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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第七章・闇夜に煌めく吸血鬼

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ハンプティダンプティ、夜の宴①/捕まったプリムたち

 捕まった。

 カグヤは歯ぎしりをしながら、思いきり壁を蹴る。

 だが、石壁は硬く、カグヤの蹴りでも傷がつかない。それどころか、蹴った足に痛みが出た。


「やめなよ。ここは天使の力を削ぐ特殊な空間……私だけじゃなく、半天使のあなたとその子も力を封じられているわ」


 ほとんど裸のような恰好でしゃがむ少女、ラティエルは苦笑しながら言う。

 同じく、プリムとアイシェラも、そしてカグヤも同じような格好で閉じ込められていた。

 プリムは、俯きながら言う。


「いつまでこのままなのでしょう……それに、吸血鬼」

「たぶん、殺されることはないと思う。私たちは『真祖』の食事だから」


 ラティエルは、プリムに微笑みかけながら言った。

 天使なのに、この少女はとても優しい。自分が出会った天使は、見下したような目をする者ばかりだったが……このラティエルは、そんな目をしていない。

 アイシェラは、壁に寄りかかりながらラティエルに聞く。


「吸血鬼か。ということは、やはりここはブラックオニキス領地で間違いないのだな……」

「うん。ミカちゃんと呪術師の戦いで、ダンジョンの脱出用魔方陣が誤作動を起こしたんだと思う。たぶん、ミカちゃんの天使力と呪術師の呪力が絡み合って、魔法陣の出力が数百倍に跳ね上がった結果、大陸を横断するほどの転移力を発揮した……と思うわ」

「くそ、あの男……厄介なことをして」

「アイシェラ、そんなことを言わないの」

「申し訳ありません、お嬢様」


 すると、苛立ちを隠せないカグヤが叫んだ。


「なーにのんびりしてんのよ!! こんなとこさっさと脱出してあのクソ女にリベンジよ!!」

「あ、あのね、無理って言ったじゃない?」

「うっさい!! つーかあんた、天使ならなんとかしなさいよ!! 強いんでしょ!?」

「む、無理だよ。私は後方支援に特化した能力だし、今は力を封じられてるし……それに、真祖相手じゃ本来の力があっても無理だよ。真祖の力は十二使徒三人分くらいあるし、正面からまともに戦えるの、ミカちゃんくらいだから」

「ぐぬぬ……ちっくしょう!!」


 カグヤは再び石壁を蹴る。だが、足の小指を強打し悶絶した。


 ◇◇◇◇◇◇


 時間を、少しだけ巻き戻す。


 何が起きたか、プリムたちは把握していなかった。

 ダンジョンの最上階。ミカエルとフレアの戦いが佳境に突入し、ミカエルが巨大な太陽を生み出した瞬間、足下が光り出したのだ。

 それが魔法陣だとプリムはすぐに気づき、すでに魔法陣の外へ脱出したクロネの『首輪』を解除した。プリムから離れすぎると、クロネの首輪はクロネにダメージを与えるからだ。

 そして、全身が光に包まれ……気が付くと、見知らぬ土地にいた。


「え?……こ、ここ、どこ?」

「お嬢様、ご無事ですか!!」

「あ、アイシェラ!! よかった、無事だった……」


 近くにいたアイシェラを抱きしめ、プリムは周囲を見渡す。

 どうやら、どこかの町の広場だろうか。薄暗く、周囲には誰もいない。だが、かび臭そうな建物が周囲にはたくさん並び、廃墟のような雰囲気を醸し出している。


「あいたた……ったく、何よいったい」

「あ、カグヤ!!」

「ん、あれ? プリム……ここ、どこ?」

「わ、わかりません。気が付いたらここに……」


 カグヤは頭をぽりぽり掻きながらプリムたちの傍へ。

 すると、近くに一人の少女が倒れていることに気が付いた。


「あ、この人」

「こいつ、あの赤毛と一緒にいたやつね。たぶん天使だけど……」

「お嬢様、離れて「大丈夫ですか?」お嬢様!?」


 プリムは、なんの迷いもなくラティエルを抱き起した。

 

「う……あいたたた」

「大丈夫ですか?」

「う、うん。ありがとう……ここは?」

「わかりません……ダンジョン、では……?」

「…………この感じ」


 ラティエルは地面に触れ、ほんの少しだけ目を閉じ……表情を険しくした。


「まずい。ここは……ブラックオニキス。あの光は転移魔法、そっか、ミカちゃんと呪術師の力の余波で……やばい。このままじゃ」


 ラティエルは立ち上がり、周囲を確認する。

 誰もいない寂れた広場だが、ラティエルは気が付いた───誰か、大勢が迫ってくる。

 そして、すぐに決断する。


「逃げるわよ!! ここはまずい!!」

「え? ど、どうし」

「いいから!! 詳しい説明はしてる暇がないの、お願い信じて!!」

「わ……わかりました。アイシェラ、カグヤ、行きましょう!!」

「は? 天使を信じるの?」

「お嬢様、それはさすがに……」


 議論している時間はなかった。

 まるで、ラティエルが起きるタイミングを見計らっていたように、ぞわぞわした気配が周囲を包囲する。

 そして、それは現れた……黒いローブを纏う妙な集団が。


「遅かった……!!」

「ちょ、誰よこいつら!! めっちゃ雰囲気悪いんですけど!!」

「お嬢様、お下がりください」

「あ、アイシェラ……」


 カグヤは構え、ラティエルは歯を食いしばり、アイシェラはプリムを守るため剣を抜く。

 

「あんた、ここが何か知ってるなら言いなさいよ」

「吸血鬼……ここは、ブラックオニキス領地よ」

「え……」


 これには、カグヤも驚いた。

 吸血鬼。それは、この世界最強種族の一つだ。

 ブラックオニキス領地に住み他国との交流を一切拒む種族で、天使が支配することができない孤高の種族。恐るべきは、血の通った生物は全て餌という考えを持つ種族でもある。

 ブラックオニキス領地に入ることなかれ。確か、冒険者ギルドでそんな話を聞いたことがあった。


「じゃ、あれは吸血鬼?」

「ええ。恐らく、ここは吸血鬼の国の一つ、そのどこか……とんでもないところに転移しちゃったかな」

「どうすんの?」

「逃げるしかないわ。吸血鬼の一般市民、しかも子供でさえ階梯天使クラスの戦闘力がある。これは恐らく吸血鬼の兵……勝ち目がない」

「勝手に決めんじゃないわよ。あっちがやる気なら、アタシは迎え撃つ!!」

「ちょっ」


 カグヤは、真正面にいた吸血鬼に飛び掛かり、遠心力を利用した回転蹴りを繰り出した。


「神風流、『凪打ち』!!」


 ズドン!!と、ハンマーで大木を殴りつけたような音が響く。

 カグヤの延髄蹴りが、吸血鬼の首をへし折ったのだ。

 だが、吸血鬼は倒れない。


「なっ───」

「無駄、だな」


 黒いローブを着た吸血鬼のフードが落ち、その容貌があらわになる。

 青白い肌、尖った耳、赤い瞳、黒い髪……そして、牙のような歯が見えた。

 首は間違いなくへし折れている。だが、折れた首がブクブクと泡立ち、一瞬で修復してしまったのだ。

 カグヤは吸血鬼から距離を取る。すると、周囲の吸血鬼たちがフードを外し、リーダーらしき吸血鬼の男が言った。


「天然か……捕獲し、女王に献上するぞ。傷は付けるんじゃないぞ」


 その言葉は、カグヤたちを見ていなかった。

 ただの作業。そんな意味が込められた言葉にカグヤはブチ切れた。


「裏神風流、『連杭剣山』!!」


 首をへし折った吸血鬼目掛け、足を杭のように変化させた連蹴りを叩き込む。


「ごばっ!?」

「死ね、クソが」


 全身穴だらけになった吸血鬼は、白くなってボロボロに崩れた。再生もしない。どうやら死んだようだ。

 

「ふーん。弱点は頭? 首? それとも心臓? よくわかんないけど、身体のどこかを潰せば死ぬみたいね。あーあー、ムカつく。アタシを舐めた報いを受けてもらおうかしらね?」

「き、貴様……!!」

「来い、クソ雑魚ども。よくわかんないけどぶっ殺す」


 戦いが始まり、カグヤは大いに暴れた。

 何度か試しているうちに、吸血鬼の弱点が心臓だと把握。心臓を潰し、吸血鬼を十五人ほど殺した。

 さすがの吸血鬼たちも、弱点を狙われて怯む。


「あれ、どうしたの? 捕まえるんじゃないの?」

「か、カグヤ……すごいです!!」

「こいつもバケモノだな……」

「人間が十二使徒クラスの実力を持っているなんて……半天使、侮れないわ」


 ラティエルは、逃げるための策を練る。

 カグヤがいれば、ここから逃げられると思っていた。




「騒がしいの……それに、いい香りがする」




 甘ったるい香りと共に、一人の吸血鬼が現れるまでは。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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