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天使、黒天使、そして呪術師

 天使を全て灰にした俺たちは、クロネと合流して避難所とやらへ。

 避難所は教会で、多種多様な種族が怪我の手当てをしていた。どうやら、この町を襲撃した天使が連れていた雑魚天使たちにやられたようだ。

 クロネは担いでいた爺さんと天使を下ろす。天使に襲われていた大蛇も人の姿に戻り、ボロボロの状態で横になった。

 クロネは、俺に向かって言う。


「今、ミカエルが一人で戦ってるにゃん!! あいつ、あんたとの戦いで弱ってるから、けっこうヤバいみたいにゃん!!」

「マジか」

「そうにゃん……天使は敵かもしれない。でも、助けてやってほしいにゃん」

「わかった」

「え」


 俺はカグヤとシラヌイに言う。


「カグヤ、シラヌイ、ここの護衛よろしく」

「えー……アタシが戦いたいけど……んー、まぁいいわ」

『わぅん!!』

「わたしは怪我人の手当てを!!」

「私はお嬢様にくっついてます!!」

「邪魔」

「はうっ」


 プリムにぞんざいな扱いを受けたアイシェラはどうでもいい。

 プリムは、右腕を負傷しているラティエルにそっと手をかざす。


「今、治しますね」

「え、あ……ありがとう」

「いえ」


 プリムはにっこり笑うと、手から淡い光が。

 ラティエルの手がみるみるうちに修復され、怪我も綺麗に治っていた。


「すごい……半天使がここまでの《癒し》を使えるなんて」

「えへへ。ガブリエル様が力を貸してくれてますので……」

「が、ガブリエル様?……え、うそ」


 ラティエルが何か驚愕していたが、俺にはどうでもいい。

 ラティエルの手を治したプリムは、他の怪我人たちに向かって行った。ま、ここはお任せして大丈夫だろうな。

 教会を出ようとすると、クロネが担いでいた爺さんが言う。


「ま、待て。待つんじゃ」

「ん、爺さん……ギックリ腰なんだから無茶すんなって。プリムに治してもらってお茶でも飲んでろよ」

「バカモン!! 誰がギックリ腰じゃ!! ええい、わしはヴァルプルギウス。この国の真祖じゃ!!」

「え。そうなんだ。で、なんだよ」

「……気を付けろ。得体の知れん奴がおる。わしの……真祖の能力を封じてしまうような、恐るべき何かがここに」

「わかった。じゃ」

「ほんとにわかっておるのか!?」

 

 もちろん、どんな相手だろうと油断しない。

 回転式の銃弾をチェックし、ブレードを何度か出し入れする。

 身体を軽くほぐし、クロネに言った。


「おいクロネ、いろいろ世話かけたな。後でたっぷり撫でまわしてやるから待ってろ」

「…………は?」

「ミカエルは俺に任せて、ここで休んでろ。じゃ」

「にゃ、な、撫でるってにゃんだ!?」


 俺は教会を出て、周囲の気配を探る───。




「困りますな。今はとてもいいところなので……それに、あなたが邪魔をするという『答』は出ていないのですよ」




 どこからか、そんな『声』が聞こえてきた。


 ◇◇◇◇◇◇


「っぐ……」

「ヘイヘイヘイ、どうしたどうしたのぉ~? ウチなんかに負けないんじゃなかったのぉ~?」


 ミカエルは、サリエルに見下ろされていた。

 翼が焼けているせいで飛べない。制空権をサリエルが握っているだけでも厄介なのに、今のミカエルの炎ではサリエルの氷相手にまともに相殺すらできない。

 まさか、ここまで弱っているとは思わなかった。


「『氷細工・水玉模様(みずたまもよう)』」


 サリエルの周囲に顔ほどの大きさの氷球がいくつも生み出される。

 その名の通り水玉模様のように見え、何をしてくるかはすぐ理解できた。


「うひひっ……どかーん!!」

「っ!!」


 氷球は大砲のような速度でミカエルに向かって飛ぶ。

 ミカエルは炎を纏わせた剣で受けるが、勢いのあまり吹っ飛ばされてしまった。


「ぐっぁ!?」

「まだまだいくよーん」

「ちぃぃっ……」


 氷球が何発も飛んでくる。

 ミカエルは剣で受け、ボロボロの身体でなんとか躱し、剣で受けたはいいが吹っ飛ばされるを繰り返す……完全に、サリエルに遊ばれていた。


「あぁ~……気持ちいい。あのミカエルをこうも嬲れるとはねぇ」

「……っ」


 ミカエルは、追い込まれていた。

 柄を握る手がメラメラ燃える。こんな奴に、こんな奴にと怒るがどうにもならない。

 冷静になり、勝機を伺う。


「ねぇ、このまま勝機を待つ? 悪いけどウチに隙なんてないよ。あんたが望むならもう終わりにしてやってもいいけど、どうするぅ?」

「ふざけんな。あんたはあたしが潰す」

「無理だって。ねぇ、あんたも十二使徒ならさぁ、潔く死を選びなよ?」

「……あ?」


 サリエルはニコニコしながら言う。


「あんたは呪術師と組んで吸血鬼に喧嘩を売った。それを止めるためにウチがここまで来てあんたと戦い、あんたを倒した……残念なことに、ミカエルとラティエル、ついでに真祖が死亡……アルデバロン様にはそう報告しておくからさ。うひひ、あんたがいなくなれば十二使徒筆頭はアルデバロン様に、んでウチが側近に……」

「…………あんた、とんでもない馬鹿ね」

「あ?」


 ミカエルは剣をサリエルに突き付ける。


「あたしは負けない。あたしはあんたより強いからね」

「はっ……やっぱあんた、アルデバロン様に相応しくない。アルデバロン様の隣に立つべきなのはウチ、サリエルしかいないっつーの」

「だからさ、アルデバロンみたいなおっさん、あたしのタイプじゃないっての」


 ミカエルは残った力を全て剣に注ぎ込む。

 すると、炎の剣は螺旋を描くように燃え上がり、炎の長さも十メートルを優に超える。

 

「『螺旋・炎上剣スクリュー・バルジャンブレード』!!」


 サリエルは棒付きキャンディを吐きだし、右手を前に突き出す。

 すると、右手に冷気が集まり───。


「凍て氷れ、『氷華凍茎杖グラキエス・ライムワンド』」


 手には、一本の杖が現れた。

 透き通る氷のような、先端には百合のような花の氷、柄は花の茎のような杖だった。

 サリエルの神器───ミカエルは呼吸を整える。

 そして、サリエルは翼を広げた。


「もういいや。終わらせてあげる」


 サリエルの背後に『氷の花』が幾重にも咲いた。

 あまりにも美しく、この下品な女(ミカエルはそう思っている)が出す技とは思えないほど澄んだ氷の花が咲き狂う。


「…………」


 ミカエルは、悟ってしまった。

 たぶん───勝てない、と。

 

「じゃあねミカエル───あんたの死、うちがしっかりアルデバロン様に伝えてあげる」


 氷の花が咲き誇り、地上のミカエルめがけて降り注いできた。

 同時に、ミカエルも炎の剣をサリエルめがけて振る。


「『氷の聖天使(サリエル)月花氷陣(フロストフラワー)』」


 十二使徒だけが持つ奥義が、ミカエルの炎をあっさりと消し……そのまま押しつぶした。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
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