表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第七章・闇夜に煌めく吸血鬼

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

166/395

BOSS・聖天使協会十二使徒『氷』のサリエル③

 ミカエルは剣に炎を纏わせる。

 対するサリエルは冷気を発し、自分の周囲に氷の槍を何本も作りだした。

 サリエルは、余裕の態度を崩さない。


「ミカエルぅぅ~……あんた、めっちゃ弱くなってるよねぇ?」

「あ?」

「だってさ、誰も彼も見下したように上から下を眺めるあんたが、翼も出さずにウチに見下ろされてる。あんた、飛べないんでしょ?」

「…………」

「図星。ダッサぁ~……『氷細工・突撃槍(ジャベリン)』!!」


 氷の槍が何十本もミカエルに狙いを定めて飛ぶ。

 ミカエルは炎の剣を振り、槍を砕く。


「『烈火十文字斬れっかじゅうもんじざん』!! 『飛炎刃(ひえんじん)』!!」


 十字の炎が槍を砕き、炎の刃が飛ぶ。

 サリエルは棒付きキャンディを口から出し、炎に向ける。


「『アイスエイジ』」


 冷気が棒付きキャンディから噴き出し、一瞬で炎は消えた。

 だが、ミカエルの攻撃は終わっていない。

 飛炎刃を出すと同時に跳躍。破壊していなかった氷の槍を足場に、サリエルめがけて跳躍していた。

 だが、サリエルも読んでいた。


「『炎上剣(バルジャンブレード)・一閃』!!」

「『氷細工・フリウリスピア』!!」


 氷で作った槍と炎を纏わせた剣が交差する。

 実力は拮抗しているように見えていたが、ミカエルが歯軋りをするのをサリエルは見逃さない。

 ミカエルの背中から炎が噴き出し、サリエルを押す。


「ちっ……この馬鹿力!!」

「だらぁぁぁっ!!」


 氷の槍に亀裂が入り、サリエルは槍を捨て真横に飛んだ。

 槍は砕け、ミカエルはそのまま地上に着地。

 サリエルを押していたように見えたが……この攻防はサリエルの確信を突いた。


「やっぱり、弱い。あんたの炎、ウチの氷を溶かせてない……本来の2~3割ってとこ? うひひ、呪術師の奴いい仕事してくれたわ」

「……っ!!」


 完全に見破られた。

 天使の力の源である翼が破壊され、碌な力を出せないこと。

 ミカエルの翼は十枚。うち七枚が完全に燃え尽き、残る三枚も焦げてボロボロだ。

 それでも並みの十二使徒クラスの戦闘力を持つ辺りミカエルはすごいのだが……目の前にいるサリエルの氷が溶かせないことに変わりない。


「さぁて、今までの恨み……晴らさせてもらおうかしらん♪」


 サリエルは楽し気に冷気を纏い始めた。


 ◇◇◇◇◇◇


「くんくん……あっちで天使と吸血鬼が戦ってるにゃん。迂回するにゃん」

「ま、待て……この気配。オードレンが戦っておる……行かねば」

「で、でも。力が封じられてます。このままじゃ」


 クロネに担がれたヴァルプルギウスとラティエルは、安全な場所へ向かっていた。

 場所は『部屋』外れの教会。いざという時の避難場所であり、ヴァルプルギウスの指示通り吸血鬼が動いているなら救護施設にもなっているはずだ。

 クロネは匂いと気配を察知しながら安全な道を進んでいたが、近くで大規模な戦いをしているようだ。


「これは……魔性化。オードレンが魔性化しなければならない敵……」

「たぶん、階梯天使です。サっちゃんが連れてくるくらいだから、第三~一階梯くらいの実力かも」

「くそ。わしの力……なにをされたんじゃ!!」

「あ、暴れんにゃ!?」


 怒るヴァルプルギウス。だが、キトリエルに『何か』されたらしく力が出ない。

 ラティエルも負傷している。それに、守りに特化した能力では戦えない。


「頼む。オードレンの元へ……頼む!!」

「…………わかったにゃん。あんたもいい?」

「うん。お願い、ネコミミちゃん」

「クロネ!! クロネにゃん!!」


 クロネは、戦いの気配がする場所へ走る。

 避難しているのか、住人たちと会うことはなかった。

 というか……こんな場所にいたら、間違いなく死ぬ。


「へ、ヘビ……うにゃ」

「オードレン!! くそ、マズい……」


 大蛇となったオードレンは、ボロボロになりながら天使と戦っていた。

 光の槍が刺さり、苦し気な唸り声を上げる。


『ヴァルプルギウス様!? っく……』


 オードレンがヴァルプルギウスに気付く。

 だが、階梯天使の一人がオードレンの身体に剣を突きたてた。


「死ね!! 醜い吸血鬼め!!」

『ぐおぉぉぉっ!?』

「今だ、光を!!」


 上空に待機していた別の天使が、光の矢を次々と発射……オードレンの身体に突き刺さる。


「おのれ!! おのれ天使めぇぇぇっ!!」


 ヴァルプルギウスは叫ぶ。

 ラティエルは無駄と知りつつも叫んだ。


「やめなさい!! こんな……なんでこんな!!」

「にゃあ、危ないから暴れんにゃ!!」


 クロネも、二人を押さえつけるのに精いっぱいだ。

 このまま大蛇が倒れれば、次の標的は間違いなく自分たち。

 大蛇を諦め、避難所に逃げるべき───と、クロネは考え……やめた。


「…………この気配」


 ネコミミをぴこぴこっと動かし、安堵する。

 そして、ニヤリとした。

 階梯天使のリーダーが、大蛇にトドメを刺そうと剣を掲げる。

 剣に光が纏い、そのまま頭に突き刺そうとする。


「これで終わりだ!!「神風流、『凪打ち』!!」


 銀色の風が、剣を掲げる階梯天使の首を蹴り飛ばした。

 そして、上空で光の矢を放とうとしていた天使たちには。


「第一地獄炎、『九龍神火槍(くりゅうしんかそう)』!!」


 炎の槍、いや龍が飛んできた。

 炎の龍は生物のようにうねり、階梯天使たちに絡みついて燃える。

 二十人以上いた天使の半分が灰に……いや、灰すら残さず燃え尽きた。

 残った天使たちはどよめき、突如現れた何者かを見る。


「お、クロネニャンじゃん」

「なーんか楽しいことになってるわね。うきうきするぅーっ!!」


 炎を纏ったフレアと、ニコニコしながらぴょんぴょん跳ねるカグヤだった。

 その後ろから、プリムとアイシェラが走ってくる。


「ふ、二人とも……速すぎ、ですぅ」

「お嬢様、抱っこを」

「いらない触らないで」

「はぅぅぅ……い、いい。かわええ」


 フレアは、クロネに向かって手を振り、上空の天使たちと大蛇を見た。


「で、どっちが敵?」

「天使にゃん!!」

「了解」


 残りの階梯天使たちが灰すら残さず消えるのに、十秒もかからなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』をいただけると嬉しいです
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ