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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第八章・温泉とゴーレム

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温泉郷ユポポとゴーレム②/まったり

 プリムたちが温泉に行ったので、俺は自室に戻りシラヌイに声をかける。


「シラヌイ、散歩行くぞ」

『わぅん!』


 身体を丸めて寝ていたのに、散歩と聞くなり立ち上がって尻尾を振る。

 俺に飛び掛かるようにぴょんぴょん跳ねる。なんとも可愛い奴だ。

 シラヌイを連れ、宿の外へ。


「ん~……やっぱ馬車から見る景色と違うな」


 村と言う割にはかなり繁盛してるっぽい。

 プリム曰く『秘湯』らしいけど、あえて村っぽくすることで秘境っぽさを出してるのかな。

 建物は木造りだけど大きいししっかりしてる。道幅は広いし宿や雑貨屋、土産物屋……お、武器防具屋とかもある。

 観光客だろうか、ラフな服装で出歩いてる人も……お。


「ゴーレムだ」


 村の中を、ゴーレムが普通に歩いていた。

 門番ゴーレムは二メートルくらいの大きさだけど、村の中を歩くゴーレムは俺と同じかやや小さい。

 姿は安っぽい全身鎧を着こんだような姿だ。歩き方もカクカクしてるし、戦えるようには見えないな。


『わん!!』

「っと……悪い悪い。物珍しいからつい、いつもの癖で分析を」


 俺は大きく伸びをして歩きだす。

 ブラックオニキスではこんな気持ちで村を歩くなんてできなかった。

 村の中心、横幅の広い道を歩く。


「くんくん……この匂い、温泉の匂いだ」

『くぅん……』

「はは。シラヌイは苦手か? けっこう独特な匂いだもんな」


 呪術師の村にも温泉があった。

 修行終わりとか、先生の背中を流したっけ。病弱なヴァジュリ姉ちゃんの身体を洗ったり、ラルゴおじさんの弟子たちが絡んできて喧嘩になったり……男も女も素っ裸で喧嘩したっけ。武器術に特化した連中だったから俺でも勝てたけどな。


「何か食うのは……やめとくか。せっかくだしプリムたちと食べたいな。そうだ、いいメシ処探しておくか」


 温泉の匂いに混じり、いい匂いがする。

 お食事処がけっこうある。観光客や冒険者も多く店を利用しているみたい。

 特に何か買い物するわけでもなく、のんびり散歩した。でも、喉は渇く。

 すると、土産屋の近くに飲み物を売っている店があった。


「ちょっと飲み物買ってくる。シラヌイ、ここで待ってろ」

『わん!』

 

 シラヌイを置いて出店に向かう。よし、シラヌイが飲めそうな飲み物も買おう。

 出店に行くと、けっこうな種類の飲み物が売ってた。

 出店のお姉さんに聞いてみる。


「おすすめありますかね?」

「おすすめは『ユズ茶』です! パープルアメジスト領土でしか栽培できない『ユズ』という果物を使った飲み物ですよ! さっぱりして温泉上がりにぜひどうぞ!」

「おお。あの、それって犬が飲んでも平気かな?」

「んー……たぶん大丈夫かな?」

「よし。じゃあ二つください」

「ありがとうございまーす!」


 木製の容器に入ったユズ茶を二つ受け取───。


『ぎゃん!!』

「ん───シラヌイ!?」


 シラヌイの鳴き声。しかも、聞いたことのない鳴き方だった。

 振り向くとそこにいたのは……ゴーレム三体を連れた三人の男女だった。

 シラヌイが横たわり、口から血を吐いている。

 俺はユズ茶を無視し、横たわるシラヌイの元へ。


「シラヌイ───シラヌイ!!」

『ぐぅぅ……ガッ、ガッ』


 シラヌイが血を吐いた。

 すると、舐め腐ったような声が真正面から聞こえた。


「あ、悪い。アンタの犬? いやぁ、ちょっと蹴っただけなんだよ。悪い悪い」

「…………は?」


 男……同い年くらいの男は、背後のゴーレムを前に出す。

 その辺にいるゴーレムとは違う、装飾の施された高そうなゴーレムだ。意匠からも戦闘に適したゴーレムということがわかる。

 男の後ろにいる女二人も、それぞれゴーレムを連れていた。

 

「ゴメンね。じゃ」

「ふふ……」


 女二人は、舐め腐った態度で俺を見た。

 そのまま、俺を無視して通り過ぎる男女とゴーレム。

 俺はシラヌイを白い炎で一瞬だけ包み込み、その隙に男女とゴーレムの前に出た。

 男は馬鹿にしたように笑う。


「なに? なんか用?」

「…………」


 威嚇だろうか。俺の表情を見て男は自信満々にゴーレムを前に出す。

 俺はゆっくり歩き、ゴーレムに向かって拳を振り上げた。


「滅の型『極』、【破懐拳(はかいけん)】」


 拳に纏わせた呪力がゴーレムに触れた瞬間、ゴーレムが木端微塵に破壊された。

 バラバラと部品が周囲に散らばり、にやけたまま硬直する男。


「……は?」

「悪い悪い……いやぁ、ちょっと殴っただけなんだよ」


 殺気を込めて睨み、男と同じことを言う。

 俺は弱々しい立ち上がるシラヌイを見る。


「どういうつもりか知らねーけど、覚悟できてるよな?」

「「「っ!?」」」


 俺は殺すつもりで睨むと、男女は真っ蒼になりガタガタ震え出した。

 そして、女二人がゴーレムを前に出し命じる。


「コマンド、ぼ、【防御】!!」

「コマンド、「遅い。甲の型、『打厳』」


 女の腹に強烈な拳を打ち込むと、嘔吐しながら吹っ飛んだ。

 そしてもう一人。防御と叫んだ女の顔面を殴ろうとしたが……。


『防御シマス』

「あ?」


 ゴーレムが、手に持った盾で俺の拳を防御した。

 というか喋った。やっぱり生きてるのか? うーん謎だ……でも。

 

「甲の型、『捻打厳』」


 強化版『打厳』を盾の上から食らわせると、ゴーレムの体勢が崩れた。

 崩れた瞬間を狙い、回転前蹴りを食らわせると地面をゴロゴロ転がる。

 女は驚愕しているが、俺はそんな女の顔面を鷲掴み。


「蝕の型、『口内炎になっちまえ(グォー・ナイ・エイン)』」

「かっ……かか、がががっ!?」


 女の口の中が一気に腫れあがり、手を放すと地面をのたうち回った。

 女を無視し、腰を抜かしている男の元へ。


「な、なな……なんだお前っ!! お、オレら『機兵使い(ゴーレムマスター)』相手に、素手で、素手でだとぉっ!?」

「うるせぇなぁ……久しぶりにいい感じの村に来て楽しく散歩してたのにぶち壊しやがって。ゴーレムマスターだか知らねぇけど、とりあえずお前は殴る」

「ひ、ひぃぃっ!!」


 後ずさる男。

 さて、どうしてやろうか。ぼこぼこにするか、呪いのフルコースで一生小便垂れ流し男にしてやろうか……それとも両方。


「そこまでにしておきな!!」

「え」

「あ……ぎ、ギルド長!!」


 聞こえたのは、おばちゃんの声……ギルド長?

 今気づいたが、周囲にはけっこうな観客がいた。頭にきてたので気付かなかった。

 この騒ぎを聞きつけて出てきたのが、このギルド長か。


「ケイン、またお前か……いくら希少なゴーレムマスターだからってもう贔屓はできないよ。ギルド長の名において宣言する。B級冒険者ケイン、エミリー、アルコは二階級降格処分。D級冒険者とする」

「えっ……えぇっ!? そんな、いきなり喧嘩を売ってきたのはこいつで」

「嘘言うでない!! ちゃんと証言がある。お前たちが面白半分にそこの白い犬をゴーレムで蹴とばしたと何人も証言した。お前たちのゴーレムは全て没収!! ギルドの反省室で説教だ、連れていきな!!」


 すると、屈強な男たちがゴーレムマスターの三人を拘束。連れていった。

 そして、ギルド長が俺の前に。


「あんたが切れるのも無理ない。でも、やりすぎだね」

「いや、あいつまだぶん殴ってないんだけど」

「それはあたしがやっとく。それよりあんた、青銅級とはいえゴーレムを素手で破壊するなんてね」

「はぁ……せいどう? つーかおばさん、すごいね」

「なにがだい?」


 いや、その恰好……とは言いにく。

 ギルド長の格好は独特だった。

 オレンジのシャツとローブ、ハーフパンツにサンダルというラフな姿。髪の色はオレンジで頭頂部で丸いお団子にまとめ、緑色の葉を模した簪を付けている。まるで頭にオレンジがくっついてるみたいだ。

 

「ああ、自己紹介がまだだったね。あたしは『温泉郷ユポポ・冒険者ギルド長』のマーマレード。みんなからはママさんって呼ばれてる。よろしくね」

「どうも、ママさん……あの、そろそろ帰っていい?」

「いいさ。その代わり……明日、冒険者ギルドまで来な。あんたも冒険者なんだろ?」

「……はーい」


 うわぁ……めんどくさいことになりそうだわ。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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