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後始末と黒い天使

 夜になり、ようやく全て落ち着いた。

 第四地獄炎の真の力で町は修復されたが、怪我人以上の病人が教会に詰めかけた。おかげでプリムは大活躍……というか、プリムがいなかったら病人の国になってた。

 プリムは病人の治療、町の医師も総出で治療に当たり、俺やアイシェラたちはひたすら雑用をした……アイシェラに睨まれるわ大変だった。でもプリムは「ようやくお役に立てます!」とか、めっちゃ張り切ってたけどな。

 

 そして現在。

 俺たちはヴァル爺さんの家で夕食をごちそうになり、これからの予定を話す。

 ちなみに今夜の宿はここ、ヴァル爺さんの家だ。

 食後、リビングルームに集まり、巨大蛇に変身した吸血鬼の青年が淹れてくれたお茶を啜りながら話をする。

 まず、ミカエルとラティエル。


「あたしたちは聖天使協会に戻る。サリエルのこともあるし、あたしもいろいろやらかしたからアルデバロンに報告しないとね……」

「もちろん、私も一緒だよ」

「そっか……ま、しょうがねぇな。ミカちゃん、また一緒に遊ぼうぜ」

「み、ミカちゃん言う……ま、まぁあんたならいい」

「は?」


 ミカちゃんは顔を赤らめそっぽ向く……え、なにその反応。

 ラティエルはミカちゃんをじーっと見て、なにやらニンマリした。そして、俺に言う。


「呪術師フレア様。我々天使は今後、あなた様に危害を加えないと誓います。これは聖天使協会十二使徒『樹』のラティエル、『炎』のミカエルによる天使の誓いです」

「そっか。あ、でも、ほかの十二使徒とか喧嘩売ってきたら」

「心配ないわ。あたしが『手を出すな』っていえば手は出さない。ってか、ぶっちゃけあたしに勝ったあんたなら、あたし以外の十二使徒が束になっても適わないでしょうね」

「ふーん……ま、いいや」


 俺はソファに深く座り、甘えようとソファに飛び乗ってきたシラヌイを撫でまくる。

 ミカエルたちの話が一区切りすると、プリムが言う。


「フレア、私たちはどうしますか?」

「んー、こっから近いのは『パープルアメジスト』だっけ?」


 カグヤに聞くと頷いた。


「そうね。魔動機関の国パープルアメジストよ。ブラックオニキスほどじゃないけど、あっちもけっこう閉鎖的な国だから、あんまり情報ないのよね」


 アイシェラは腕を組み、リンゴをかじるクロネに聞く。


「クロネ、お前が持つ情報にパープルアメジストのことはあるか?」

「ないにゃん。一般的なことだけ……魔動機関発祥の地、他の六領土とは比較にならない技術があふれてる、特級冒険者序列5位『魔動探求狂学者クレイジー・マッド・ラプソディア』ラングラングラー・マッドサイエンティスト・デ・ラノ・スパンキーデンジャラスがいるってことくらいにゃん」

「…………悪い、もう一回頼むわ。ラング、なんだって?」


 舌を噛み切りそうな名前が出てきた。

 というかクロネの記憶力すげぇ。ネコパワーなのかな。


「特級冒険者がいるってことだけ覚えてろにゃん。うちもパープルアメジストには行ったことないからわからないにゃん。ま、情報集めなら任せるにゃ……なに、その眼は」

「えへへ……クロネ、一緒に来てくれるんですね!」

「にゃっ!? べべ、べつに、借りを返してないし……ああもう、その眼をやめろにゃん!!」

 

 プリムがニコニコしているのが気に食わないのか、ネコミミと尻尾をピンと立たせてクロネが怒った。

 俺はワクワクしながら言う。


「魔動機関かぁ……どんなところだろうな!!」

「確かに面白そうね。ふふ、アタシも楽しくなってきたかも!!」


 カグヤも興奮していた。

 ブラックオニキスでは観光とか冒険できなかったし、パープルアメジストでは思いっきり遊びたいな。

 アイシェラは、ヴァル爺さんに聞く。


「ヴァルプルギウス様。お願いがございます……厚かましい願いですが」

「わかっておる。地図と食料、旅の道具はこちらで準備してやる。ああ、代金はいらん。町の修復と住人の治療費ということにしておこう」

「え、いいの!? やったぜ、ありがとなヴァル爺さん!!」

「ヴぁ、ヴァル爺さん……? かかか、面白いガキじゃな」


 喜ぶ俺を睨み、アイシェラは頭を下げた。

 こうして、次の目的地が決まった。

 魔動機関の国、パープルアメジストだ!!


 ◇◇◇◇◇◇

 

「キトリエルさん」

「お、マキエル氏……」


 ヴァルプルギウスの国外にある森の中。

 国を覆う壁を眺めているキトリエルに、背後からマキエルが声をかけた。

 キトリエルはフレアの打撃と呪いを喰らって再起不能寸前だったのだが、なぜか白い炎(・・・)に包まれると怪我が消え、同時に呪も消えた。

 マキエルは黒い帽子を押さえ、苦笑した。


「敗北ですね」

「ええ。仕方ありません。小生は戦闘員ではありません故……それに、能力を見破られると子供にすら負けてしまう」

「そうですね。ですが、あそこまで手を貸さなくてもよかったのでは?」

「ああ、サービスですよ。まぁ、自己満足で戦いを長引かせたおかげでミカエルにとどめを刺せず、あまつさえ敗北するとは……十二使徒の質も落ちましたなぁ」


 キトリエルは、サリエルがミカエルとラティエルを始末することを期待した。最後にキトリエル自身でサリエルを始末し、十二使徒を三人葬る計画だった。

 だが、ミカエルは完全復活した。サリエルは処罰され十二使徒の資格をはく奪されるだろうが、ミカエルが復活した今、あまり意味がない。


「やれやれ。上手く事が運べば十二使徒を三人始末できたのに。『風』、『鋼』、『操』に加え『炎』、『樹』、『氷』……六人消えれば残りは六人。我らにもチャンスがあったのですが」


 キトリエルはさほど悔しくなさそうに言う。

 

「まぁ、呪術師の少年に挨拶できたという『答』は出ましたな」

「そうですね……そろそろラハティエルさんが迎えに来ます。帰りましょうか」

「ええ。そうだ、マキエル氏。帰ったら紅茶でも如何です?」

「お付き合いしましょう」


 黒服の男二人が談笑していると、突如として何もない目の前の空間に亀裂が入る。

 ガラスが割れるような音と共に、縦にぱっくりと空間が裂けた。そこから現れたのは二人。

 一人は、ボサボサの髪にボロボロのマントを着た少女ラハティエル。

 もう一人は女性だ。黒いスーツにスカート、厚手のコートみたいなマント、長い黒髪は絹糸のようにサラサラし、顔立ちは冷酷さを感じる美しさだった。

 マキエルは帽子を押さえ、意外そうに言う。


「これはこれはクシエルさん。ワタクシたちをお迎えに来てくれるとは」

「バカじゃないの? この私がそんなことのために来るわけないでしょう。この子に伝言を頼むのは不安だから私が直接来たのよ」

「伝言ですかな? ふむ、それはどのような『答』で?」


 黒髪の少女クシエルは、長い髪をかき上げながら言った。


「私たちの『神』から、啓示があったわ」

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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