


『もぐ!』『もぐ!』『もぐ!』『もぐ!』

「「「「「「「「「「「「…………え?」」」」」」」」」」

『もぐ!』『もぐ!』『もぐ!』『もぐ!』

『もぐ!』『もぐ!』『もぐ!』『もぐ!』


 地面から現れたのは───黄色い体毛のモグラ。

 それも、一匹二匹じゃない。百、千……それ以上。

 黄色いモグラが、大地を突き破って現れた。


『もぐ!』

「よしよし。いいか、あの子蟹をみんなで食べてくれ。よろしく」

『もぐ!』

「なにこれ可愛い───っ!! 抱っこ抱っこ!!」

『もぐ!』


 フレアは足下のモグラに命令し、カグヤはモグラを抱っこした。

 フレアはモグラを撫で───言った。


「全員、食え」

『もぐ!』『もぐ!』『もぐ!』『もぐ!』

『もぐ!』『もぐ!』『もぐ!』『もぐ!』

『もぐ!』『もぐ!』『もぐ!』『もぐ!』


 数千匹のモグラたちが大地を覆いつくし、子蟹を貪り始めた。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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