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BOSS・聖天使協会十二使徒『氷』のサリエル②

 サリエル襲撃の少し前。

 ミカエルたちは、すぐに異変に気が付いた。

 なぜなら、この国を囲う壁と天井が破壊されたのだ。探知が苦手なミカエルはともかく、クロネとオードレンはすぐに気が付いた。

 オードレンは、砕けた天井と壁から天使が侵入する気配を察知する。


「……天使!!」

「えっ、嘘? ほんと!?」

「はい。なぜヴァルプルギウス様の『霧』を無視してこの国に……嫌な予感がします。申し訳ございません、少し急ぎますよ!!」


 オードレンは走り出し、ミカエルとクロネも後に続く。

 ヴァルプルギウスがいる『部屋』までは走って五分ほどだ。

 ミカエルは、走りながら聞く。


「天使……どんな奴か見えた!?」

「はい。翼が四~六枚の天使が二十名ほど、そして十枚の翼を持つ青髪の天使が一人」

「青髪……もしかして、ツインテール……髪の毛を頭の両側で結んでた?」

「え、ええ」

「……くっそ、サリエルか。あの女が来るなんて絶対何かある……急ぐわ!!」

「ちょ、待つにゃん!!」


 ミカエルはオードレンを抜いて走り出す。

 クロネとオードレンは付いていくのがやっとだった。

 そして、ヴァルプルギウスたちのいる『部屋』に到着したが……ひどい有様だった。


「これは……!!」


 オードレンが歯噛みする。

 家屋が破壊され、怪我人が多く出ていた。

 原因は天使……何かを探しているのか、家屋を入念に破壊している。

 オードレンは頭に血が上り、姿が変わる。


『貴様ら……!!』


 まるで、蛇のようだった。

 下半身が伸び、鱗が現れ、顔も蛇のようになり……完全な大蛇となる。

 吸血鬼の貴族クラスしか使えない『魔性化』だ。クロネが驚き、ミカエルは言った。


「許す。やれ」


 同族だが、この町の有様を見たミカエルは切れていた。

 どんな状況でも、何も知らない吸血鬼や子供が泣くようなことは許せない。ましてや、その状況を作り出しているのが天使とあれば。


「ここはあんたに任せる。クロネ、行くわよ」

「にゃ、にゃあ……すんすん……あっちから知ってる匂いがするにゃん!!」

「よし!!」


 ミカエルとクロネは走り出す。

 細い道を抜け、町の大通りへ……そこにいたのは。


「───ラティエル」


 巨大な氷の鉈が、ラティエルを叩き割ろうとしていた。

 ミカエルは一瞬で神器の剣を手元へ。ありったけの出力で技を放つ。


「『紅蓮皇牙(ぐれんおうが)』!!」


 炎の牙が四本。

 獣の顎のように氷の鉈を噛み砕く。

 氷の鉈が砕け……視界に写るサリエルに向かって叫んでいた。


「サァァリィィエェルゥゥゥゥゥゥゥ~~~~~~っ!!!!!!」


 傷付いたラティエルを見て、ミカエルはブチ切れた。


 ◇◇◇◇◇◇


 聖天使協会十二使徒筆頭『炎』のミカエル。

 その名を知らない天使はいない。最強の天使であり、聖天使協会の象徴だ。

 味方ですら恐れる天使……なのだが、サリエルは余裕たっぷりだ。

 ポケットから新しい棒付きキャンディを取り出し、口の中へ。


「おせぇっつーの、クソ赤毛」

「……サリエル、あんた……誰に喧嘩売ったか理解してる?」

「はっ……」

 

 サリエルが指をパチンと鳴らすと、町を襲っていた階梯天使が十人ほど集まった。

 二十人いたはずだが半分ほど来ない。オードレンにやられたのだが、サリエルはどうでもよかった。

 ミカエルは、階梯天使を睨む。


「サリエルに何吹き込まれたか知らないけど……あたしが誰だか知ってんの?」


 ギロリ!!……と睨んだだけで階梯天使たちは戦意を失いかけた。

 サリエルは鼻で笑う。


「心配すんな。こいつが呪術師に負けてボロボロってのはマジみたい」

「…………」


 そう。先ほどの『紅蓮皇牙(ぐれんおうが)』で確信した。

 もし、ミカエルが万全の状態なら、『紅蓮皇牙(ぐれんおうが)』を放った時点で氷の鉈は『蒸発』してなければおかしい。

 砕け、氷の欠片がバラバラと地面に落ちるはずがない。ミカエルの火力が落ちている証拠だ。

 それに、なぜかは知らないが……どうもサリエルにはツキがきている。

 

「おめーら、散開して町を燃やせ。ミカエルがやったように見せかけろ」

「はぁ!? おいサリエル、あんた何言って」

「おめーはここで死ぬんだよ。呪術師と協力して真祖殺したバカ天使って汚名を着せられてな」

「……あんた、マジで何言ってんの?」

「ウチの任務はアンタの捜索……でもさ、今って呪術師と戦って弱ってるアンタを始末する絶好のチャンスじゃね? アンタがいなくなればアルデバロン様はウチのこと見てくれる!! んふふ~♪」

「…………」


 ミカエルは、心底理解できないといった表情をした。


「なにあんた、頭おかしいの? アルデバロンに良い顔したいからこんなバカなことしたの?」

「はっ、吸血鬼なんていねー方がいいだろ? 真祖の一人を始末すればいい土産にもなるしぃ」

「……それだけ?」

「そうさ。アンタがこの国にいるっていうから、いろいろ利用させてもらっただけだしぃ~」

「…………」


 ミカエルは無言で剣を構える。


「クロネ。ラティエルを」

「わ、わかったにゃん」


 クロネは素早く移動し、ラティエルに肩を貸す。


「あ、あの……ヴァルプルギウスさんも」

「にゃ、し、真祖もかにゃん?」

「お願い……」

「わ、わかったにゃん」


 クロネは器用に二人を担ぎ、その場から離脱した。

 階梯天使はオードレンに任せ、ミカエルはサリエルと一対一に。


「サリエル、あんた……頭おかしいみたいね」

「はっ」

「つーか、アルデバロンアルデバロンって、あんな髭オヤジのどこがいいのよ? 図体デカいしムキムキだし髭だし偉そうだし眉間にシワ寄ってるし髭だしムカつくし」

「黙れってんだよこのクソ赤毛がぁぁぁ!! アルデバロン様を侮辱すんじゃねぇぇぇ~~っ!!」


 サリエルは切れた。

 棒付きキャンディを吐き出し、ミカエルを睨む。


「アルデバロン様アルデバロン様、なんでこんなクソ赤毛のことばっかり!! ウチだって、ウチだって頑張ってるのにぃぃぃぃっ!! ああもうマジでウザい!! ウザいウザいウザいいぃぃぃぃぃっ!!」「うわ、壊れたわ……なにこいつ」

「うるっせぇ!! アルデバロン様からあんなに愛されてるのに、てめぇはぁぁぁっ!!」

「はっ、あたしあんな髭オヤジ好みじゃないし。あたしより弱い奴に興味ない───」




 ───俺、お前のことけっこう好きだぜ?




 ミカエルは一瞬だけ何かを思い出し、軽く笑う。

 サリエルの周囲には冷気が漂っていた。


「もういい。あんたは殺す。弱ったアンタなんてウチの敵じゃないし!!」

「バッカじゃないの。あたしがあんたに負けるわけないし」


 氷の結晶がきらめき、炎が舞う。

 十二使徒同士の戦いが始まった。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
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