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BOSS・懲罰の七天使『神の答』キトリエル①

「あんた、誰?」

「ふむ。その『答』を教えるのは簡単ですが……まぁ、小生のことなどどうでも良いでしょう?」

「いや、よくねーよ。仲間が戦ってんだ。どけよ」

「ホッホッホ。仲間、仲間とは……あちらで戦っている天使のお嬢さんのことでしょうか?」


 妙に整った髭をした男が、ステッキで町の中心を差す。すると、そちらから火柱が上がり、氷の塊が空中にいくつも生み出された……なるほど、今度の天使は氷属性か。

 俺は、目の前にいる得体の知れない男を見る。

 真っ黒な服、シルクハット、整った髭に片眼鏡……どうも戦いに向いているようには見えない。どこかのパーティーにそのまま参加できそうなスタイルだ。


「……あんたも天使?」

「その『答』を知ってどうします?」

「……ミカエルが戦ってるの知ってるくせに邪魔すんなら、ミカエルの……聖天使協会じゃねぇな? お前、堕天使だな!?」


 ビシッと指をさすと、男は笑った。


「はっはっは!! おっと失礼。ふふ……あなたは純粋なようで。それに見かけより頭が回る」

「そりゃどうも……あのさ、そろそろ行かないと。邪魔すんならぶん殴るぞ」


 俺は『甲の型』の基本形で構える。半身で右拳を前に出す構えだ。

 すると、ステッキ男はステッキをくるくる回しながら言う。


「残念ですが、小生はあなた以上の格闘技の使い手。そういう『答』が出ています……諦めた方がよろしいかと」

「あっそ」


 俺は地面を蹴り、ステッキ男めがけて突っ込む。

 相手は構えてすらいない。相手の正体は不明だが、何かする前に終わらせる。


「甲の型、『撃鉄』!!」


 拳を握り初動の加速を拳に乗せ、『硬くなれ(カタタク)』の呪いで拳と関節をガッチリと硬めたダッシュ突き。岩も砕けるし調子いいときは鉄板すら貫通する。

 まともに喰らえば内蔵破裂間違いなしの打突を容赦なくステッキ男の顔面に。


「ふむ、速いですな」


 俺とステッキ男の距離は十メートルもない。

 攻撃の初動から拳の着弾まで、一秒もなかった。


「なっ……」

「ほら、言った通りでしょう?」


 俺の拳が(・・・・)ステッキ男の左手で(・・・・・・・・)軽々と受け止め(・・・・・・・)られていた(・・・・・)

 バカな。

 自分の実力を過信してるわけじゃないけど、生き返ってからここまで、躱されることはあったが、俺の拳をまともに受けた奴はいなかった。

 こんな、枯れ枝みたいな体格のステッキ男が……俺の拳を。


「ほら、動揺している暇はありませんよ?」

「っ!? ぶぁっ!?」


 バチン!!と、ステッキで横っ面を叩かれた。

 鞭のようにしなるステッキだ。殴られた痛みというか、張られた痛みのが強い。

 先生が昔言ってた。殴る蹴るより、皮膚を張る(・・)痛みのが厄介だと。


「っぐ……この」

「ほほ、今のは痛かったでしょう?」

「うっせぇ!! 第三地獄炎、『泥々深淵』!!」


 俺は左腕に『大地の爪(テラ・ペ・ウェイン)』を装備し地面に突き刺す。

 黄色い地獄炎が周囲の大地に干渉し、石畳の下にある土が泥化した。


「ほほ、泥ですか。ふむ……靴が汚れてしまいますな」


 そんな軽口をたたいたステッキ男は、泥の上を歩く。

 バカな。歩くなんて不可能だ。地面じゃないんだし、底なし沼みたいに沈むんだぞ!?

 だが、俺は次の手を打つ。


「で、『泥々深淵』……【泥手(ドロミテ)】!!」

「ほぉ」


 泥が黄色い炎を纏い、手のような形となって伸びる。

 ステッキ男を捕らえて地面に引きずり込もうとするが……。


「ほっほっほ、はい腰ぃ!!」

「あだっ!?」


 泥の手を軽く躱し俺に接近。ステッキで腰をパァンと叩いた。

 第三地獄炎が解除され、泥沼が普通の地面に戻る。

 俺は第一地獄炎を右手にまとい、ステッキ男に接近し連続攻撃を放った。


「こ、のや、ろうがっ!!」

「ははは、若い若い。がむしゃらな特攻、若さを感じますな」


 息切れ一つ起こさず俺の拳と蹴りを躱す。

 そして、ようやく気付いた。


「お気付きですかな?」

「くっ……まさか、誘導してやがったのか」


 いつの間にか、プリムたちのいる教会、ミカエルが戦っている中央広場からだいぶ離れていた。

 違う。俺が誘導されてたんだ……こいつを追い込むように繰り出していた攻撃が、こいつに誘導されるように出していたんだ。

 どうする。いっそのこと、こいつを無視して。


「申し訳ないですが、小生はキミを逃がしません。そういう『答』が出てますので。ああ……全て終われば解放して差し上げましょう。キミの命を奪うつもりはありませんので」

「この野郎……舐めんじゃねぇぞ!!」


 全身を燃やし、ステッキ男に接近する。

 炎の拳も、蹴りも、全て躱される。


「おわかりですかな?」

「はぁ、はぁ、はぁ……くそ」

「『(こたえ)』はすでに、出ているのですよ」


 全てが、俺より上だった。

 まさか、先生クラスの使い手……こんなの、生き返ってから初めてだった。

 どうする。どうする。どうする。


「ですから、キミを殺すつもりはありません。全て終われば解放しますよ」

「……全てってなんだよ」

「もちろん。ミカエルが死ぬまで」

「このっ……」

「ははは。そう怒らないでください。それに、ミカエルが死んだところで問題ないでしょう? 一時の共闘関係、これが終わればあなたの冒険は続く」

「…………」


 ステッキ男はステッキをくるくる回す。


「もう諦めましょう。キミがなぜミカエルを救おうとするのか理解できませんが……弱体化したミカエルがサリエルに勝てるとは思いません。おそらく、もう間もなく決着がつくでしょう」

「……ふざけんな」


 俺は、背中から緑色の炎を噴射した。


「一時だろうと二時だろうと、あいつは俺の仲間だ!!」


 俺は緑の炎を噴射し、飛んだ。

 このままステッキ男を無視してミカエルがいるところへ行こうとすると……。


「行かせませんよ」

「ぐっ!?」


 真横に、ステッキ男がいた。

 ステッキで俺の横っ面をバチンと叩く。

 空中で体勢が崩れ、きりもみ回転して落下するがなんとか体勢を整え浮く。

 そして、見た。


「……黒い翼」

「おっと、バレてしまいましたな」


 ステッキ男の背中から生えているのは、漆黒の十枚の翼だった。

 ミカエルのような純白、ダニエルのような灰色ではない、黒い翼。

 天使にも翼の種類があるのか。

 まぁどうでもいい。こいつは邪魔だ!!


「第五地獄炎、『斬切(キリキリ)ヤンマ』!!」


 背中の炎翼から、緑色に燃え上がるオニヤンマが飛ぶ。

 だが、ステッキ男はステッキでオニヤンマを切り払う。真空の刃そのもののオニヤンマなのに、真空刃自体を切りやがった。

 

「なら……第五地獄炎、『硬蟲(こうちゅう)ダンゴロ』!!」


 翼から緑色の球体……いや、丸まったダンゴムシが大砲のように飛んでいく。

 ステッキ男は叩き落そうとしたが、すぐに見切って躱し始める。


「ほほ。マキエル氏に似てますな」

「誰だよそれっ!!」


 ダンゴムシを発射した俺はステッキ男に接近……でも、俺の突進はあっさり躱された。

 やばい。こいつ……隙がなさすぎる。

 無視して行こうにも追いつかれるし、ガチでやばい。


「おや……あちら、そろそろ終わりそうですな」

「な……」


 遠くで炎の柱が上がり、空中に氷の花が咲いた。

 見てわかった。ミカエルの戦いは佳境に入っている。

 なんとなくだが確信した。ミカエル、たぶん勝てない。


「おい……マジでどけ。ぶっ殺すぞ!!」

「ははは。どうぞ殺してください。できれば、ですが」


 俺の叫びを嘲笑うステッキ男。

 やばい。このままじゃ……ミカエルがやられちまう!!

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
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