表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第一章・地獄の業火で焼かれ続けた少年
13/395

西の街にさようなら。

 俺たちは、騒ぎになった区画から離れた場所に宿を取り直した。

 天使が暴れたという情報は伝わっておらず、何気ない顔で宿に入る。

 部屋は狭い3人部屋だが、部屋に入るなりどっと疲れた。


「はぁ~~~~~~……ったく、疲れたわ」

「ですね……まさか、天使が来るなんて……わ、私を、殺しに」

「心配すんなって。あの小デブ天使なら素っ裸の黒焦げだから。髪の毛もアソコの毛も燃えちまって、いいカッコだったぜ?」

「あ、あそこの毛?」

「おう。天使にも毛ぇ生えてんだな。あははははっ」

「きさまいっだだだだだっ!? く、くちを治せ、なおへぇぇっ!!」

「あ、アイシェラ。いたのか」


 俺の口内炎アタックを喰らったアイシェラが、口を押さえて涙目になっていた。

 

「うーん、まだ反省してないみたいだな。数日はそのままで……」

「悪かった、わたしがわるかったからぁぁっ!! いたいいたいいたいっ!?」

「はっはっは。仕方ないなぁ……ほい」


 アイシェラの頬に触れて呪力を流し、口内炎を治してやる。

 頬を押さえてホッとしたアイシェラは俺を睨む。


「おーっと、次は虫歯にしちゃうぞ?」

「っぐ、ぬぬぬぬぬっ……」

「はいはい。2人ともそこまで。とりあえずこれからのことを考えましょう」

「これから? 馬買ってブルーなんちゃら王国に行くんだろ?」

 

 俺は部屋にあった水差しの水を飲む。

 炎を使ったあとだから気持ちいい。


「…………ですが、天使に狙われたことで、危険度が上がりました。ブルーサファイア王国でも、私を受け入れてくれるかどうか」

「天使だったら俺がやっつけるよ。あの小デブ天使、大したことなかったしな」

「大馬鹿者。あの天使は第十二階梯だ……天使の位で最も低い。それでも、我ら人間とは一線を画する強さだがな」

「ふーん。ま、なんとかなるだろ」


 俺の炎は、天使を燃やせた。

 呪術と組み合わせれば強力な技になる。それに、一番弱い天使と言ってもあの程度だ……そもそも、俺は全く本気じゃなかったし。

 

「それよりさ、馬とか買いに行こうぜ。デカくてカッコいいのがいいな」

「……能天気な奴め。ほんの少し前まで天使がいたんだぞ」

「今、町を出歩くのはちょっと……」

「んだよ。じゃあ俺が買ってくるぞ? 馬だよな馬!!」

「「…………」」


 さーて。馬を買いに行こうかな!!


 ◇◇◇◇◇◇


「う~ま~うまうまうまっうま~♪」


 俺は散歩がてら馬を買いに出かけた。

 そう言えば、1人になるの久しぶりだ。前に1人になったときもお使いだし……今回は馬か。

 

「えっと、馬は馬屋で買えばいいんだよな」


 馬屋。

 どんな町にも一軒はあるらしいけど……場所はわからん。

 町中は普通だった。小デブ天使の騒動もここまでは来てないらしい。

 俺は適当に町を歩きながら馬屋を探すと……。


「お、あれか? なんか馬っぽい看板がある!」


 馬屋を見つけた。

 デカい看板に馬の顔が描かれている。しかも、建物もかなりでかい。

 さっそく中へ入ると……おお、馬が……。


「あれ? 馬がいないじゃん」

「ん……なんだお前は?」

「えっと、馬ください」


 馬屋の中はカラッポだった。

 馬の代わりとばかりに、犬だの猫だの動物が入り込んでいる。店主らしきおっちゃんは欠伸をしていた。

 俺を見てため息を吐いてるし……なんだよいったい。


「見ての通り、馬なんていねーよ。さっきデカい商会が買い占めやがった」

「え!? な、なんで!?」

「お前、天使が現れたの見てなかったのか? 大手の商会は町中の馬を買い占めて出ていったぞ……やれやれ。オレも逃げようと思ったんだが、見ての通り足がな」

「え……」


 店主のおっちゃんは、片足がなかった。

 

「クソが……商会の連中、オレの足がないことをいいことに、二束三文で馬を買っていきやがった。追いかけようとしたら商会の護衛に叩きのめされてな。義足も折れちまった……いつつ」

「おっちゃん……大丈夫なのか?」

「ああ……やれやれ。オレも頃合いかねぇ……実家の道具屋を継ぐしかねぇのか」

「え? なーんだ。仕事あるじゃん」

「まぁな。馬屋なんてやってるんだ。オレは馬が好きなんだよ」

「…………」


 馬屋のおっちゃん、カラッポの厩舎を見て淋しそうだ。


「おっちゃん。馬屋は辞めちまうのか?」

「ああ。ま、馬たちも殺されはしねぇだろ。オレも田舎のばあさんがやってる道具屋に帰るとするかね……天使様の現れた町なんぞ、先はねぇからな」

「……田舎のばあさんの道具屋?」


 なんか既視感が……まぁいいや。


「馬屋のおっちゃん、帰る方法はあるの?」

「ん、まぁ……なんとかなるだろ。新しい義足を買って、乗り合い馬車のチケットを買って……いや、義足代金だけで金が尽きちまうか……まぁ、金がないなら歩いてでも帰るさ」

「じゃあさ……えーと…………あ、あいつにしよう!!」

「あん?」


 俺は馬屋の厩舎に寝転がっていた白犬を1匹抱っこし、おっちゃんの前に差し出す。


「この犬売ってくれ!! 金は……はい!!」

「ちょ、おい!? お前、この大金……」

「いいっていいって。この白犬、高そうだし高貴そうだし、けっこうな値段するんでしょ? 大金貨五十枚の価値あるって」

「ば、バカ野郎。そりゃ野良犬……」

「じゃ、もらってくよ!! おつりはおっちゃんの道具屋でサービスしてくれたらいいからさ!!」

「あ、おい!!」


 そう言って、犬を抱えた俺は馬屋を後にした。


 ◇◇◇◇◇◇


『わんわんっ!!』

「はいはい。買った以上は責任持つって……とは言っても、一文無しになっちまった」


 白犬、何が嬉しいのか尻尾をブンブン振って俺に付いてくる。

 勢いで買ったけど、どうしたもんか。

 まさか置き去りにするわけにも……まぁいいや。


「とりあえず、宿に戻るか。馬は全部売れてたのは事実だし、お金もいっぱいあるみたいだし、別にいいか」

『くぅーん』

「はいはい。帰ったらメシにしてやるよ」

『わんわんわんっ!!』


 と、白犬を連れて宿に戻る。

 宿の受付に誰もいなくてよかった。白犬と一緒に部屋に戻ると……。


「ふ、フレア!! お帰りなさい!!」

「……チッ、戻ったか」

「ただいまプリム。つーかアイシェラ、今度は虫歯を喰らいたいようだな」

「ふん。やれるものなら……おい、なんだそれは?」

『わぅ?』

「犬」

「見ればわかる。馬はどうした?」

「ああ、馬は完売だってさ。商人が町から出るため買い占めたんだとよ」


 肩を竦めると、プリムが目をキラキラさせていた。


「きゃぁ~♪ か、かわいい~っ……さ、触っていいですか?」

「いいんじゃね?」

「姫様!! そんな汚らわしい毛玉に素手で触れるなど」

「わんわん、かわいいですねぇ~♪」

『きゅぅぅん……』


 白犬を撫でまくるプリムと、気持ちよさそうに目を細める白犬。

 アイシェラがプルプル震えていたがプリムは完全無視。白犬が気に入ったようで何よりだ。


「はぁ……おい、ところで金はどうした?」

「…………」

「おい」

「…………あー、その、金はこの白犬に化けたというか」

「は?」

「…………ごめん」


 俺はアイシェラに殴られた……今回は甘んじて受けます。はい。


 ◇◇◇◇◇◇


 翌日。

 海の町には徒歩で向かうことになった。

 乗り合い馬車とかいうのもあったらしいが、小デブ天使騒動のおかげで全てキャンセルとなったらしい。徒歩で向かう分には構わないらしいので、仕方なく歩くことに。

 荷物は全て俺が持つことになった……使い込みの罰だとさ。


「キリキリ歩けよ」

「へいへい」

「アイシェラ、意地悪しないの」

「意地悪ではありません。我らの路銀をこのような白犬に使った罰であります」

「むぅ……可愛いからいいのにぃ。ね?」

『わんわんわんっ!!』


 西の町から海の町へ向かう出口で、俺は何気なく言う。


「そういや、こいつの名前どうする?」

「そうですね……純白の雌犬ですので、『ホワイティ・リリィエンタール号』と名付けましょう」

「いえ、ここは闘犬のように『ブライトニングハリケーン』というのはどうでしょうか?」

「悪かった。お前らは黙ってくれ」


 クソ長く、尚且つダサすぎる。こいつらセンスゼロだな。

 そうだな……白犬か。


「……よし。今日からお前は『不知火(シラヌイ)』だ。いいか?」

『わんわんわんっ!! わんわんわんっ!!』


 こうして、新しい仲間犬であるシラヌイを加え、俺たちは西にある海の町へ向かう。

 面倒ごとにならないといいけどな……なんてね。

プロローグ、第一章は終わりです!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』をいただけると嬉しいです
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ