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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第七章・闇夜に煌めく吸血鬼

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ヴァルプルギウス、夜霧の館①/謎の家

「よう、どうだった?」

「ふん。楽勝に決まってんでしょ」

「そうか?…………その割には汗臭いぞ、お前。走り回ってたんじゃね?」

「女の匂い嗅ぐなこの変態!!」

「あいっでぇ!?」


 カグヤと合流した俺はいきなり殴られた……なんで?

 でも、こいつもスッキリしたような顔してる。いろいろ溜まってたものを吐きだせたようだ。

 二体の氷魔獣を倒した俺とカグヤは、ツララの国に向かって歩きだす。


「とりあえず、仕事は終わり……プリムを返してもらってミカちゃんとこ行くか」

「……ねぇ、アンタさ、あの天使と一緒に行動してたんでしょ?」

「ああ。仲間の天使を迎えに行くって言ってたし」

「ふーん……で、これからどうすんの?」

「あ? いやだから、プリムを迎えに」

「ちーがーう。プリムを迎えに行って、あの赤毛天使のとこ行ったらよ。まさか、あの赤毛も仲間にするんじゃないでしょうね」

「俺はどうでもいいけど。それに、あいつは一時的な共闘って言ってたし、聖天使協会に帰るんじゃね?」

「……まぁいっか。で、アタシらはどうする?」

「そりゃもちろん冒険の続きだ。ぶっちゃけ、この吸血鬼の国じゃ堂々と歩けないし……あ、確かパープルアメジスト王国ってのが近いんだよな。そこ行ってみるか!」

「パープルアメジスト……確か、特級冒険者がいる国ね」

「そうなのか?」

「ええ。それに、魔動機関が発達してる国だから、けっこう面白いって聞いたことあるわ」

「おおー! なんかワクワクしてきたな!」


 カグヤと談笑しながら歩き、ツララの国の門まで来た。

 

「やぁ、おかえり」


 門の前にいたのは、ツァラトゥストラだった……え、なんでここに?

 思わず、俺は質問した。


「…………王様が出迎えかよ?」

「うん。だって、キミみたいな男を国に入れたくなかったからね」

「は?」

「あのね。本来ここは男子禁制の国なんだ。いくらお願いをしたとはいえ、男を国にいれる許可を出した覚えはないんだ。ごめんね?」

「……あの、喧嘩売ってるのか?」

「いやいや。事実事実。ね、プリムちゃん」

「え、えっと……」

『わん!』


 すると、ツララの背後からひょっこりとプリムが顔を出した。

 その後ろには仏頂面のアイシェラ、尻尾をブンブン振るシラヌイもいる。

 ツァラトゥストラはプリムに向き直り、目線を合わせるために跪いた。


「プリムちゃん、よかったらまた遊びに来てね。その時はこの国を案内してあげるよ」

「ありがとうございます。ツァラトゥストラさん。お子さんたちにもよろしくお伝えください」


 プリムはスカートの裾を持ち上げる。

 おいおい、後ろのアイシェラがハァハァしながらお尻を凝視してるぞ。どこまでも変態的な奴だな。

 シラヌイは、俺の足元でお座りした。なので蚊帳の外の俺はひたすらシラヌイを撫でる。


「アイシェラちゃん、そしてそっちの銀髪の子も。遊びに来てね」

「ふん……お嬢様を保護してくれたことは礼を言う」

「アタシは嫌。まぁ、ガチで戦ってくれるならいいけどね」

「あはは。じゃあ」


 ツァラトゥストラは、手のひらから青い鳥を作り出す。

 氷鳥はパタパタ羽ばたき、プリムの肩に止まった。


「その鳥がヴァルプルギウスの国まで案内してくれる。気を付けてね」

「はい。ありがとうございました!」


 こうして、俺たちはツララの国を旅だった。


「……あいつ、最後まで俺を見なかったな」

「アンタが嫌いなんでしょ」

「私はお嬢様が大好き!」

「アイシェラうるさい。それより、ようやくフレアたちに合流できました!」

「だな。さーて、ミカちゃんと合流すっか。クロネの奴もにゃんにゃんしてそうだし」

「にゃんにゃん……? おい貴様、なんだそれは」

「いや、ネコだし」


 プリムの肩から小さな鳥が飛び立ち、俺たちの前をゆっくり先導してくれる。

 さて、急ぐ旅でもないし。のんびりミカちゃんとこ行きますかね。


 ◇◇◇◇◇◇


「…………」

「にゃん……たまげたにゃん」


 ミカエルとクロネは、真祖の一人ヴァルプルギウスの管理する領土に入った。

 そう、『入った』のだ。


「どういうこと……ここ、国よね?」

「にゃん。情報がほとんどないからわからないにゃん……」


 ハンプティダンプティの領土でフレアと別れ、ヴァルプルギウスの領土に向かっていたのは間違いない。そして……しばらく進み、国境のあたりで妙な霧に包まれた。

 包まれたと思った瞬間、目の前には巨大な『扉』があり、扉を開けるとそこは、とてつもなく広大な『室内』だったのである。

 

「家の中、よね……どういうこと? まさか、もう攻撃を受けているんじゃ……!!」


 ミカエルは、神器『焱魔紅神剣レーヴァテイン・プロミネンス』を手元に顕現させる。

 クロネもネコミミをピクピク動かし周囲を警戒する。


「……すっごく広い家にゃん。ここ、リビング?」


 テーブルにソファ、棚には本が詰め込んであり、高級そうなカーペット、シャンデリア、どこに通じているのかわからないがドアもいくつかある。

 ミカエルはソファに触れてみた。


「……本物、ね」

「床も本物っぽいにゃん。土とか砂利とかじゃない……どうなってるにゃん」

「とりあえず、警戒しながら進むわよ。たぶん、もう敵の腹の中……」

「…………」


 クロネは右手に装備した『短弓』を展開する。

 ミカエルはリビングルームを見渡し、とりあえず一番近いところにあるドアにそっと触れた。


「……開けるわよ」

「にゃん……」


 恐る恐るドアノブを捻り、そっと開ける……そして、剣を構え踏み込んだ。


「……え、なにこれ?」

「つ、通路……な、長いにゃん」


 そこは、とんでもなく長い通路だ。

 一番奥が霞んで見える。両側の壁にはドアがいくつも設置され、ドアにはプレートが掛けられている。

 

「キッチン、遊戯室、寝室……浴室に倉庫。ん……『レンゲの間』? なにこれ」

「……どうやら、とんでもないところみたいにゃん」


 全く持って、意味が分からない。

 ハンプティダンプティの国から出て、国境辺りで霧に包まれ、謎の家の前に立っていた。

 中に入るとあら不思議。妙に広い空間……そして、やけに長い廊下だったり、噓か本当かわからないドアプレートが掛けられたドアがいくつもある。


「あーもうわけわかんない!! 全部燃やせばスッキリするかしら……?」

「だだ、駄目にゃん!! 慎重に行くにゃん!!」

「冗談よ。それにしても、人の気配がないわね……どうなってんのかしら」

「うちも何も感じないにゃん。もう、わけわかんないにゃん」

「どうする?」

「にゃん……とりあえず、適当に進んでみるにゃん?」

「そうね。じゃ、行きましょ」


 ミカエルとクロネの探索が始まった。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
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