最上階で佇む紅蓮の天使
「……来るわね」
「ミカちゃん?」
アメノミハシラ最上層。
ここは塔の最上層で、階層ではなく屋上のような造りになっていた。
闘技場のリングような形で、ミカエルとラティエルの近くには祭壇のような物があり、そこに小さな宝箱が安置されていた。
ダンジョンにもお宝にも興味のない二人は、ただ待つだけ。
「ラティエル、フレアは近くに来てる?」
「ん、たぶん……ここ、私の能力が上手く作用しないの。『樹』にお願いしてみたけど、詳しい位置はわからないかも」
「そう……ま、いいわ。ここに来てるのは間違いない」
聖天使教会十二使徒『樹』のラティエル。
樹木を自在に操る彼女は、大地に根を張る樹木を通して調べものをしたり、様々な種類の樹を生み出すことが可能である。あまり戦闘に適した能力ではないが、防御と索敵に関してはミカエルよりも上だった。
フレアを見つけたのも、建物に加工された木材を通じ、近くの木材から木材、海を超え、樹木を通じてフレアの気配を探知したからである。だが近すぎると探知できないという弱点もあり、木材が使われていない建物などに樹を生やすことができないという弱点もあった。
ミカエルは、腕を組んで九十九階層へ繋がる階段を見つめる。
「何度も言うけど、手出しは無用よ」
「わかってるよ。それに、ここじゃ私の力は殆ど使えないから」
「ん、そうね。じゃあ大人しく見てなさい……あたしとフレアの戦いを」
「うん……」
ラティエルは、くすっと笑う。
「……なによ?」
「あ、ごめん。その……ミカちゃん、すっごく嬉しそうだったから」
「はぁ?」
「ミカちゃん、まるで恋人を待つ女の子みたい。ふふ、なんだか可愛い」
「はぁぁぁぁ~~~っ!? 誰が恋人を待つ女の子よ!? このこのこのっ!!」
「いたい痛いいたいっ!? ミカちゃんぐりぐりはやめてやめてっ!!」
ミカエルはラティエルをヘッドロックし、頭を拳でぐりぐりした。
◇◇◇◇◇◇
「さて……断罪の続きを始めましょう」
ショフティエルはシャワーを浴び、礼服を着替え髪もばっちりセットし、ダンジョンに戻ってきた。
ダンジョン前には大勢の人間がいる。
証拠も残さず全てショフティエルが人間を『ページ』に変えたので、ここにいた人間が神隠しにあったと大騒ぎになっていたのだ。
もちろん、そんなことはショフティエルに関係がない。
「おぉ……なんとも嘆かわしい。裁かれるべき人々よ」
ショフティエルの『断罪の書』のページが、また増えた。
◇◇◇◇◇◇
「さて……む? この気配」
ショフティエルは、異様な気配……天使の気配を感じた。
場所はダンジョン最上階。
「ふむ……天使にも断罪が必要ですね。聖天使教会ならなおさら、ふふふ。本のページも増えましたし、十二使徒であろうと私の『断罪』からは逃れられないでしょう」
ショフティエルの背から、漆黒の翼が広がる。
「哀れな天使に断罪を」
向かうのは、ダンジョンの屋上───。




