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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第七章・闇夜に煌めく吸血鬼

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BOSS・第三真祖『黒血』ハンプティダンプティ②

 雑魚吸血鬼をミカエルたちに任せ、俺はハンペンに殴りかかる。

 ハンペンは未だに玉座に座っていた。だが、なんとなくこいつは不気味だ……闘うとか、勝つとか、そんな次元にいないような気がする。不気味な魔獣を相手にしているようだった。


「喰らえ!!」

「…………」


 ハンペンはクスっと笑う。

 俺はハンペンの顔面を全力でぶん殴ろうとして───。


「───!?」


 何か、得体の知れない『黒い塊』に防御された。

 なんだこれ。どこから現れた? ハンペンの顔面を殴ろうとしたら、何の前触れもなく急に目の前で黒い液体が集まり凝固した。それが俺の拳を防御しやがった。

 というか……硬い!!


「いっでぇ!? な、なんだこれ!?」

「予言する。貴様はわらわに触れることすらできん」

「…………あ?」


 俺はもう一度。今度は横蹴りで椅子ごと蹴り倒そうとした……が、今度は椅子ごと黒い塊で防御される。

 なんだよこれ、この塊、どっから現れるんだ!?


「このっ……どりゃりゃぁぁぁっ!!」


 俺は拳と蹴りの連続攻撃でハンペンを狙うが、ピンポイントで黒い塊が俺の攻撃をガードする。

 ハンペンは座ったまま微笑み、背もたれにもたれかかった。


「無駄」

「うるっせぇ!! だったら……第一地獄炎、『火炎砲』!!」


 両拳に炎を集め、思いきり放出した。

 だが……またしても黒い塊が火炎砲を防ぐ。驚いたことに、黒い塊は燃えなかった。それどころか溶けたりヒビが入ったりもしない。


「なんだこの黒いの……くっそ」


 闇雲にぶつかっても意味がない。

 とりあえず距離を取り様子を伺う。ハンペンは座ったままだ、ちくしょうめ。

 周りでは、ミカエルが吸血鬼相手に戦っている。どれも人ではなくバケモノみたいになった連中ばかり……たぶん、俺が戦った吸血貴族とかいうやつだろう。

 ここはドーム状の空間。水場とか土の地面はない。使えるのは呪闘流と第一地獄炎、あと癒しの第四地獄炎だけ……参ったな。


「降参するならお家に帰してやらんでもないぞ?」

「アホ馬鹿か? このハンペン野郎め、お前ら吸血鬼の名前覚えにくいんだよタコ野郎!!」

「悪口にゃん……」

『わぅん』


 クロネとシラヌイが呆れていた。

 ちなみにこいつらはミカエルの援護だ。部屋の隅っこでクロネが矢を撃ちながら、近づいてくる吸血鬼をシラヌイが相手している。

 俺は手をプラプラさせ、回転式を抜いてすかさず連射した。


「無駄、と言っておるのだが?」

「…………」


 弾丸は小さな黒い塊に弾かれた。

 なんとなくわかった。この黒い塊、攻撃の大きさによって規模が変わる。今の弾丸を弾いたのは小石くらいの大きさの黒い塊だった。

 炎を防御したのは巨大な壁のような黒い塊、蹴りや拳を防御したのは人の頭くらいの塊……そして、弾丸を弾いたのは小石サイズ。


「なるほどな。攻撃の規模に合わせて黒い塊の大きさも変わる……今の不意打ちにしても、攻撃を見た瞬間だけで黒い塊を緻密に操作できる……いや、自動で防御してるみたいだな」

「…………」

「あんた、特異種だな? 吸血鬼の特異種……」

「愚か者め。特異種の能力が発現するのは人間だけだ。至高の吸血鬼に天使の力が宿ることはない」

「つまり、あんた自身の能力。なるほどな、こりゃ厄介だ」


 さて、どうしたもんか。

 

「とりあえず、覆ってみるか(・・・・・・)

「なに?」

「第一地獄炎遠隔起動。『焔ノ旅館(ほむらのりょかん)』」


 俺が手をかざした瞬間、ハンペンの周りが一瞬で燃え上がる。

 黒い塊がドーム状になりハンペンを守る。だが、俺の地獄炎はドームをひたすら燃やし続ける。


「やっぱり全体を覆うと思った。でもさ、今の状態でいつまで耐えられる? 呼吸は? その黒い塊が長時間炙られ続ければ溶けないとも限らないぞ? 今まで吸血鬼をぶん殴ってきてわかったけど、吸血鬼は怪我したらすぐ治る。でも、持続して与えるダメージに耐性がないんだよな」


 斬ったり撃ったりするのはすぐに治る。でも、万力みたいな握力で頭蓋骨砕こうとしたらめっちゃ苦しんでたのを俺は知っている。

 ただ戦ってるわけじゃない。相手を知り、弱点を探すのも大事なことだって先生は言ってた。

 すると───。


「───っ!!」


 俺は瞬間的に飛びのく。すると、俺が立っていた地面に黒い塊……いや、黒い『槍』が刺さっていた。

 よく見ると、周囲にはいくつものも『槍』が浮いている。


「初めて直接的な攻撃に出たな。ってことは認めたようなもんだ……その中、めっちゃ息苦しいってことをな!!」


 槍が降ってくる。

 だが、この程度なら簡単に躱せる。焔ノ旅館も絶賛炎上中だし、ハンペンが焦っているのがわかる。

 俺は槍を躱しながら焔ノ旅館を維持し続けた。


「流の型───『流転掌』」


 俺は、飛んでくる槍を躱し、時には受け流す。

 この程度、造作もない。欠伸が出る───と思った瞬間、顎の下に小さな槍が現れた。


「ぬぉぉわぁぁっ!?」


 慌てて首を捻る俺。そうか、別に飛ばしてこなくてもいいんだ。飛ばすことで槍に意識を集中させ、不意で作った小さな槍で命を狙う……火炙りの割には冷静だな。

 でも、初手でしくじった手はもう通じない!!

 俺は黒い槍をひたすら躱し続け……槍の動きが徐々に、徐々に鈍くなっていくのがわかった。

 

「おらおら、どうしたどうした!! 不死身なんじゃねーの? 元気出していこうぜ!!」


 煽りまくる俺。ふはは、どうよこの余裕。

 さて、俺もそろそろ次の手を打つか。

 俺は呪力を全身に込めて身体能力の強化。同時に、焔ノ旅館を解除した。

 すると、黒い塊がボロボロ崩れ、中から汗だくのハンペンが歯を食いしばりながら俺を見る。


「どぉぉぉらぁぁぁっ!!」


 俺は、ハンペンが見える前から走り出していた。

 黒い塊が崩れると同時に、ハンペンめがけて思いきり拳を突き出す。


「おぅぅぅらぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「ご、がっばぁぁぁぁぁっ!?」


 俺の拳はハンペンの顔面に命中。ハンペンの顔面が陥没し、床をゴロゴロ転がって壁に叩き付けられた。

 久しぶりに、人の顔面を全力でぶん殴った。


「まずは一発……あ、カグヤとアイシェラのぶんな」

「お、ごっは……き、貴様」


 ハンペンの顔は鼻血だらけだが、ブクブクと泡立つとすぐに治ってしまう。

 でも、少しスッキリしたからいいや。


「…………」


 ハンペンは立ち上がり、着ていたドレスを破り捨てた。すると、黒い塊がハンペンの身体を覆い、まるで鎧のようになる。手には黒い槍まで握っていた。


「久しぶりに……本気で相手をしてやろう」

「お、いいね。そういうのわかりやすくていいじゃん」


 俺は手をゴキゴキ鳴らし、構えを取る。

 ハンペンは黒い槍をクルクル回転させ、俺に突き付けた。

 へへ、ようやくいい戦いになりそうだぜ。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
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― 新着の感想 ―
[良い点] 押してもだめなら覆ってみろ。 生き血(と相手の矜持)を啜るのは、生存のためではなく娯楽という吸血鬼相手に、生存に不可欠な酸素を絶って追い詰めるのは皮肉が利いています。 こういう手合いは倒す…
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