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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第七章・闇夜に煌めく吸血鬼

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ハンプティダンプティ、夜の宴⑪/真正面から乗り込もう

 町は、けっこうな騒ぎになっていた。

 そりゃそうだ。この町というか、この国最大規模の養殖場が勢いよく燃えてるんだ。魔法で水を出して消火しているようだけど消えないようで、吸血鬼たちは焦っている。

 吸血鬼たちに恨みはないけど……やっぱり、人とか獣人とか天使を『餌』とか言っちゃダメだよ。普通に飯が食えるならそっちのがいい。

 とりあえず、養殖場が完全に燃え尽きたら火を消すか。地獄炎は俺の意思じゃないと消せないし、放っておいたらブラックオニキス領土が焦土になっちまう。

 

「おい、あれ……」「餌だ、脱走したのか」

「そんなことより養殖場が!!」「おいおい、やばくね?」


 現在、俺は堂々と町のメインストリートを歩いている。

 吸血鬼たちの興味は、俺か燃え盛る養殖場のどっちかだ。養殖場で大暴れしたし、もしかしたら……。


「そこの餌、止まれ!! 貴様だ貴様!!」

「あ、やっぱ来たか」

『わん!』

「貴様が……貴様が養殖場を燃やしたのか!!」


 騎士みたいな漆黒の服を着た吸血鬼が、何人も俺の周りを囲んだ。

 あ、ちなみにクロネとミカエルは別行動してる。真正面から入るって言った俺を「アホ、死ね」みたいな表情で見た後、別ルートでハンペンなんちゃらの城に侵入するって言った。

 俺はもう回りくどいのはごめんだったので、こうしてシラヌイと一緒に町を歩きながら城を目指しているのだ。

 

「無視するな!!」

「あ、ごめん。ちょっといろいろ回想を」

「わけのわからんことを……貴様、あれが吸血鬼にとってどれほど大事な施設かわからんのか!? あれは我々吸血鬼の食事を作る重要な施設なんだぞ!!」

「いや、血だけがメシじゃないだろ。肉とか野菜食えよ。こんな閉じこもってないでさ、イエロートパーズが近いんだから食料くらいなんとかしろよ。それに吸血鬼って強いんだろ? デスグラウンド平原の魔獣とか狩ればいいじゃん。あそこの魔獣強くて普通の人間じゃ相手にできないって言ってたぞ」

「黙れ黙れ!! 我々吸血鬼にとって血こそ極上の食事なのだ!! 魔獣だと? 肉野菜だと? そんな生温いことをほざくなよ餌が!!」


 うーん、吸血鬼のリーダーっぽい奴は青筋立てて怒ってる。

 俺、頭あんまりよくないけど……。


「でもさ、さすがに人や天使を餌にすんのはマズいだろ」

「なぜだ? ふん、下等生物を餌にしてるのはヒトも同じだろう?」

「下等生物って……人は他の動物を見下したりしてないぞ。なぁシラヌイ」

『くぅん』

「ならば、人が愚かなだけ。我々吸血鬼は強者であり、弱者を捕食して何が悪い?」

「あー……もうだめだな。話通じねぇや」

『グルルル……』


 シラヌイの四肢と顔が燃える。

 どうやら、先にスイッチが入ったのはシラヌイだ。

 吸血鬼たちは剣を構えたり、魔力をみなぎらせる。

 俺も話すことはない。さっさと城へ向かうために戦いを選ぶ。


「じゃあ決めた……お前ら全員、俺が喰ってやるよ」


 俺の身体が燃え上がり、吸血鬼たちが襲い掛かってきた。


 ◇◇◇◇◇◇


 俺は殺到する吸血鬼たちを相手にして戦っていた。


「死ね餌が!!」

「やなこった。滅の型、『轟乱打』!!」


 吸血鬼の一人に、両手を使った乱打を打ち込むと、勢い余って近くの民家の壁に激突した。

 そして、背後から剣を振り下ろしてくる吸血鬼に、カウンターで顔面をぶん殴る。


「ごぱっ!?」

「おらっ!!」


 そして、心臓めがけて蹴りを放つ。何度か試したが、心臓に衝撃を与えると回復力が落ちる。

 何人か吸血鬼を殴り飛ばしながら城を目指した。


「そっちに行ったぞー!!」「逃がすな、追え!!」

「うーん、敵だらけ」


 吸血鬼の町だけあり、右も左も吸血鬼だ。しかもここ、町のど真ん中……倒しても倒しても吸血鬼がわんさと出てきやがる。

 

「弓を持て!!」「遠くから狙うんだ!!」


 民家の屋根の上に、弓を持った吸血鬼がいた。

 俺はその場で横っ飛びし、ブレードを展開して飛んできた矢を切り落とす。

 さて、どうするか。屋根に上って吸血鬼をぶちのめそうとしたら、路地や民家から吸血鬼が飛び出してきた。


「逃がさん!!」

「いや、逃げないって」


 吸血鬼の騎士が何人も殺到する……俺は構え、隙間を縫うように通り過ぎた。


「流、滅の型【合】、『散葉舞踊』」


 通り過ぎると同時に、呪力を練りこんだ掌打を心臓に喰らわせる。すると吸血鬼たちは胸を抑えて苦し気に蹲った。

 やはり、呪いよりも心臓を狙った掌打が有効か……苦しいだろうけど、俺を狙うなら容赦しない。


「お、いいもん見っけ」


 俺は広場にあった噴水に向かい、右足を蒼い炎で燃やす。


「第二地獄炎、『アイスニードル』!」


 そのまま水を蹴り、飛沫が氷の槍となって屋根にいた吸血鬼たちに突き刺さる。

 吸血鬼たちは屋根から落下……よし、この隙にさっさと城へ。

 すると、城へ続く道の前に、デカい吸血鬼がいた。


「ふはははは!! ここから先はこの吸血貴族ブルトガングが相手だ!!」

「邪魔。第三地獄炎『泥々深淵』」

「ぬぉぉぉぉぉっ!?」


 石畳を蹴り砕くと土の地面だったので、黄色い炎で周辺を泥化。ブルトガングとかいうデカい吸血鬼が一瞬で泥の中に沈んだ。ついでに炎を解除して地面を元に戻しておく。

 俺は城への道をひたすら走る……現れる吸血鬼を殴り飛ばしながら。


「どけぇぇぇぇーーーーーーっ!!」

「「「「「ぎゃぁぁぁぁぁーーーーーーっ!?」」」」」


 邪魔な吸血鬼を殴る、蹴る、燃やす。

 いつしか、吸血鬼たちは俺に怯える。向かってこなくなり、城に到着した。

 ここにプリムたちがいるのか……そういえば、真祖とかいう連中が連れていったんだっけ?

 城の前には、ガチムチの門番らしき吸血鬼が二人いた。とりあえず、友好的な感じで聞く。


「あの、ここにハンペンなんちゃらって吸血鬼がいると思うんだけど、会わせてよ」

「「…………」」

「えっと、無言で構えるってことは戦うの? まぁいいけど……」


 ガチムチ吸血鬼は、無言で構えを取る。

 どうやら格闘系みたいだな。構えも隙が無いし、ダルツォルネのおっさんくらいの威圧感はある。

 

「悪いけど、さっさと終わらせるぞ。雑魚に構ってる暇ないんだよ」


 首をコキッと鳴らし、全身を燃やして威圧する───。


「『飛炎緋剣(ひえんひけん)』!!」

「え」


 上空から真紅の剣が炎を纏い落ちてきた。そしてガチムチ吸血鬼の背中に突き刺さり、心臓を破壊。

 ギョッとする俺ともう一人のガチムチ吸血鬼。すると、上空からミカエルが落ちてきた。

 心臓を破壊され崩れ落ちるガチムチ吸血鬼を無視し、剣を掴んでもう一体の吸血鬼に投げつける。剣は心臓を貫通し、門番二人はミカエルに倒された。


「行くわよ」

「おま、いきなり現れてかっこつけんなよ!! せっかく俺が」

「うるさい。あんた、町で大暴れしたんでしょ? 町は大騒ぎになってるわ」


 すると、俺の背後にひょこっとクロネが現れる。


「養殖場は完全に燃え尽きて、火が町に及ぼうとしてるにゃん。水をかけても消えない炎だって、吸血鬼たちは大慌てにゃん」

「そうなのか? じゃあそろそろ消しておくか」


 地獄炎は、俺の意思である程度は消せる。

 消えろと念じたからたぶん消えてると思う。ま、後で確認するか。


「じゃ、行くか。クロネ、ここには誰が残ってる?」

「……カグヤとアイシェラがいるはずにゃん。プリムと天使は別の馬車に乗せられて違う場所に行った……はず」

「カグヤとアイシェラか……」

「……なによ、その眼は」

「いや、クッソやかましそうなメンバーになるなぁって」


 俺、クロネ、ミカエル、カグヤ、アイシェラ……うっわ、めんどくさそうなメンツ。

 ま、別にいいか。それより、さっさと迎えに行かないと。


「じゃ、迎えに行くぞ」

「……あのね、真祖が極上の餌である天然の人間を手放すと思う?」

「知るかよそんなの。一応、俺の仲間だし、手放すとか離さないとか関係ないっての」

「……手放さなかったら?」

「ぶん殴る」

「……ま、いいわ」


 というわけで、俺たち三人は城に乗り込んだ。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
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