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温泉郷ユポポとゴーレム⑦/黄金級ゴーレム

 プリムたちと合流し、やってきたのは鍋物屋。

 大きな土鍋には野菜や魚肉がいっぱい煮込まれており、いい香りがする。

 ぐつぐつ煮える鍋を五人で囲む……ちなみにシラヌイは外で留守番だ。自由に散歩していいって伝えたけど、店の前で丸くなってすやすや寝てる。

 今日の依頼の報告をすると、アイシェラは野菜をいっぱい取り皿に分け、なぜか俺に差し出した。


「なるほど。無事に源泉周辺のゴーレムを破壊した矢先に、次の野良ゴーレム退治か」

「ああ。って……おい、肉と魚も入れろよ」


 アイシェラはにっこり笑うだけ……この野郎。

 カグヤは肉をハフハフ食べながら言う。


黄金級(ゾディアック)ゴーレム、えっと……キャンサーだっけ? あふっ、うまっ……んっぐ。冒険者を招集して、討伐しに行くんだってさ」

「黄金級、ですか?」


 プリムは取り皿を持ち、上品に白菜を食べている。

 クロネはと言うと、取り皿に入れた魚の切り身をずっとフーフーしていた……ああ、猫舌なのか。まぁ猫だしな。なんか可愛い。


「ふーふー、ふーふー……キャンサー、全十二体作成された最強のゴーレムの一体にゃん。ふーふー、ふーふー……起動実験に失敗して、十二体中十体が暴走、そして逃亡……残る二体は欠陥品と判断されて封印されてるにゃん。奇しくも、その失敗のデータがのちの『金剛級』を生み出す結果になったにゃん」


 クロネはようやく冷めた魚の切り身をもぐもぐ食べた。

 俺は野菜を完食し、自分で肉を取り皿に。


「で、それって強いのか?」

「にゃん。正式名称は『広域殲滅級鉄機兵こういきせんめつがたゴーレム蟹座(キャンサー・ノウヴァ)】』にゃん。装甲は純度百のオリハルコン合金、武装も大きさも通常のゴーレムとは比較にならない大きさらしいにゃん」

「いいわね。そういうの燃えるわ」

「だな。冒険ってのはこうじゃねーとな」

「同感!!」

「フレアとカグヤ、楽しそうです……いいなぁ」

「お嬢様。私といちゃいちゃしましょう」

「触らないで」

「おほっ」


 プリムの太ももを触り始めたアイシェラはキツイ目で睨まれた。

 お腹いっぱい食べ、食後のお茶を飲み欲し、会計をして外へ。


『わぅん、わんわん!!』

「ふふ、おいしい?」

「お腹が減ってるだろう? いっぱい食べてくれ」

「こんなことでお詫びになるとは思えませんが……ごめんなさい、ワンちゃん」


 なんと、シラヌイに餌をあげている人が三人。

 一人はエミリー、もう二人はケインとアルコだったか。

 俺たちを見るなり、頭を下げてきた。


「エミリーから全て聞いた。白銀級ゴーレムの素材、本当にありがとうございました」

「それと、ワンちゃんの件……謝って許されることではありませんけど、謝罪させてください」


 ケインとアルコが頭を上げ、また下げた。

 エミリーを見ると、エミリーも頭を下げる……いや、下げすぎだよ。

 シラヌイを見ると、餌をもらってご機嫌だった……はぁ、もうわかったよ。


「わかったわかった。もう許すからさ、あんまり頭下げるな」

「そうよ。ってか、目立つからやめなさいよ」

「す、すまない……」


 とりあえず、改めて自己紹介。

 プリムやアイシェラ、クロネも名乗った。

 八人と一匹という大所帯になった。往来じゃけっこう邪魔だな。

 すると、カグヤがエミリーに言う。


「ところで、ゴーレムは?」

「私たちの工場で整備中です。私とアルコのゴーレムはそこにあります」

「私たちの工場って……自分の工場があるの?」

「はい。といっても新人用の工場で家賃は支払っていますけどね」


 すると、プリムが言う。


「ゴーレムの工場……見てみたいです!!」

「いいけど……狭いし、見ても面白くないと思うよ」

「ケイン。外からの人はゴーレムを見る機会なんてないのだし、見学してもらえば?」

「アルコ……うん、そうだね。あの、よろしければご覧になりますか?」

「はい!! あの、フレア……いいですか?」

「いいんじゃね? ってか、俺も見てみたい」

「あ、アタシも!!」

「お嬢様が行くなら水の中草の中風呂の中スカートの中」

「うちも興味あるにゃん。ゴーレムの情報はまだ少ないにゃん」


 というわけで、ケインたちの工場へ向かう。

 町の外れ、森の小道を通った先に木造りの平屋がいくつも並んでいる。そのうちの一つがケインたちの工場らしい。


「温泉郷ユポポの景観が壊れてしまうので、ゴーレム関係の細かい施設や工場は全て、村の近くにある森の中にあります」


 エミリーの説明だ。

 さっそく工場に入ると……いた、ゴーレムだ。

 エミリーのゴーレムは腹部分が露出している。腹を覆っていた外装はすぐ近くの作業台に置いてあった。ああそっか、俺が蹴っ飛ばしたから修理してんのか。

 アルコのゴーレムはそのまま置いてある。さっきまで使ってたもんな。

 それと、ゴーレムの残骸が箱の中に詰め込まれている……ああ、俺が『破壊拳』でぶっ壊したケインのゴーレムだ。


「すごい……いろんな道具がいっぱいです」

「驚いたな。まさか、自分たちで修理しているのか?」


 アイシェラの質問にケインがうなずく。


「はい。ゴーレムマスターはゴーレムの構造を何よりも理解していないといけません。修理と整備は自分の手で行います。もちろん、自分の手に負えない場合は、専門家に依頼しますけどね」


 クロネはエミリーのゴーレムを見て唸る。


「むむむ……かなり複雑な中身にゃん」

「あはは。覚えれば簡単ですけどね。ね、アルコ」

「そうね。養成所の試験でも出たし……」


 その後、俺たちは工場を見学した。

 エミリーのゴーレムを修理する様子を眺めたり、クロネが情報集めということで三人にいろいろ質問したり、アルコがお茶を淹れてくれたので飲んだりと、気が付くと夜に。

 そろそろ帰ろうかというところで、エミリーが言う。


「あの、フレアさんとカグヤさん……『キャンサー』の討伐に出るんですよね?」

「おう。お前たちは?」

「わ、私たちは新人なので……おそらく、村の防衛が主な依頼になると思います。お二人なら心配ないと思いますけど……どうかお気をつけて」

「ああ、ありがとな。黄金級ぶっ壊してパーツを土産に持って帰るよ」

「あはは。ありがとうございます」


 三人と別れ、俺たちは宿へ戻った。


 ◇◇◇◇◇◇


 宿に戻り、俺たちはプリムの部屋へ集まった。


「明日も俺とカグヤは冒険者ギルドに行くよ。キャンサーの討伐隊が結成されるっぽいしな」

「んで、明後日には討伐しに行くわ!! ふふ、今から楽しみね!!」

「……私も何かお手伝いしたいです。あ、そうだ。怪我人とか出るかもしれないし、私の能力で治療を」

「お、それいいな。なぁアイシェラ、プリムの能力のこと、ギルド長のママさんに言っていい?」

「お嬢様が望むなら構わん。ただし、その場合お嬢様は私が守る」

「うちは情報集めするにゃん。ゴーレムの情報、いくつあっても足りないにゃん」


 よし、これでこの村でやるべき仕事が決まった。

 黄金級ゴーレム『キャンサー』の討伐。

 天使とかが絡まない、純粋な悪者退治……まぁ悪者に純粋もクソもないけどな。


「よし。やること決まったし、風呂入ってくるか」

「私も温泉にいきまーす」

「お嬢様、お身体は私が洗います」

「いやでーす」

「あ、アタシも温泉入る。ここの温泉、お肌すべすべになるのよねぇ~」

「うちも行く。ちょっと今日は眠いし、明日から頑張るにゃん」


 よーし。温泉入って明日も頑張ろう!!

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
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― 新着の感想 ―
[気になる点] 純度100なら合金にはならないのでは?
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