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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第八章・温泉とゴーレム

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温泉郷ユポポとゴーレム③/温泉でのんびり

「ゴーレムマスターに売られた喧嘩を買って、ギルド長に呼び出しされたぁ?」


 夜。

 温泉から上がったプリム達、情報収集から戻ったクロネを連れ、村の中にあった食事処である串焼き屋に入り、今日あったいざこざを説明すると、カグヤが呆れたように言った。

 テーブルの上には大皿があり、様々な串焼きが並んでいる。

 俺は鶏肉の串焼きを掴んで食べる。


「しょーがねーじゃん……あむ……シラヌイをやられてさ、黙ってるなんてお前もできないだろ?」

「まぁ確かに。ってかアタシなら殺してるわ」


 カグヤは串を両手に持って食べている。

 アイシェラはエールをぐびぐび飲みながら言った。


「まったく。久しぶりに穏やかな村に入ってさっそく問題を起こすとは……」

「うぐ……だ、だから仕方ないだろ」


 アイシェラがジト目で見る。

 すると、串焼きの肉をわざわざフォークで外し、上品に食べるプリムが言った。

 

「アイシェラ、意地悪なこと言わないの……ん、おいしいです」

「はいお嬢様! ん~かわいい」

「こいつは変わんないにゃん……」


 クロネは果実水を飲みながら俺に言う。


「温泉郷ユポポのギルド長、マーマレードはゴーレムマスターにして副業で冒険者だったにゃん。戦いよりも指揮官として名を馳せた冒険者で、ギルド長としてだけじゃなく、この温泉郷ユポポの発展にも尽くしてるそうにゃん」

「へー……見た目は『オレンジ』って感じなのにな」


 あのおばさん、頭にオレンジ乗っけたような髪型なんだよな。

 マーマレードだからママさんとか……なんか面白いな。

 そう思い心で笑っていると、カグヤが指をぺろっと舐める。


「ねぇ、ゴーレムマスター?ってなに?」

「『機兵使い(ゴーレムマスター)』は、ゴーレムを操って戦うことができるジョブにゃん」


 クロネが説明してくれた。

 今日、集めた情報だな。


「簡単な命令ならゴーレム事態に覚えさせてある程度は動かせるにゃん。荷物持ちさせたり、重い物運ばせたり、畑仕事をさせたり、門番をさせたり……でも、複雑で細かい動きをさせることができるのは、ゴーレムマスターだけにゃん。集めた情報によると、『雷』属性の魔法適正がある人だけがゴーレムマスターになれるって聞いたにゃん」

 

 クロネ大活躍だ。

 みんなが話を聞いていると、ちょっぴり得意げに続ける。


「パープルアメジスト領土でゴーレムマスターは憧れの職業にゃん。そして、ゴーレムを制作できるのはパープルアメジスト王国にある『ゴーレム・エンタープライズ』っていう会社だけ。ちなみにそこのトップが特級冒険者序列五位『魔動探求狂学者クレイジー・マッド・ラプソディア』ラングラングラー・マッドサイエンティスト・デ・ラノ・スパンキーデンジャラスにゃん」

「お前、よく噛まないでその名前言えるな……」

「名前はその人の最も重要な情報にゃん。覚えるのは当然にゃん」


 クロネが胸を張り、プリムがぱちぱちと手を叩く。

 串焼きもなくなりお腹がいっぱいになったので、お土産に串焼きを買って店を出た。

 店の外ではシラヌイが丸くなって待っていた。


「お疲れシラヌイ。後で土産やるからな」

『わん!』


 土産の串焼きは宿で食べさせよう。

 さて、帰そうか。そう思っているとアイシェラが言う。


「ふむ。まだそう遅くないな……少し飲みたい気分だ」

「あ、じゃあアタシ付き合ってあげる。プリムは?」

「わ、私はお酒あんまり……」

「じゃあ慣れるために飲まないとね! アンタらは?」

「俺はいいや。シラヌイに串焼きやって温泉にでも入るよ」

「うちも疲れたからいいにゃん」

「そっか。じゃあここで!」


 カグヤはプリムとアイシェラを連れ、飲み屋に向かった。

 カグヤがいれば何かあっても問題ないだろう。

 俺、クロネ、シラヌイは宿へ向かう。


「いやー、こういう雰囲気の村、久しぶりだよな」

「確かに。下水で一夜を過ごしたり森で野営したり……今日はゆっくり寝れそうにゃん」

「だな。そういやお前、温泉入ったのか?」

「まだにゃん。帰ったらゆっくりはいるにゃん」

「そうだな。はぁ……明日は冒険者ギルドか。お前たちは?」

「プリムとアイシェラは買い物、カグヤはあんたに付いていくって。うちは引き続き情報収集するにゃん……いちおう、調べたいこともあるし」

「?」


 ま、よくわかんねーから気にしなくていいか。


 ◇◇◇◇◇◇


 翌日。

 温泉でぽかぽかに温まって爆睡した俺は気分爽快。

 夜遅くに帰ってきてそのまま爆睡して起きたカグヤの顔色は悪かった。


「おい、別に来なくていいぞ。寝てろよ」

「いやよ……アンタばっかり、おいしいこと、するなんて……うえっ」

「飲みすぎだっつーの……やれやれ」


 こいつ、酒飲みすぎだっつの。

 どうもアイシェラと飲み比べしたらしい。そこにプリムが混ざり三人で飲み比べしたのだが……飲み屋の女将さんがアイシェラとカグヤを抱えて、なぜかニコニコ顔のプリムと帰ってきた。

 後のことはクロネに任せたから知らんけど、どうもプリムは酒が強いらしい。


「お、着いた。ここが冒険者ギルド……おお」

「ん~……あ、ゴーレムじゃん」


 木造りの立派な建物で、入口にはゴーレムが二体配置されていた。

 昨日のゴーレムマスターが使っていたゴーレムとは違い、なんだか安っぽい印象のゴーレムだ。

 中に入ると……これまたゴーレム、ゴーレム、ゴーレムだった。


「いやはや、ゴーレムってここじゃ当たり前なのか?」

「アタシ、見たことないけど」


 ギルド内は広い。

 人間や獣人が五十人ほど、ゴーレムは二十体ほどいた。

 安っぽい造りの物から、装飾が施され武器を背負った個体、やけに大きな個体と様々だ。

 俺とカグヤがギルドに入ると、なぜか注目された。


「見ろ……」「あの子供だ……」「素手で……」

「青銅級、修復不能だってよ……」「特異種か……?」


 たぶん、昨日のこと噂されてんだろうな。

 カグヤが俺をジトっとした目で見る。


「アンタ、ほんといろいろやっちゃうわね。一緒にいて飽きないわ」

「そりゃどーも……あ」

「来たね。ん、そっちの嬢ちゃんは?」


 俺たちの前に、ギルド長のマーマレード……ママさんが来た。

 うん。今日もオレンジを乗っけたようなヘアスタイルだ。

 俺はカグヤを紹介する。


「こいつはカグヤ。俺の冒険者仲間」

「ほ、仲間なんていたのかい。さーて、さっそく昨日の話をしようか。こっちに来な」

「はーい。おいカグヤ、付き合えよ」

「えー……アタシ、依頼を見たかったのに」


 ママさんと一緒に二階に上がり、ギルド長室に入る。

 室内には三人いた。


「……なんでこいつらが?」

「う……その」

「…………」

「かひゅうー、かふゅうー……ふがが」


 昨日、ぶちのめした男女だ。

 男は俺を見て口元を震わせ、腹を殴った女は睨み、呪いを食らわせた女は顔をパンパンに腫らせて苦しんでいた。ま、自業自得だね。


「まず、昨日のいざこざはこいつらに非がある。その件の謝罪だ」


 ママさんが男を睨むと、おずおずと頭を下げた。


「も、申し訳ございませんでした……」

「……申し訳ございませんでした」

「も、もひ、がざ」


 男は歯ぎしり、女はちっともそんなこと思ってない感じ、もう一人は顔がパンパンに腫れているので上手く声が出なかった。

 と、ここでなぜかカグヤが。


「そっちの……なに? 喧嘩売ってんの? 謝る態度じゃないわね」

「ッ……」

「やめろって。お前が出るとめんどくさくなる」

「ふん。シラヌイやった連中なんでしょ? 二度と歯向かえなくなるまで骨を折ればよかったのに」


 恐ろしい奴。

 俺じゃなくてカグヤだったら、二度と立てなくなるくらい痛めつけてただろうな。

 ママさんはため息を吐く。


「この温泉郷ユポポは観光地でもある。厄介事は尾を引かないように解決して遺恨を残さないことにしているんだ。こうして呼んだのも、あんたにしっかり謝罪して許してもらいたいからさ」

「んー……まぁいいよ。許してやる」

「甘い奴」

「うっせ」


 カグヤの言う通り、甘いのかも……というか、ぶっちゃけどうでも良かった。

 ママさんは俺に言う。


「ところで、お前さん。アルコの顔が腫れているのはあんたの能力なのかい? もし許してくれるなら、治してやってほしい」


 ママさんがそう言うと、アルコと呼ばれた少女の目から涙が出た。

 ま、別にいいや。

 俺はアルコに近づき顔に触れ、体内を蝕む俺の呪力を打ち消した。

 すると、アルコの顔の腫れが収まっていく。


「次、舐めた真似したら……これ以上の苦しみをお前たちに食らわせるからな? 一生小便垂れ流すような人生送りたくないだろ?」

「は、はいっ……申し訳ございませんでした!」


 これだけ脅せばいいだろ。

 さて、謝罪も終わったし話は終わりだ。


「うんうん。これで話は終わったね……じゃ、次の話だ。ケインたちは退出しな」


 ケインたちは退出した。

 残された俺とカグヤ。なんとなく顔を見合わせ、ママさんを見る。


「あんた、三等冒険者のヴァルフレアだね?」

「え、知ってんの?」

「ああ。有望株の情報はギルド長で共有してんのさ。特級冒険者序列四位ブリコラージュが最後に会った冒険者。全身奇病に侵されたブリコラージュは、誰がどうやって引き起こしたのかねぇ……」

「…………」


 やべ……アルコの顔のことで、俺が奇病を操っているってバレたかも。

 でも、ブリコラージュの呪いを治すつもりはかけらもなかった。


「心配しなさんな。青銅級のゴーレムを素手で叩き壊すあんたに用があるんだ。奇病疫病を操る冒険者に用事はないよ」

「え、ええと……あっはっは」

「何笑ってんのよ」

「うっせ。それで、用事って?」


 ママさんはキセルを取り出し、たばこをふかし始める。


「実は、最近この辺りに『野良』が多くてね。町の源泉近くにも頻繁に現れている。お前さんの力で、野良を倒してくれんかね」

「……のら?」

「野良。野良ゴーレムだよ。けっこう厄介なんだこれが」

「んー……なんで俺が?」

「腕が立つからさ。それに、本来はケインたちの仕事なんだが、ケインのゴーレムはあんたが破壊しちまうし、エミリーのゴーレムも修理中だ。今動けるのはアルコだけだが、一人じゃどうしようもないからね。ケインたちが悪いとは言え、ゴーレムを壊したあんたにも多少なりとも責任はあるはずさ。源泉近くに現れるゴーレムの掃除を頼む。もちろん、報酬は用意するよ」

「やる!!」

「おいこら、頼まれてんの俺だろ……でもまぁ、冒険者っぽくていいな。やるか」


 こうして、俺とカグヤの今日の仕事は、野良ゴーレム退治となった。

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脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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